春日が語る金田一(2015/5/15配信)

2015/05/18

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この日のテーマは『春日が語る金田一』
サンキュータツオさん、春日太一さん、内田理央さんでお送りしました!

今回はなんと春日さんがスケキヨマスクでご登場!!めちゃくちゃ呼吸が苦しい&ゴム臭い・・・!とのことでしたが、ぷらすとの為にご用意くださいました!

この1週間このことだけ考えてきた!と準備万端な春日さん!前回の『市川崑に出会う』に引き続き、春日さん無双回再びです!しかも今回の終了後の満足度アンケートでは、ポジティブ票が99.4%の神回となりました!

『市川崑に出会う』はW流にてアーカイブを公開中!
あわせてご覧いただくと、一層市川崑監督の凄さを感じられるはず!是非予習復習に合わせてお楽しみください!

まずはシリーズ第一作目、「犬神家の一族」が作られるに至った経緯についてから番組はスタート。
この作品は後に続く角川映画の第一弾として作られました。元々は角川が文庫を作るということで、その本の宣伝の為に映画を作ります。
当時の市川崑監督は、60年代に一旦映画の一線から引いてしまっていたところから、70年に「木枯し紋次郎」で再び大ヒットした時期。
現代的な解釈とスタイリッシュでクールな映像に定評があったことから、横溝正史の原作が持つおどろおどろしさが、市川崑監督の解釈で新しい見たこともない世界で生まれるんじゃないかとの期待から起用されました。

「犬神家の一族」は本格的ミステリー映画ですが、それこそがこの映画の凄さ。
本格的ミステリーとして制作され、ここまで大ヒットした上に後世まで評価されているのは、日本の映画史上この作品だけなのです!
ミステリーのプロットの核は犯人探しであり、最終的なクライマックスは事件の解決。
その他のミステリー小説原作の作品ではミステリー要素を取っ払い、怪談やオカルトとして描いたり、犯人たちの過去のドラマで泣かせたりという手法がとられ、謎解きの面白さで魅せたことはありませんでした。それほどにミステリーは当時の映画界にとってタブーだったのです。

ではなぜタブーなのか。それを語る上で重要人物となるのがアルフレッド・ヒッチコック監督。
春日さんはヒッチコックのミステリーとサスペンスとサプライズの違いを例に挙げ、ミステリーを全面に出すことによるエモーションの欠如を解説。また、小説なら楽しめる探偵の内声や頭の中の推理が映像では退屈を招いてしまう事からミステリーはタブーとされていました。

しかし、これらのタブーに挑戦したのが市川崑監督!
「犬神家の一族」により、ミステリーの映画的退屈性を一つずつ潰し、従来のミステリーとサスペンスの主従関係を逆転させたのです!

市川崑監督の映画的退屈を打破し、エモーションにしていくための工夫は3つあります。

◆工夫その①:コメディーリリーフの起用
原作には因果関係や因習などドロドロとしたものがいっぱい出てきますが、喜劇要素を入れることによりその世界観を中和。それによって見る側に逃げたり息抜きの場を与えています。
また、ミステリーにとって事件の概要の説明は避けられませんが、それはエモーショナルではないし退屈になってしまいます。しかし、全ての説明や報告のシーンをコミカルに描くことで、おもしろいというエモーションが生まれ、楽しく状況説明が入ってくるのです!

◆工夫その②:徹底した誇張演出
この一例となるのがとにかく「キャー!」と叫ぶこと。スケキヨが初めて戻ってきた時、死体が見つかった時などから、しまいにはただ振り返って誰かが立っているだけでも絶叫。本題のサプライズにフェイントも混ぜることで、見てる側は普通の何気ないシーンでも何か始まるんじゃないかとそわそわしながら観るようになります。
また、時間軸と空間軸をずらすことも誇張表現のひとつ。会話の中のカットの割り方を、観客が普通に考えている生理的なリズムよりカッティングすることと、話の受け手のリアクションをフラッシュショットでインサートすることで退屈さを回避しています。
特にフラッシュショットを入れることは、複雑な人間関係の紹介を回避することにも繋がっていて、最初は誰だかわからなくても、観客の頭にイメージの断片を蓄積させることでだんだんとわかるように。
大袈裟にやること、そして説明を削ることでのデフォルメと、2種類の誇張が行われているのです。

◆工夫その③:名探偵・金田一耕助の再構築
この3つ目の工夫が、ミステリーをいかに映画の中で面白くしていくかということの市川崑監督の最も大きな功績。その妙味は二つで、原作からキャラクターを改編したことと、石坂浩二さんをキャスティングしたという事にあります。

原作の金田一耕助はアメリカ帰りの日本でも有名な名探偵で、本人もそれに対しての自負があるという設定。しかし市川崑監督は、金田一耕助は事件を解決するヒーローではなく、事件の傍観者と解釈。神様の使いであり天使で、ふわっと現れてふわっと去ってしまう実在感がない人なのです。そして、神の使いなので下界の人間に触れてはいけません。だから劇中の人間関係や事件に関与しないし、影響も与えないし、徹底して事件の外側にいる男で、無名の風来坊が事件に巻き込まれる設定にしたのです。これは市川崑作品の視点そのものでもあり、ミステリーを退屈じゃ無くすために一番必要なことでした。

金田一が天使であることにはいくつかの理由があります。
まずその1つが金田一の目とお客の目は常に一致させること。金田一が情報を知るにつれて、お客さんも状況を知って行くというつくりになっていますが、これは金田一が中の人でなく外の人だから。金田一とお客さんの目線は一緒で、彼の眼通して事件の中継をするカメラの役割も持っています。
そしてそれと同時に、金田一は名推理で事件を解いて解決するのではなく、観客に事件の内容を説明するナレーターでもあります。中にいると金田一の主観的フィルターが入ってしまうため、客観的立場であるために天使である必要があったのです。

そしてナレーターとしての金田一を成り立たせるために必要だったのが石坂浩二さん。
市川崑監督自身はキャスティングの理由について、二枚目半の感じができるし都会的雰囲気があるから、「犬神家の一族」の世界の中和に合っている、と話していますが、春日さんは大事なことを隠していると考察!
それは石坂浩二さんにナレーションをさせたいということ。ナレーションの名手でもある石坂浩二さんが事件の概要をナレーションすることで、ストレスなく説明が耳に入り、映像に集中することができるので、事件の概要を説明しなくてはならないミステリーの枷を取り払いうことができるのです。

さらに、エモーションを起こしてサスペンスを作るためにも天使である必要性が。
名探偵と言う設定では、最終的に金田一が解決するだろうという安心感からエモーションが起きません。しかし天使であることで、金田一が居たところで頼りにもならず何にも安心じゃない、という状況でエモーションを生み、サスペンスの空間に放り込んだのです。
その目線付を変えるための超重要シーンが菊人形のシーンの金田一のリアクション。これは石坂浩二さんのアイディアで、当初市川崑監督は反対していましたが、石坂浩二さんの押切りで実現。この二人のぶつかり合いで絶えず金田一の面白さが出来ていったのです。
そして金田一は天使であることから、絶対に事件に関与してはいけません。犯人が途中でわかったとしても未然に防ぐことは許されないし、防ごうともしないことから、サスペンスとしての状況が生まれます。

また、探偵が活躍せず一歩引くことで、事件の当事者たちの人間ドラマを表に出すことができます。さらにそうすることで、エモーショナルなドラマが増えると同時に、探偵が推理したり調査したりする映像的に退屈なシーンを減らす効果もあるのです。
市川崑監督は「犬神家の一族」をただの遺産の奪い合いではなく愛の話だと解釈。その愛憎が入り混じった物語を描く上では、金田一を引かせる必要があったのです。
この金田一と当事者たちの距離感や市川崑監督のアレンジが端的に出てるのがラストシーン。多くのミステリー作品にある、最終的に全員を集めて自分の推理を話す基本的なパターンではなく、段階を踏んで描写。これにより、ミステリーが退屈になりがちなただの推理の説明ではなく、感動的なシーンにすることができたのです!

こうした様々な工夫で、ヒッチコックが作り上げてきた常識や映画の文脈に正面から挑戦し、ミステリーの映画的退屈性を打破。
市川崑監督が培ってきたあらゆる方法論とロジック、そして石坂浩二さんの金田一像も合わさって築きあげられてきたのが「犬神家の一族」の凄さなのです!

最後にはその後のシリーズの流れについても教えて頂きました。
「犬神家の一族」は名作に違いないけれど実験的作品でもあり、2作目の「悪魔の手毬唄」ではそれらが研ぎ澄まされてほぼ完成形が生まれます。
ただ、ここでもう最高傑作が生まれただけに既に手は打ち尽くしていて、その後に「獄門島」「女王蜂」「病院坂の首縊りの家」と、金田一役を豊川悦司さんにキャストチェンジした「八つ墓村」が続きますが、どれも色々と無理が生じてしまいます。
そして遂に2006年に「犬神家の一族」をリメイク。しかもリメイクどころか同じ脚本、同じコンテでやっていて、ハッキリ言って出来は悪いという春日さん。しかし、1976年版とリメイク版ではラストが変わっていて、そのワンシーンを見るためだけに価値のある映画だとも言えると語りました。

二時間じっくりと「犬神家の一族」を解き明かし、市川崑監督すげー!春日さんすげー!との声が終始溢れた今回。
石坂浩二さんへのインタビューでのエピソードも多数交えて解説していただき、春日さんにしか語り得ない「犬神家の一族」を伺うことができました!
だーりおちゃんは、ただ楽しいと思って観ていたことが何で楽しかったかわかった!だからもう一回見なきゃ!と興奮気味。春日さんも、種明かしを聞いてまた観たくなる映画だと語りました。

WOWOWでは「金田一耕助」シリーズの5作品を5/18(月)より一挙放送!
金田一シリーズ未見の方はもちろん、既に見たことがある方も、今回の解説を踏まえてみるとまた新たな見どころがあるはず!ぜひミステリー映画の最高傑作をお楽しみ下さい!

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