先日、中川翔子さんが映画館で映画鑑賞中に、前の席にいた人から突然ジュースをかけられるというひどい出来事がありました。「足やめろ!揺れてんだよ!」と言って、暴挙に及んだそうです。これはもちろんやった本人が悪いのは当然ですが、こう感じさせる映画館側にも大きな責任があると思えてなりません。
あまりピンとこない方もいるかもしれませんが、自分が最近、非常に懸念しているのが映画館の音漏れ、振動漏れ問題です。以前から多少の指摘はありましたが、自分なりに「こういうことか!」と感じたのは昨年冬にTOHOシネマズ新宿で『くるみ割り人形と秘密の王国』を見た時のことでした。割と前方の席で見ていたのですが、しばらくすると後ろの席の人がイスに足を付けた状態で貧乏ゆすりをしているように感じ始めたのです。時々、収まりはするものの、ずっと続き、不快を通り越してだんだんとイライラしてきました。上映中はひたすら我慢、映画が終わったら、一言言ってやろうと思ってエンドロールになった瞬間に振り返ったら、そこには誰もいませんでした。絶対、誰かいるだろうと思っていたのに、もぬけの殻だったのです。「え、あれは何だったの?」と思って湧いた疑問は劇場を出た瞬間分かりました。隣のスクリーンがMX4Dで、『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』を上映していたのです。「原因はこれか!」と思った自分は、劇場の人に「振動すごかったんですけど」と話したものの、「MX4Dの振動ですね。すみません」と軽く受け流しただけ。よくあることへの対処のように見受けられました。もちろん見た映画の中身なんて、頭に残っていません。記憶にあるのは自分を不快にし続けた、あの振動のことばかりです。
おそらく、中川さんにジュースをぶっかけた前の席の人も、自分と同じようにず~~~~っと我慢して、堪忍袋の緒が切れてしまったのではないでしょうか?そう思い込む一つの理由が上映前のマナーCMです。あの中にはどこのシネコンでも「前の席をけらない」という項目が入っています。あれを見ることによって、その手の振動を初体験した人は、絶対に後ろの席の人が席を揺らしていると思ってしまうのです。
間もなく映画館の値上げラッシュが続きますが、こんな状況で「映画館にお越しください」と映画館側は言えるのでしょうか?映画館は自分にとっても素晴らしい作品と出会える最高の場所であってほしいと思っている空間です。にもかかわらず、このような現状を放置したら、わざわざ映画館で作品を見ようなんて観客はどんどん減っていくでしょう。自分の周囲でも同様の思いを体験した人がいて、そうした人の中にはすでに映画館で映画を見ることを止めてしまった人もいるくらいです。
こんなことが続くのなら、映画館はサブウーファーも使わないでほしいし、4DXやMX4Dのような振動を伴うアトラクションもやめてほしいですし、爆音上映や応援&絶叫上映のような企画も迷惑です。映画館を設計する人、建てる人、運営する人、現場で働く人など、様々な立場で大勢が映画館に関わっていますが、その誰もが映画館に来たお客さんに喜んでもらいたいはず。劣悪な環境で我慢して鑑賞してもらいたいなどとは、絶対思っていないはずです。是非とも、もう一度、映画館が誰にとっても楽しめる最高の施設になれるよう心から願っています。(飯塚克味)