ホットロードにみる、少女漫画原作映画(2015/9/30配信)

2015/10/02

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今回のテーマは『ホットロードにみる、少女漫画原作映画』
立川吉笑さん、トミヤマユキコさん、松崎健夫さん、池田裕子さんでお送りしました!

映画版「ホットロード」を中心に、広く少女漫画原作について掘り下げました!

番組前半はまず「ホットロード」について深掘り。
「ホットロード」は86年から別冊マーガレットで連載され、一世を風靡した紡木たくさんの少女漫画。それから約30年の時を経て、昨年、能年玲奈さんと登坂広臣さん主演で映画化されました。

「ホットロード」は少し特殊な漫画。ヤンキー漫画の文脈がある少女漫画なのです。
60年代終わりから社会にヤンキーが出始め、漫画でもヤンキーを題材にした作品が出るように。70年代の終わりから80年代初頭は校内暴力が問題になっていた時代で、その頃は「ビー・バップ・ハイスクール」や「ハイティーン・ブギ」が連載され、映画化もされていました。そんな中、突如として別冊マーガレットで連載が始まったのが「ホットロード」。少女漫画は内面描写を得意とするのに対し、男性漫画は思っていることをセリフや態度で示すことが多くあるというトミヤマさん。『「ホットロード」は、ヤンキー漫画でありながら、少女漫画の文法で書かれていて、そこが他と違う感覚を受ける。モノローグやポエジーなところなど、少女漫画が得意とする内面描写を上手く全体的に挟み込むことで、ヤンキーカルチャーには接近できなくても、共感できたという人がいただろう』と考察。

そうして原作の漫画は当時大ヒット。
しかし、すぐには映画化されませんでした。
この頃には他にも「嗚呼!!花の応援団」「愛と誠」「湘南爆走族」などのヤンキー漫画があって、それらの作品は割と早い段階で映画化されていました。それでも「ホットロード」が30年近くも映画化されなかったのは、ファンも、原作者も、映画の製作者も、「ホットロード」がもつ雰囲気を大事にしたのだろうと健夫さん。映像として実現化するうえで、そのイメージを壊さないように作ろうとして温め続けられたのだろうと語られました。

「ホットロード」が映画化されて成功しているポイントもトミヤマさんと健夫さんに教えてもらいました!
まずトミヤマさんが挙げたのは、原作の余白感を映像化しようとしていること。
原作の画面は黒ベタなどもなく線が少なく薄い感じで、全体的に白い余韻がある雰囲気。映像作品は、端から端まであらゆるもの全部が映ってしまいますが、省略や白抜きの感じを映像やセリフで上手く漫画の余白感の雰囲気を保とうとしている努力が感じられます。

さらに、「ホットロード」には作品のイメージカラーがあります。それはメインビジュアルやタイトルでも使われているブルー。
この画は、日が昇る前or日が沈んだ後にしか撮ることができません。これは "日が昇ることで何かが始まる・何かがわかる"、ということを暗示したもの。主人公はまだ若くて何もわかっていない時期だからこそ、こういう時間に画を撮ろうとしたのだとか。これによって、いわゆる夜にバイクが走るシーンのテールランプの赤色が、真っ暗な夜の空よりも、青と対比されて映えるという効果もあります。
また、アナモルフィックレンズを使用することで、普通のレンズで撮った時に出る画面端のひずみを補正するということもされています。これにより、背景と人物の差を絵で描いたり自分達の目で見たりした時の様に自然に映すことができます。さらに、アナモルフィックレンズは、ライトにフレアが出て輝きが増すという効果も。これらは、監督や撮影監督が背景を重要視し、漫画の雰囲気を効果的に映像化するためなのです。
「ホットロード」にとって、漫画の画面のニュアンスを映像化するのは非常に難しく、重要なポイント。それをうまく表現し、漫画の読後感と、映画の鑑賞後の感覚が近かったのが良かったのだろうとも語られました。

「ホットロード」が公開された2014年は「好きっていいなよ。」「カノジョは嘘を愛しすぎてる」「近キョリ恋愛」をはじめ、他にも少女漫画原作の映画が多数公開しヒットした年。しかし、その中でも「ホットロード」はずば抜けていて、その年の邦画の興行収入だとなんと615本中11位!でも、実は東京のお客さんの入りは決して多くはありませんでした。
ではなぜこれだけのヒットを記録したのか。それは地方での稼ぎが凄く多かったから。
「ホットロード」を観に行ったのは、都内の観客でもなく、連載当初に原作を読んでいた人でもなく、地方でホットロードに自分を重ねた人達。「クローズ」や「ワイルドスピード」が地方でヒットするように、ヤンキー的な文化を愛する人の心の奥の襞に触れたことや、撮影された場所も関東のはずれの方なので、そういうところも地方都市の中高生に近しく感じられたのかもしれません。

映画では、原作から変わっているところや端折られているところももちろんあります。たとえば、言葉遣いは現代っぽい感じに入れ替わっているところもあるし、ヤンキーカルチャーフェチ的な人には物足りないところもあったかもしれません。
でも、映画では具体的にいつの時代とは明言せず、同時代性より、青春恋愛映画としてまず成立させることを重視しただろうとトミヤマさん。健夫さんも、何か不満を持っている、大人はわかってくれないという思いなどは時代が変わっても共通する事であり、それなら時代を超えてもホットロードを描く真の意味は伝わるのではと語りました。

ある程度のボリュームがある作品で、削られてしまうエピソードや設定があるのはもはや映画の宿命。さらに漫画原作の映画は、絵で描かれているものを実体化するうえでの問題ももちろんあります。
観る側の評価軸は人それぞれ、映画化するうえでの取捨選択も作り手それぞれですが、その上でキーワードになるのが努力と愛情。

例えば、最初に批判されがちなのがキャラクター造型の差ですが、ただそっくりそのまま真似ればいいと言う訳でもありません。それではコスプレ大会になってしまうという場合も。
でも、もし結果的に瓜二つでなくても、近づけようとした努力の跡が見たいと話したトミヤマさん。単に似ているからキャスティングされたのか、キャスティングされてから原作を理解し近づけて行こうという俳優の努力があるのかというところはポイント。ゆうこしも、原作をちゃんと読んで、ちゃんとキャラクターを役者が愛してくれてると思えると許せる!と共感。各演者が各キャラクターに愛情を注いでいるか、ある程度時間をかけて作っているかは原作ファンが瞬時に見抜けるもの。その愛情と努力があれば、イマイチなところがあっても観てよかったと思えるのではないかと語られました。

最後は、ここまでに話したお話も踏まえつつ、『少女漫画原作でこれは上手くいった映画ベスト3』を発表!

◆トミヤマさん
1. 海月姫
2. はいからさんが通る
3. 海街diary

◆健夫さん
1. ストロベリーショートケイクス
2. 蜷川実花監督作品(「さくらん」「ヘルタースケルター」)
3. 海街diary

◆ゆうこし
・花より男子

今回上がった作品の中でも、とにかくイチオシだと熱く語られたのが「ストロベリーショートケイクス」!
健夫さんの1位ですが、トミヤマさんも「映画も漫画も大好き!!ぜひ見てほしい!!!」と大興奮!

この原作も、「ホットロード」と一緒で余白が多いような画面。だからこその映像化の難しさがありますが、監督は画ではなく、作品中に描かれている女性像を中心に描けば同じようなものができるのでは、ということに挑戦。その上で、セリフ回しのリズムも漫画でコマを読み進めるリズムになるように実践。女優たちに色々なことを課すことで、漫画の中の人物を描いて世界観を構築している数少ない作品なのです!
しかも、その出演女優の一人、岩瀬塔子さんは、実は原作者の魚喃キリコさんご自身!!演技も上手く、漫画の中の肉体性もご本人で演じられています。さらに、主演したのはトミヤマさんが日本映画の宝と絶賛する池脇千鶴さん!「漫画的に演じることもできて、尚且つ一般人の女子に近い、決して美人ではない派手な仕事でもない普通な女の子の概念を肉体化させると池脇千鶴になる!しかもスクリーンで超絶美人と違和感なく連動する!」とほれぼれ。
また、登場人物が自分の抱える孤独をどう乗り越えるかは少女漫画で常にあるテーマ。その乗り越え方はいろいろあるけれど、「ストロベリーショートケイクス」では四者四様の孤独の乗り越え方を4人分手を抜かずに全部描写。それは原作がやろうとしたことでもあり、少女漫画が長年やり続けてこようとしていたことでもあって、その全ての線が交わるところにこの作品がある!!!と熱弁!

もはやなんで1位じゃなかったのか、というレベルの熱狂ぶりでしたが、敷居の低さで「海月姫」を選んだそう。でも「ストロベリーショートケイクス」もいつかは観てほしいし、映画好きや文芸的漫画が好きな人はより一層ハマると思う!とオススメしていただきました。

WOWOWでは【ホットロード】の初放送を記念し、少女漫画を原作にした実写映画化作品7本を連日放送中!
ラインナップ・放送スケジュールはコチラ

また、トミヤマさんオススメの【海月姫】も11/1(日)よる11:15~放送致します!
スタッフや監督がファンだったんだろうなということが感じられて、原作愛がちゃんと映像側にある映画です!
番組詳細はコチラ

今回のぷらすととあわせてお楽しみ下さい!

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