今年も自分が1次審査員を務めたSKIPシティ国際Dシネマ映画祭が7月14日から22日にかけて開催されます。今回で9回目となりますが、アメリカの雑誌「ヴァラエティ」でも“世界で見逃せない50の映画祭”に唯一、日本の映画祭でランクインを果たしており、世界からの注目も高まっています。今回、最終的に上映される長編コンペティション作品を決定する2次審査までやったので、特に責任重大なのですが、是非とも大勢の観客の皆さんと映画を楽しめればと思っています。
長編コンペ部門で最後まで残ったのは内外合わせて12本の作品。ちょっとだけ見どころを紹介しましょう。
まずは『脱出』『未知との遭遇』『ディア・ハンター』『ミッドナイトクロス』など錚々たるキャリアで知られる伝説的撮影監督ヴィルモス・ジグモンドの新作である『死と乙女という名のダンス』。ハンガリーを舞台に生き別れていた兄弟が再会し、新たな作品を作っていこうとする物語です。光と闇のマエストロがデジタル技術でどのような映像を創り出したのか、その目で確認してください。
次はノルウェーの女流監督アンネ・セウィッツキーが地方都市に暮らす少年少女の淡い恋物語をファンタジックに描いた『真実の恋』。幽霊屋敷の伝説を信じる子どもたちの姿が実にチャーミング。思わず引き込まれる掘り出し物です。
イギリスの『ワイルド・ビル』は『ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島』や『リトル・ランボーズ』に主演していたウィル・ポールターが主演の重厚なドラマ。刑務所帰りの父親と、息子たちが苦しい中で交流していく様を描きます。監督が『キック・アス』などで活躍する俳優のデクスター・フレッチャーなので、『ロード・オブ・ザ・リング』のアンディ・サーキスも友情出演しています。
もう一本、見逃さないでほしいのが、トルコ映画の『我が子、ジャン』。子どもが欲しくてたまらない夫は妻に偽装妊娠を強要し、何とか子どもを手に入れようとします。そしてその6~7年後、妻は一人で息子を育てていた。過去と現在を並行して描き、一体この夫婦に何が起きたのか?気にせずにはいられない演出が素晴らしい一本です。
まだまだ紹介したいので、続きは次回にやりたいと思います。それと、会場で販売しているパンフレットで、長編コンペティション部門の原稿を全て自分が書いているので、そちらもよければ手にとってください。WOWOWでもこの映画祭で以前上映された2作品が放映されます。一昨年のグランプリ作品『やがて来たる者たちへ』(8/21放送)と『再生の朝に-ある裁判官の選択-』(7/13放送)。どちらも必見の秀作ですので、お見逃しのないように!(飯塚克味)