恐怖の音楽(2015/11/2配信)

2015/11/04

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今回のテーマは『恐怖の音楽』
西寺郷太さん、添野知生さん、東美樹さんでお送りしました!

人はどんな音に恐怖を感じるの?ということで、今回はダリオ・アルジェントの映画を中心に、ホラー映画の劇伴にみる恐怖の音楽を掘り下げました!

まずは放送されるラインナップをチェック!⇒http://bit.ly/1SngyMe
ホラー自体そんなに得意ではなくて、最初は観るのを躊躇っていたけれど、見始めるとすごくお洒落!映像もかっこよかった!と口を揃えた郷太さんと美樹ちゃん。
アルジェントの中でも初期のスリラー作品が好きだという添野さんは「歓びの毒牙」と「わたしは目撃者」が入っているのが素晴らしいとオススメ!

そもそもダリオ・アルジェントってどんな人?ということで経歴を振り返り。
アルジェントは1940年生まれのイタリア人で、今年75歳。父は映画プロデューサーで、ダリオ本人は映画批評から脚本家になり、ベルナルド・ベルトルッチと共にセルジオ・レオーネ監督の「ウエスタン」の脚本で期待の新鋭として名を上げます。
その後、「歓びの毒牙」でジャーロ作家としてついに監督デビュー。ジャーロとはイタリアのホラーの伝統にあるジャンル。基本的に超自然の要素が無く殺人鬼の出てくるホラーで、犯人当てや推理の要素が強いけれど、血まみれでセンセーショナルな映画です。
特にアルジェントの最初の2本は野心的で力も入っている作品。70年代イタリアの先鋭的でスタイリッシュなデザイン感覚を持ちながら、人の孤独が感じられるような怖さもあり、それまでにない鮮烈なセンスがありました。

新人監督なので低予算映画だったとはいえ、父がプロデューサーなのでそれなりにお金をかけて作ることができたのは他の映画人より有利だったポイント。いかに力のあるプロデューサーとくっつくかは映画人として重要ですが、その悩みはアルジェントにはありませんでした。

彼が恐怖映画史のポジションで興味深いのは、途中で方向転換をしていること。
アルジェントはジャーロの作家としてデビューし4作撮りますが、70年代半ばに「エクソシスト」のヒットで世界的にオカルトブームが到来。そこでアルジェントも方向転換をして「サスペリア」を撮り、歴史の転換点の両方を繋ぎ生きた人という位置付けとなったのでした。

そんなアルジェントの映画音楽のキーパーソンとなったのがエンニオ・モリコーネ。
彼は1928年生まれ。来週には87歳の誕生日を控えながら今なお活躍している映画音楽界一の大巨匠です。モリコーネは現代音楽家として世に出ましたが、それだけでは食べて行けず、RAIというイタリアの公共放送局のスタジオでアレンジャーの仕事からスタート。歌謡曲のアレンジの仕事などを経て、映画音楽の作曲家としては60年代にデビューします。モリコーネ自身はもともとトランぺッターで、クラシックの教育をがっちり音楽学校で受けた人。譜面が読めて、編曲もできて、即興演奏もできる、という映画音楽に求められるものを持っている人でもありました。

映画音楽の流れでみると、50年代はまだ恐怖に特化した音楽や色濃い特徴はなく、シンフォニーで重厚な音楽がつけられる普通の劇映画と基本的に一緒でした。
しかしその流れを変えたのが60年の「サイコ」。アルベルト・ヒッチコック監督作で、劇伴はバーナード・ハーマン。オーケストラの音楽ですが使い方が普通ではなく、音楽自体が手間のかかった緻密で丁寧な仕事で、これが一つの時代を作り、以後ホラー映画の手本となる革命的作品となったのでした。

これを引き継いだのがモリコーネ。
彼自身は実験精神が強く、音楽学校では現代音楽だけをする特殊な楽団に入っていて、映画音楽の作曲家になった時も、そこでやっていたことをそのまま反映させたようなところが特徴として出てきました。
モリコーネはセルジオとやった「荒野の用心棒」で名を上げますが、そこで特徴的だったのが映画音楽で使われないものをガンガン使ったこと。口笛、鞭の音、金床を叩く音、口琴などを使ったり、西部劇にエレキギターを取り入れたりしたのも新しい試みでした。添野さんも、改めてモリコーネの音楽を気にしながら観ると、こんなに色んな音が入っているのかと発見があったとか。
モリコーネの音楽は「構造音楽」「偶然性の音楽」「不協和音」「ジェスチャー音楽」という4つの構造で成り立っているとインタビューで話していて、これは60,70年代としては標準的なつくりであり、タイミングやムードの設定、怖さの加速感を上手く音楽で作っています。

また、映画音楽では黒澤明監督の対位法が技法として用いられますが、モリコーネもまさにその方法を多様。暗いシーンで明るい曲、明るいシーンで暗い曲、などムードが違うものをわざと使うのが良いとされ、そのミスマッチさが逆に怖さを増加させる効果があります。モリコーネもオルゴール、ハーモニカ、女性のスキャットなど、美しく良い感じがするアレンジをうまく使い、ジャーロの効果を上げたのでした。

アルジェントとはデビュー作から組み、上手くもいっていたモリコーネですが、あるときプロデューサーである父に『君の感覚は古い』と切られてしまいます。その発端となったのが「エクソシスト」のヒット。「エクソシスト」のテーマにはプログレを取り入れたことが感覚的に新しく、皆プログレっぽい音楽がホラーに合う感じを掴んだのです。父はその時何が受けているかを見抜く力があり、興行師としては正しい判断でした。

その後アルジェントは、売れていなくて解散しようとしていたイタリアのプログレバンド、ゴブリンを捕まえます。サントラやってくれたら援助しようということで良い感じの協力関係ができ、一緒に音楽作りをする新たなコンビができました。最初の作品は「サスペリア PART2」。ジョルジオ・ガスリーニというジャズピアニストとゴブリンが半分ずつ音楽をかいていて、今聴いても素晴らしいサントラを作っています。
ゴブリンはそこからオリジナルアルバムも出し良いところまで行きますが、その後中心メンバーが抜けるような形で分裂。以後は、アルジェントが映画で必要なときだけ再編するような形となりました。

ちなみに、アルジェントとモリコーネは今でも仲が良いらしく、父が亡くなった後の90年代には再びタッグを組んでいます。
モリコーネ自身もダメ出しされた決まったパターンを乗り越えて、その後は実験的側面をちょっと封印することで美しいメロディーを書く作曲家として名を売り、アメリカ映画もガンガンやるように。今のモリコーネは世界の名だたる監督とも組んでいますが、晩年となったモリコーネは自信作にアルジェントとの初期作を挙げていて、嬉しいけど意外な感じだと添野さんは語りました。モリコーネは「エクソシスト」のせいで仕事を無くしたにも関わらず、「エクソシスト2」はモリコーネが音楽を担当しているのも不思議な巡り合わせを感じられたのでした。

最後は、添野さんオススメの恐怖映画サントラを紹介してもらいました!ぜひ本日のお話を踏まえてこちらの3枚もお楽しみ下さい!

「Place Beyond the Pines」/マイク・パットン
「ウラムの螺旋(Ulam's Spiral)」/ゲイリー芦屋
「Petra Goes To The Movies」/ペトラ・ヘイレン

対位法の他にも人が恐怖を感じる音として、オバケの"ひゅ~どろどろどろ"みたいな誰でもわかる記号化された音から、ただの単調にずっと同じ音が続くこと、予測不可能な狂ったリズム、明らかに怖そうな重低音やコード進行、などなどが挙げられましたが、「作る側も楽しそう!帰ったらすぐにでも怖い音楽を作りたい!」と制作意欲を刺激されまくりだった郷太さん。音から恐怖を感じるという奥深さや面白さを知ることができる配信となりました! 

WOWOWでは≪映画に出会う![恐怖作家ダリオ・アルジェント]≫と題し、ダリオ・アルジェントの新旧5作を 11/16(月)から連日放送!

特に、【歓びの毒牙】の44分頃と【わたしは目撃者】のエンドロールは添野さんに教えてもらった要注目ポイント!
【歓びの毒牙】は殺し屋に主人公が追われるシーンで、長いドラムソロにミュートを付けたトランペットにエフェクターをかませたような即興っぽい音楽が素晴らしいし、【わたしは目撃者】ではキーボードで音を出さずに、ただ鍵盤をガチャガチャしているだけのような良くわからない音を楽器代わりに使っているのが上手いとのこと。
ぜひこの点にも注目しながら、ダリオ・アルジェントの作品をご堪能ください!

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