2019/10/08 up

知英に中島健人、そして波瑠まで...。映画は顔芸だ

「レオン(2017)」10/21(月)よる7:00他

文=横森文

 映画のストーリーを伝えるのに、大切なのは役者たちが魅せる演技。その演技ひとつで映画は面白くもなれば、つまらなくもなるもの。中でも演技で大事なのはアクション&リアクションといわれ、いかに共演する役者間でしっかり会話を紡ぎ、魅力的に会話を展開するかが大きなポイントとなる。

 でも演技にはもうひとつの側面がある。それは監督が描きたい世界観を伝えるというもの。仮に別れのシーンがあったとして、それをしっとりと伝えたいのか、それとも顔に縦線、目は白目というマンガちっくな衝撃シーンとして伝えたいのか。監督が考えるその流れに寄り添う演技をしなければならない。

 例えば竹中直人が演じるセクハラ大好きワンマン社長の朝比奈玲男と、KARAの元メンバーである知英が演じる地味な派遣OL、小鳥遊玲音の、中身(魂)が入れ替わることから起こる騒動を描いた『レオン(2017)』('18)。コメディ演技大全開の竹中が繰り出す、眉毛をギュッとヘの字にしたり目をむいて大口を開けてしゃべったりと表現強めの際立った表情に加えて、独特の体の動きをも知英がコピーして演じることで、中身の入れ替わりをしっかりと表現した上で笑いに結び付ける。

detail_191008_photo02.jpg『レオン(2017)』
©清智英・大倉かおり/講談社・2018映画「レオン」製作委員会

 一方、女の魂が入った竹中の柔らかい表情やしぐさもワンマン社長とは真逆過ぎて面白い。表情を見ているだけで「よくやるなぁ」と思わせつつ、中身が入れ替わるファンタジーをしっかりと観る側に信じさせてくれるのがスゴいのだ。

detail_191008_photo03.jpg『レオン(2017)』
©清智英・大倉かおり/講談社・2018映画「レオン」製作委員会

 『レオン(2017)』に比べると『オズランド 笑顔の魔法おしえます。』('18)は、実在の遊園地がモデルの小説を原作にしているだけに表情は決して大げさではない。
 主演は、10/15(火)スタートのテレビドラマ「G線上のあなたと私」出演でも注目を集める波瑠。彼女が演じる大手ホテルチェーンの新入社員、波平久瑠美は、不本意ながら地方の遊園地に配属となってしまい、ゴミ捨てから始まってクリエイティブな仕事とは縁遠い日々にウンザリ。そんな彼女が、上司であり"魔法使い"と呼ばれる敏腕企画マン、小塚慶彦(西島秀俊)の影響を受けて、仕事にとって大切なことに気付かされていく。

detail_191008_photo04.jpg『オズランド 笑顔の魔法おしえます。』10/11(金)よる9:00他
© 小森陽一/集英社 © 2018 映画「オズランド」製作委員会

 波平は仕事に不満を感じてふくれっ面を見せたり、鼻息荒くツリ目気味で「クリエイティブな仕事がしたい」と小塚に抗議をしたり。かと思えば小塚がやらせていた仕事の意味を悟って眉毛が八の字になるようなしょげた表情を見せたり、仕事の魅力を知ってキラキラと輝くような笑顔を見せたり。くるくると変わるその表情は、ヒロインの気持ちの変化を見せてくれるとともに、その豊かさで観る者の心をつかむ。また、いつも穏やかな微笑をたたえて達観の境地にあるような"大人"小塚に対して、目まぐるしいまでに変わる波平の顔は、発展途中である彼女の未熟さをも感じさせてくれる。波多野貴文監督が見せようとしたエンタメ世界を、波瑠の演技が的確に表現しているのだ。

detail_191008_photo05.jpg『オズランド 笑顔の魔法おしえます。』
© 小森陽一/集英社 © 2018 映画「オズランド」製作委員会

 一方、役者たち全員がフルスロットルで演じているのは『ニセコイ』('18)だ。極道一家、集英組組長のひとり息子である一条楽(中島健人)と、敵対するギャング組織ビーハイブのボスのひとり娘、桐崎千棘(中条あやみ)の恋を描く作品。もともと週刊少年ジャンプ連載のラブコメ漫画を映画化したものなので、かなりベタな展開でハチャメチャ感が強い。

detail_191008_photo06.jpg『ニセコイ』10/22(火・祝)よる9:00他
©2018映画『ニセコイ』製作委員会 ©古味直志/集英社

 中島健人は、悔しい時に顔をクシャクシャにゆがめたり、驚いた時に口を魚のようにとがらせたりと、そのハチャメチャ感&漫画感を見事に体現。彼に続けとばかりに脇役に至るまでオーバーアクト120%で振り切る感じは、もはや笑いを通り越して圧巻ともいえるだろう。こういった演技が間違いなく映画の面白さを支えているのだ。

detail_191008_photo07.jpg『ニセコイ』
©2018映画『ニセコイ』製作委員会 ©古味直志/集英社

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  • 文=横森文
    映画ライターの傍ら演劇集団トツゲキ倶楽部で主宰、演出、脚本を手掛ける。11月13日~17日、下北沢「劇」小劇場にて「笑うゼットン―風雲再起―」を上演。

[放送情報]

レオン(2017)
WOWOWシネマ 10/21(月)よる7:00
WOWOWシネマ 11/2(土)深夜3:45


オズランド 笑顔の魔法おしえます。
WOWOWシネマ 10/11(金)よる9:00
WOWOWプライム 10/16(水)よる8:00
WOWOWシネマ 10/21(月)午後5:00
WOWOWライブ 11/28(木)深夜1:00


ニセコイ
WOWOWシネマ 10/22(火・祝)よる9:00
WOWOWシネマ 11/25(月)よる6:45

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