#12『ツークツワンク』 (クリミナル・マインド8)

2014/03/26

■謎の電話
リードとメイヴが定期連絡を取り合う日曜日。リードが、いつものように公衆電話でメイヴからの折り返しを待っていると、「アダム・ワース」と名乗る人物からコレクトコールが入った。電話の相手は、変声機を通した声で「ツークツワンク」とだけ告げ、一方的に電話を切った。アダム・ワースはモリアーティ教授のモデルで、「ツークツワンク」はチェスで身動きすると詰んでしまう状況を指す。リードはメイヴがストーカーの手におちたこと、そして電話は、犯人からの「降参か、死を覚悟でつづけるか」というメッセージだと確信。ホッチとBAUに助けを求めた。

■メイヴの婚約者
リードはメイヴの顔も本名も知らなかったが、やがてガルシアの調査で、彼女はメンデル大に務めるメイヴ・ドノヴァン教授で、10ヶ月前から大学は休職中であること、両親が買った倉庫に隠れ住んでいることが判明する。モーガンとJJが向かったメイヴのロフトには、誰かと争った様子が残されているが、押し入った形跡はない。警戒していたにもかかわらず犯人はなんらかの方法でメイヴの警戒を解いて、ドアを開けさせたと考えられた。また両親への事情聴衆で、メイヴに婚約者がいたことがわかり、リードは動揺する。そしてその婚約者ボビーこそが、メイヴと待ち合わせたレストランで、リードが疑いの目を向けた男であった。しかしボビーは、メイヴから突然婚約を破棄されたために彼女のことを心配し、様子を見に行っただけだし、自分もストーカーに狙われていたと語る。
■犯人は女だ!
ガルシアとJJは、ストーカーがメイヴの顔を塗りつぶした道具がアイライナーなのに気付く。犯人は女なのだ。変声機を通して電話をかけてきたのも、メイヴにドアを開けさせたのも、女なら説明がつく。リードはボビーの新しい恋人ダイアンが、初対面のはずの自分を「ドクター」と呼んだことを思い出す。犯人は彼女だったのだ。しかし捜査陣がボビーの家にとってかえしたときには、そこは既にもぬけの空で、争ったあとが残されていた。冷静に分析できなくなっているリードは、ブレイクと共に公園にでかけ、チェス盤と向かいあいながら認知面接を受け、メイヴと交わした会話を分析。リードは、犯人は博士になれない人物で、メイヴに論文をボツにされたために逆恨みしていると推理する。やがてガルシアの調査で、メイヴが論文を審査したダイアン・ターナーという名前が浮上。「自殺患者における自発性細胞死について」という論文を提出していたことがわかる。
■ふたりでなら......
ダイアンはボビーを拉致するが、メイヴが愛している相手はリードの方であることを知る。メイヴから全てを奪い取り、自分の有能さを証明しようとしていた彼女は、用のないボビーをあっさり殺害。その後、メイヴを屋上に連れだして飛び降りろと命じる。自殺を促すダイアンの発言を聞き、メイヴは彼女の論文を思い出した。メイヴは論文の瑕疵を指摘するが、ダイアンは聞く耳を持たない。その頃、ダイアンの自宅に着いたリードは、部屋の監視カメラに向かい、「彼女と代わりたい」というメッセージを提示。ダイアンはメイヴと無理心中しようとしている。それを阻止する方法は、ダイアンをメイヴと同等に認められる存在として扱うしかなく、そのためにリードはダイアンに「愛してる」と言うつもりだった。こうしてメイヴとダイアンの元に辿り着いたリードは、ダイアンの論文を褒めちぎる。リードの言葉にダイアンの自尊心はくすぐられるが、しかし、リードと唇を重ねた瞬間に嘘に気づく。そしてダイアンは、メイヴを道連れにして、拳銃自殺をとげる。血だまりの中に斃れたメイヴを見つめ、リードはただ、泣くことしかできなかった。
【格言】
「深く愛されれば人は強くなり、深く愛すれば人は勇敢になる」老子の言葉。67章の「慈じはもって戦えばすなわち勝ち、もって守ればすなわち固し」の英語意訳だ。
【ゲストスター】
メイヴは前にも紹介したが、『レバレッジ 詐欺師たちの流儀』の泥棒パーカー役のベス・リースグラフ。ダイアンを演じているのは『ゴシップガール』のジョージーナ・スパークス役でもとばしてたミシェル・クリスティン・トラクテンバーグだ。
【ジョセフ・ベルとアダム・ワース】
リードが使っていた偽名ジョセフ・ベルは、コナン・ドイルの医学生時代の恩師でホームズのモデルとされている人物の名前。ベルは病気の診断には観察力が重要だと学生に説き、患者の外見から職業や家族構成を言い当てて学生らを驚かせた。一方のアダム・ワースはモリアーティ教授のモデルと言われた稀代の大泥棒。ゲインズボロが描いた肖像画「デヴォンシャー公爵夫人」を盗み出したことで知られ、ベン・マッキンタイアー『大怪盗―犯罪界のナポレオンと呼ばれた男』に生涯が詳しく書かれている。
【ツークツワンク】
チェスの主に終盤の局面で発生するもので、相手から直接狙われていないにもかかわらず、自ら状況が悪化する手を指さざるを得ない、動くとチェックメイトで負けてしまうような状況を指す言葉。ドイツ語を語源とする。チェスにはパスというものが存在しないので、悪い結果が見えていようと、動かざるを得ない。チェス用語が転じてゲーム理論の用語としては、「手番であることでゲーム結果が悪化する」場合を指す。
【ロザンナ・アークエット】
祖父はコメディアンで、父と3人の兄弟と妹が俳優という芸能一家の長女。『マドンナのスーザンを探して』や『800万の死にざま』などに出演、女優の素顔を多数おさめたドキュメンタリー映画『デブラ・ウィンガーを探して』で監督としてデビューした。TOTOの「ロザーナ」は、彼女がキーボードのスティーブ・ポーカロと交際していた頃の曲で語呂がいいので名前は使ったが、実際にはロザンナ・アークエットをイメージして作ったわけではないと語っている。一方ピーター・ガブリエルの「君の瞳に」(In Your Eyes)は、ガブリエルとロザンナが同居していたときに作られた曲だ。
【ペンローズの三角形】
1950年代に数学者ロジャー・ペンローズが「不可能性の最も純粋な形」として発表し、広く知られることとなった通常の3次元空間では作ることのできない図案。文章で説明するのは難しいが、エッシャーの「滝」のような不可能図形の基本的なもの。錯視によって作ることは可能で、オーストラリアのパースには見る方向によっては三角形に見えるオブジェが存在する。
【トマス・マートン】
メイヴがリードに渡したコナン・ドイルの『ジョン・スミスの物語』の見返しには、「愛することは人の宿命。ひとりでは見つけられない人生の意味も、ふたりであれば見つけられる」というトマス・マートンの言葉が記されていた。メイヴの「トマス・マートン」、「あなたがぜったいに奪えないもの」という最後の言葉が強く印象に残りますね......。
【BGM】
ラストシーンで流れるのは、英国のシンガー・ソングライター、リチャード・ウォルターズのINFINITY STREET。2011年にリリースされた EP盤YOUNG TREESの中の一曲。流れるのはこの曲の繰り返しの「わたしはいつもあなたのためにあかりを灯す」という部分。



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ライター:三村美衣みむらみい)
書評家。雑誌「活字倶楽部」、「SFマガジン」、産経新聞などで書評連載中。趣味は仕掛け絵本の蒐集。

コメント(1)

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