映画に描かれる父親像(2015/6/11配信)

2015/06/12

映画の中の父親像_re.jpg

今回のテーマは『映画に描かれる父親像』
サンキュータツオさん、松崎まことさん、早織さんでお送りしました!

もうすぐ父の日!
番組はさっそく、みなさんのお父さんとの思い出や、今自分がお父さんになってみてのお子さんとの思い出など、濃厚なトークでスタート!
『自分が親になって気付くこと』『お父さんのエロ本を見つけた瞬間』『お母さんが買ってくれないものをこっそり買ってもらう』『お父さんと洋服を買いに行ったこと』『パンツ一丁で歩く父親と自分』
などなどいろんなエピソードが語られました。

番組前半は映画に描かれる父親像に時代が反映されているのかフォーカス!
父は絶対の権威という日本の戦前の父親像は当然映画にも反映。昭和30年代に民主主義になったときには、大正生まれの頭の固い親父も最後は昭和生まれの息子に丸め込まれる「若大将」シリーズのような関係が当時の日本の風潮となっていました。

アメリカの戦中・戦後には理想的な父親は「素晴らしき哉、人生!」のジェームズ・ステュアートや、「アラバマ物語」のグレゴリー・ペックがいて、西部劇で一家を率いて絶対的権威をもつ強面の父にはジョン・ウェインがいました。
戦後、1950~60年代頭頃は世界的にお父さん大好きな家族の時代。特にアメリカはヘイズコードがあった影響で、そもそも酷い父親を描けないという事情も。

ヘイズコードが撤廃されるくらいの頃にはアメリカン・ニューシネマの時代へ。
ここでまことさんは「ニューシネマに父親出てきた記憶ある?」と投げかけます。
タツオさんは「あんまりない。同世代の俺ら感」というイメージ。
例えば「卒業」でダスティン・ホフマン演じるベンジャミンが大学を出て故郷の家に戻ってきて、画面には映っていても父の存在感がないのが象徴的。この時代は個人の時代になっていて、上に立っていた父親も本当のことを言っているか分からない、という価値観の逆転が起き、なかなか父親が描かれなくなっていました。

象徴的なのがヘンリー・フォンダー家。娘はジェーン、息子はピーター。
ヘンリーはアメリカの良心の様な俳優で、第二次世界第戦では海軍に従軍し武勲も挙げた、アメリカで愛される父親でした。
映画でも舞台でも偉大な俳優と尊敬される彼ですが、生涯で5回結婚。ジェーンとピーターは2回目の結婚の時の子供で、ふたりが幼い頃に母は自殺。その理由はヘンリーの女出入りが激しかったからと言われています。ふたりには病死と伝えていたものの、後にこの真実を知り反抗したふたりは、家を出て俳優になりました。
ヘンリーは晩年までアカデミー賞を得ることはありませんでしたが、ジェーンは71年と78年にアカデミー賞主演女優賞を受賞。ピーターは「イージー・ライダー」が世界中でヒット。その時にヘンリーがピーターに「俺が何十年もかけて稼いだ金を、お前は1本で稼いじゃったな」と言ったのは有名な話。親子関係もずっと良くないままでした。
しかし晩年、ジェーンは最大の親孝行をします。
アカデミー賞で特別功労賞はあるものの、演技賞での受賞はなかったヘンリー。死ぬまでに何とか父にオスカーを獲らせたいと、ジェーンは「黄昏」という芝居の権利を買い、父に主演させます。老夫婦の話で、共演はキャサリン・ヘップバーン。疎遠になっている娘は自分が演じるという盤石の体制。ハリウッドは家族の葛藤も知っているし、映画の出来も良く、ヘンリーは生涯で初めてオスカーを獲得しました。
この一家が辿った道は、まさにアメリカの社会や映画史の動きとも連動しているのです。
ヘンリーはアメリカの良心である一方、浮気で家族を悲しませるというのは、正義を名乗ってベトナム戦争をしたアメリカそのもの。そのダブルスタンダードが表面に出た時代の象徴だったのかもと語られました。
「アメリカン・ビューティー」で90年代の中流家庭の崩壊を観た早織ちゃんは、その映画に至るまでにこういう映画史があったのか!と歴史がばちっと繋がった様子でした。 

そしてまことさんが映画史の中の父親像の変遷とは別に、もう一つ持ってほしい視点として挙げたのが、監督ごとの父親の描き方!
一番いい例はスピルバーグ。
彼は幼い頃に父親が浮気して家を出て行った母子家庭で育ち、ずっと父親の存在が空白に。だからこそ彼の欠落した何かが「未知との遭遇」では、家族を捨てて宇宙に行ってしまう父を描かせています。しかし、「レイダース」シリーズ、「ジュラシック・パーク」「宇宙戦争」など、時代を経るごとにスピルバーグの中の家族が変わって行っているのです。この間に彼は自分が親として成長するプロセスがあり、今は「未知との遭遇」の描き方は間違っていたともはっきり言っています。

この他にも、家庭環境が上手くいかなかったことから疑似家族モノを撮っていたのに、家庭を築きだした後は急に自分の上面をなぞる映画が多くなったティム・バートンや、ほとんどの作品に頼もしい父親像や父性愛が出てくるローランド・エメリッヒなども例に挙げられました。
一貫して理想の父親像を描いていても、その時々の自分の考え方で映画の中の父親には変化が。
このことは落語でもわかりやすく表れているというタツオさん。同じ演目でもやる人やその年齢で解釈が変わるもので、それは映画監督にもあるんだな~と話されました。

番組後半はまことさんの父親を描いたベスト映画を発表!
まずは着てきてくださったTシャツの「ゴッドファーザー」シリーズ!
3部作を通して父親の権威の移ろいゆくものが描かれていて、父の在り方も時代の移り変わりも映されています。今親目線で見る切なさもあるし、何度見ても沁みてくるとオススメ。

そして、頑固おやじの「破れ太鼓」!
民主主義の中で家父長制は崩れるも、でも親子の絆はあることを描いた作品。
木下惠介さんが描く人間の機微の素晴らしさについても語られました。まことさんにとって、戦後に観た父親像としては割と心に残った映画だそうです。

さらに、ベスト3のつもりだったけど絞りきれないという事で「フィールド・オブ・ドリームス」と「息子」を両方紹介!
「フィールド・オブ・ドリームス」の主人公は父親に反発して家を飛び出し、死に目に会えていないことをトラウマに抱える農夫。キャッチボールの名シーンは涙なしには見られません。まことさんは自分が小学生の頃に、夜遅くに帰ってきても早く起きて、毎朝キャッチボールをしてくれたお父さんと重なったと思い出も語りました。

「息子」は三國連太郎さんがお父さん役。農家に住んでいて、子供はみんな都会に出ていて独り暮らし。遠隔地に住んでいる父と子という日本の問題も入っていて、良い映画を沢山撮っている山田洋次監督作の中でも名作だと思うというまことさん。特に父親を演じる俳優の中でも三國連太郎さんは最強だと語られました。
また、最近では疑似家族モノが世界で増えているというまことさん。
イーストウッドの「ミリオンダラー・ベイビー」や「グラン・トリノ」、日本では是枝裕和監督の「そして父になる」もその例です。時代や家族像の変遷の中で、本当の家族関係を描くより、家族じゃない人と家族的な関係を築くことを描く方が、家族の本質を描けるようになっているのかもしれません。
そういう意味で最近おもしろかった作品として、「フレンチアルプスで起きたこと」「国際市場で逢いましょう」は、全然違うタイプではあるものの、ちゃんと時代性もある最近の父モノとして出色していると紹介していただきました!

また、オープニングトーク後も合間にプライベートトークがいっぱい!
『父の日にあげたもの、もらったもの』『こどもの後ろ姿』『お葬式での親孝行』『自分の名前を決めるための膨大なメモ』『父親に叱られたこと』『自転車の練習』など。
中には、まことさんが娘さんに「テレビを見てる時うるさい」とつっこまれて、それって自分の父親と一緒だったなと振り返ったエピソードが。
これを聞いたタツオさんの「ボケとツッコミが入れ替わった時に親になるのかも」と言う意見に、まことさんは納得の様子でした。

子供の時の思い、今だからわかること、そしてこれから先に年をとってわかること。
それぞれ自分のお父さんや子供に思いを馳せ、切ない気持ちも暖かい気持ちもいっぱいの配信となりました!

WOWOWでは6/15(月)より、もうすぐ父の日! 映画で見る、父の背中と題し、"パパ"の存在が重要なテーマとなる秀作・ヒット作5作品を特集!

映画を見て思い出すこともきっといっぱいあるはず!
今回のぷらすととあわせてお楽しみください!

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