メキシコとイニャリトゥ (2015/3/4配信)

2015/03/06

メキシコとイニャリトゥ_re.jpg

この日のテーマは『メキシコとイニャリトゥ』

大谷ノブ彦さん、宇野維正さん、松崎健夫さん、浅賀優美さんでお送りしました!



今年のアカデミー賞で最多4部門を受賞した「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」。昨年の「ゼロ・グラビティ」のアルフォンソ・キュアロンに続き、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥが監督賞を受賞したことで、2人のメキシコ人監督が2年連続でアカデミー賞監督賞を受賞!これはアカデミーの歴史を見ても、同じ国の外国人が二年連続受賞というのは今までになく非常にレアなケース!宇野さんも、キュアロンもイニャリトゥも映画好きの中では特別な存在だったけれど、まさかアカデミーを2年連続で獲るなんて想像もしていなかったんだとか。

 

メキシコの映画製作の歴史は191020年頃にスタート。上映自体はその前から行われていましたが、製作はメキシコ革命でドキュメンタリーとしてフィルムを回していたことから始まります。映画のつもりで撮られていたわけではありませんが、結果としてその記録作品が後に映画に。第二次世界大戦で戦場にならなかったメキシコは、世界中で映画が作られにくくなった際にフィルム生産を請け負ったり、機材倉庫を貸し出したりという役割を担いました。こうして様々な国の人がメキシコに映画の文法を持ち込んだことで映画製作の土壌が作られ、30年代後半から50年代にかけて娯楽映画が作られていきます。

 

メキシコ映画は基礎を忠実に真面目に映画に取り入れる傾向にあり、その象徴ともいえるのが名門の映画学校があること。官僚になるようなエリートを排出する学校に入るより難しく、映画を系統立ててちゃんと勉強することを国が推奨していて、これが今の時代にメキシコ人監督が出ていく基盤となりました。

 

そして00年代以降に台頭してきたのがメキシコ三羽烏と言われる3人の映画監督。優等生のキュアロン、オタクの権化のようだと言われる「パシフィック・リム」を撮ったギレルモ・デル・トロ、そして、もともと国民的人気ラジオDJだったイニャリトゥ。

この三人は一緒に2007年にチャチャチャ・フィルムという映画製作会社を設立。しかも、この会社で世界に打って出ようというふうに作られたわけではなく、なんと、「一緒に会社でも作って口実作らなきゃ会えない」から、という超仲良しな設立理由!3人はそうしてお互いに繋がりを持ちながら、でも全然違うジャンルの映画で大きくなっていきました。イニャリトゥの「バベル」に出演した菊池凜子さんがデル・トロの「パシフィック・リム」に出演したり、キャストもスタッフも、お互いの映画にコネクションで紹介し合うラインが密にあるのは大きな特徴。これは3人に限ったことではなく、スペイン語圏の監督達が悩んだり困ったりした時に協力し合う緩やかな連盟となっていて、ある種今のアメリカを包囲しているところがあるとも語られました。

 

この根底にあるのがカウンター意識。

メキシコは外からの物も受け入れるけれど、どっかでカウンターを返そうという意識があり、三羽烏はもともとやってきたものをアメリカでやろうと思っていた人たち。特に、キュアロンはメキシコで活動する中で資金回収ができなくなり仕方なく渡米、その後メキシコに戻りますが、自分の自由度を高めるために再びアメリカへ行き「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」を撮ります。この「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」も、元々はデルトロに来ていたオファーですが、それをキュアロンに振ったのだそう。キュアロンもハリーポッターを作りたくて作ったのではなく、それを成功させれば次を作れると先を見通し、その結果自由度を獲得したことで「ゼロ・グラビティ」を撮ることができるようになりました。

また、この3人のポイントは、スタッフがアメリカ人ではないということ。「ゼロ・グラビティ」と「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」で2年連続で撮影賞を受賞したエマニュエル・ルベツキもメキシコ人で、「バードマン」の脚本の4人の内、イニャリトゥ以外の他3人はアルゼンチン人。自分一人でアメリカで成功するのではなく仲間と行くぞという意識強く、スペイン語圏のラテンカルチャーに対する誇りが強いのだそう。

 

そうした中で、イニャリトゥは粗製乱造と言われるくらいアメコミ物が作られているアメリカの中で「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」を製作。アメコミヒーローを否定しているわけではなく、好きなところも嫌いなところも表現した上でそのエモーションを映画に投影。それは映画界に対するそれで本当にいいのかという批評とともに、我々はそういう映画を作るんじゃないという主張が感じられ、アカデミー会員もアメコミ続編物に業界が依存していることの意義をこの作品に託したのではないかと考察されました。

 

また「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」は非現実的なシーンが随所に入ってくる作品。西洋は幻想が幻想のシーンとして描かれるのに対し、中南米では現実とファンタジーの境目がなくてシームレスで、バードマンのファーストシーンにもその表現が見られます。

これはガルシア・マルケスに代表される中南米文学のマジックリアリズムの系譜で、中南米では小説の中で当たり前のように50センチのカブトムシが出てきたりするのだとか。

アメコミは完全な幻想の世界で、現実と幻想を分けてみんなが幻想の世界を楽しむものだけれど、でも南米の文化の本質は現実も幻想も全てが地続き。この手法はキュアロンも「ゼロ・グラビティ」や「トゥモロー・ワールド」でやっていて、みんなびっくりするけれど、中南米では普通なこと。この夢と現実の境目を無くすマジックリアリズムの最途端であるのが「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」で、如何にこの映画が全うに自国の文化を取り入れ、自分たちの背負ったものを出した証言かがわかる作品だと語られました。

 

そんな「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」は4/10()から全国ロードショー!

http://www.foxmovies-jp.com/birdman/

 

イニャリトゥは既に次回作が決まっているし、チャチャチャフィルムズも次世代が控えているだろうし、メキシコの監督からまだまだ目が離せません!

 

そして昨年のアカデミー賞でキュアロンが監督賞を受賞した「ゼロ・グラビティ」はWOWOW3/5()よる7:15より放送!

http://bit.ly/1CzXypm

 

さらにデル・トロの「パシフィック・リム」も4/13()深夜3:45からお届け!

http://bit.ly/1CzXx4Q

 

今回知った文化や歴史を踏まえて、ぜひメキシコの巨匠たちが撮った作品をお楽しみください!

アーカイブ

2018年

2017年

2016年

2016年3月

2015年

2015年3月
2015年6月
2015年7月

ブログを購読する ブログを購読する

WOWOWぷらすと 公式Twitter

WOWOWぷらすと 公式Facebook

ぷらすと 公式Instagram

WOWOWは初月料金なしでお得!ご加入はこちら

▲ページTOPへ