作家と考える書籍の現場(2015/11/12配信)

2015/11/13

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今回のテーマは『作家と考える書籍の現場』
サンキュータツオさん、春日太一さん、玉木碧さんでお送りしました!

お久しぶりの春日さん無双回!
今回は春日太一物語とも言うべき軌跡と実体験を交えながら、映画本を売るための考え方を基軸にお話ししていただきました!出版関係者・ライター志望者はもちろん、活字メディア以外に関わる人も必見です!!

≪ぷらすと初の書籍化!≫
まずはいよいよ明日発売される春日さんの新刊「市川崑と『犬神家の一族』」についてお話を伺いました!
この本、実はぷらすと『市川崑に出会う』『春日が語る金田一』の書籍化!この2回で話されたことが本になったのです!!
でも、書かれている内容はぷらすとで話されたことだけではありません。もしかして、配信を見てくれた人は本を買わないかもと思い、オリジナル取材を入れることにした春日さんでしたが、そこで石坂浩二さんにした取材がとんでもなく素晴らしいものに!!当初は特典のつもりだったインタビューでしたが、本の結論として思いっきり語り尽くされています。しかも、今までの石坂さんのインタビューでは出てきていない話ばかり。さらに、いま他のインタビューは断ってくださっているそうで、ロングインタビューが読めるのはこの本だけという独占状態なのです!

この本が売れると、今後ぷらすとの書籍化も増えて行くかも...!?ぷらすと2回の内容も再構成されていて、既にご視聴いただいた方も絶対に面白く読んでもらえます。ぜひ手に取ってお楽しみ下さい!

≪ド新人が本を出すには≫
ここからは、春日さんが辿ってきた出版の軌跡を振り返りながら、本を作るプロセスや方法論をたっぷりトーク!

スタート地点は大学院生時代。本を出して表に出て行きたいと思っていた春日さんですが、実績もないド新人にとってそもそもの本を出すということが大きなハードル。それでも手があると出された提案が新書でした。
新書は必ずレーベルごとに月に4冊出ますが、意外と枠が埋まらないという場合も。しかも初版1万部は保障されているし、平積みにもなるし、手にも取ってもらいやすい。だから、もし内容さえ面白ければ新人でも企画書が通る可能性があるということでスタートします。

≪看板作品があればすべてが変わる≫
新書『時代劇は死なず!―京都太秦の「職人」たち』でデビューした出した春日さんでしたが、出版までの紆余曲折や自身で本屋に営業して出版社の営業から怒られたり、次作までの間に詐欺師的な出版プロデューサーに騙されたりでご自身も荒れまくり、決して順風満帆ではなかったデビュー期。

もうこの業界でダメなのか...とも考えていた時期に、春日さんのゴッドファーザーとも言うべき人との大きな出会いを果たします。
その人からのアドバイスが「作品を一つ作れ」ということ。作品とはつまり、"この男がこの作品を作った"、と言える看板になるもの。作品があればライターではなく作家となり、使われる側から使う側へと世の中の扱いが変わる。だから、次の勝新太郎の本は作品にしろ、と言われたそうです。

そこで当初『天才 勝新太郎』は、ハードカバーの単行本にすることを想定。ハードカバーの方が高級な扱いをしてもらえるし、作品というイメージにもあっているし、新書へはデビュー作での苦い思いもあっての想定でした。

≪その本は誰に読んでほしいのか≫
しかし、当時はまだ勝新太郎への酒の席での豪快伝などの誤解が先行していて、どの出版社も企画が通らずじまい。でも、回り回って文春新書のトップの目に留まり、新書なら出したいとの話が上がります。
もともと単行本で作るつもりでいた『天才 勝新太郎』。断るつもりでいた春日さんですが、ある投げかけが、春日さんのその後の商売のスタンスを形作るきっかけとなります。

「君はこの本をどういう人に読ませたい?
マニアや映画に詳しい人が読んで終わる本にするか、世間一般に多く読んでもらうか。」

書店で映画本のコーナーはマニアなど行きたい人しか行かないコーナー。でも新書は書店の入口の一番良いところに積み重なっているから、世間一般の人でもちょっと興味を持っただけで手に取ってもらえるのが強み。
春日さんが『天才 勝新太郎』でしたかったことは、勝新太郎という人間の誤解を解き、すごい作家だということを世間一般に知ってもらうということ。だったら新書で出すべきだということだったのです。

≪本を売るための戦い方≫
春日さんのスタンスや方法論を形作る上でキーパーソンとなったなのが『天才 勝新太郎』で出会った編集者。
春日さんが唯一口喧嘩で負けるというほどの女傑で、本のクオリティを上げるためのやり取りも壮絶だったそうですが、彼女が素晴らしいのは本を売ること、そして春日太一という作家をどう売り出すかをも考えてくれたこと。
通常本を売り出す場合に、週刊誌、文芸誌、新聞社など各メディアに配って終わりという場合が多いですが、彼女が考えたのは誰に渡せばどんな効果を得られるかということ。
通り一遍のリストや、映画の本だから映画雑誌や映画評論家に送る、ということではなく、ちょっと違う世界の人が褒めて拡げるのが良いのではと考えたのです。
そこで功を奏したのが水道橋博士。当時はSNS拡散時代の幕開けでもありましたが、博士がTwitterに書き込んだことから評判を呼び、映画に積極的に関わる限られた分母の人達だけでなく、その外側にいる人たちへも一気に広がっていったのです。

こうしたSNSやAmazonなども含めたネット上での空中戦と共に、やっぱり重要なのが書店での地上戦。
そこで彼女が考えたのはレンタルビデオと書店が一緒になったTSUTAYAで、座頭市コーナーの横に本を置くこと。映画とリンクさせることで効果を上げることができたのです。

≪男女関係のような著者と編集者≫
『天才 勝新太郎』の編集者や文春の様に、親身になって売ることを考えてくれることはとても大切なこと。本を売るために著者・営業と共に三位一体の1ピースとなるのが編集者。お客さんにお金を払って買ってもらう商品を作る上で、編集という仕事が非常に大事なのです。

書き手は母親、作品は自分が産んだ子供。その子供を育てたり世に出したりするのが父親だとすると、編集者が父親の役割を果たします。自分の子供をその父親に任せられるかどうかが編集者との相性でとても重要なのです。

これまでいろんな編集者とお仕事をされ、題材への愛が深い人、あまり意見は言わない人、テクニカルなアドバイスをする人、など様々なタイプの人と出会ってきた春日さん。後悔を感じた場合もあれば手ごたえを掴んだ場合もあり、自分とは合わないと思っていた人でも他の企画ではヒットを飛ばしたということも。つまり、誰のどの方法が正しいということではなく、企画や自分の仕事のスタンスと見合うか見合わないかかがポイント。誰かが良い人だと思って紹介してくれても合わないことだってあるし、正に男女関係とも似たような関係性なのです。

≪編集者は最初の読者≫
その上で、春日さんが編集者に出している条件が、映画マニアではないこと。
編集者は著者にとって最初の読者。世に出るまでは編集者が読者代表ですが、春日さんが相手にしたい読者は映画マニアではないのです。つまり、珍しい名前に嬉しくなったり、題材を思い出して懐かしくなったり、といったマニア的視点の読み方では、マニア市場を超えた部数を売ることはできません。新書を書きたければ、対象のジャンルを超えた普遍性を提示できるかどうかが重要。だからこそ、対象となる読者の目、マニアの外にいる人たちの目で読んでくれることが必要不可欠。映画に興味がない編集者で、ここがわからない、おもしろくない、と指摘してくれる人の方が相性が良いのです。

≪春日太一というジャンルを作る≫
本を書く、本を売る、ということの目的は人それぞれですが、タツオさんは出した本が売れて儲かることよりも、その本を出すことで出られるラジオやテレビがあることに重きを置くタイプ。一方で春日さんは真逆の感覚で、職業作家だからこそ、本でいかに稼ぐかが重要。それを前提に販売部数を振り返った春日さんは、3万部が壁になっていることに気付きます。
その壁を破るには自分自身が変わるしかない。今までは色んな人や企画の内容を頼りにしてきたけれど、春日太一という商品の価値が弱いと思ったそう。
そこからは自身のキャラクターを見せることで興味を持ってもらおうと、ラジオに出たり、Twitterを始めたりと、タレント化して名前を感じてもらうために表に出るように変わっていった春日さん。ぷらすとに出始めたのもこの頃。Twitterのフォロワー数も一つの指標として毎年目標を作っているそうで、一時は頭打ち状態だったところから今年1年で3000人程増加。そしてついに『なぜ時代劇は滅びるのか』は見事4万部を突破!しかも、この日の配信前まではフォロワー数9980人前後でしたが、配信中に記念すべき10000人突破の瞬間を迎えることもできたのでした!!

≪自分が読みたい本にする≫
正直に言えば、本は労力に見合っただけの稼ぎがあるわけではないし、他の人が書いてくれるなら書かないという春日さん。それでも自分で本を出すのは、自分が読みたいから。それは春日さんが本を書く上で前提としていることであり、非常に重要なポイントでもあります。
春日さんはマニア上がりの人の悪い癖として、書きたい本を書いている人がよくいると指摘。書きたい本は、書いたことに納得して終わってしまうのです。でも、自分が読みたいと思える本にするには、文章のレベルを上げる必要もあるし、情報を入れる必要もある。だから、書きたい本ではなく、読みたい本を書くことが非常に大切なのです。

≪ど真ん中の席、空いてます≫
著作すべてが実売1万部以上、今年は半年で5冊を出版し、来年も新刊が5冊。
春日さんがそれだけ稼げているのは、メジャーのど真ん中に座っているから。
今は手軽に読めるノウハウ本などの新書市場か、マニアが納得するようなニッチ市場という両端に人が寄ることで物凄い争いが起こっていて、ライターは食べていけないという人もいっぱいいます。でもそのど真ん中である、本格的な新書の座は空いているという春日さん。新書ユーザーに喜んでもらえる文章と内容であることは大事だけれど、そのど真ん中に通じる商品を出せる人間になればしっかり稼げて食べていけるのです。
まだメジャーのど真ん中に座る人は多くありません。だから、若手も同年代も、皆が来て盛り上げてほしいと語られました。

≪エンディング≫
出版業界をめぐるタブーから、売れた本も売れなかった本も振り返ってもらった今回。
要約のコツ、価格へのこだわり、タイトル論、装丁論、電子書籍を出さない理由、売れ続ける必要性など、ここには書ききれなかった商売のヒントが凝縮された2時間となりました!今回語られたことは本だけに限らず、全てのビジネスやモノ作りに通ずること。実際のテクニックから精神論まで、大切なことを沢山教えてもらいました!アーカイブも近日公開予定なので、ぜひ繰り返しお楽しみ下さい!

春日太一さんの最新著作であり、初のぷらすと本となる「市川崑と『犬神家の一族』」はいよいよ明日、11/14(土)発売!

本の発端となったぷらすと『市川崑に出会う』と『春日が語る金田一』はWOWOW動画で配信中!まだ試聴していない人は予習として、すでに視聴済みの方は復習としてお楽しみ下さい!
『市川崑に出会う』視聴はコチラ
『春日が語る金田一』視聴はコチラ

さらにWOWOWでは【ノンフィクションW 市川崑 アニメからの出発 ~幻のフィルム、巨匠の原点~】を11/14(土)午後1:00~初回放送!

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