萬錦と勝新(2015/12/10配信)

2015/12/14

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今回のテーマは『萬錦と勝新』
サンキュータツオさん、春日太一さん、内田理央さんでお送りしました!

この日は約半年ぶりにだーりおちゃん登場!おかえりなさい~!
そして春日さん無双回再び!今回は戦後の時代劇スターの栄枯盛衰をギュギュっと凝縮して語ってもらいました!中心となるのは萬屋(中村)錦之介、勝新太郎、三船敏郎、市川雷蔵。この四人の動きを語っていくと戦後時代劇の歴史がそのまま見える!ということで、戦後時代劇と共に歩んだ彼らの人生やキャリアを5年ごとの編年体で、97年まで一気に振り返ります!

≪50年代前半 仮面ライダーと萬錦の意外な共通点!?≫
番組は六大スターが生まれた20~30年代の時代劇ブーム、そして戦争前後の受難の時代など、戦後に至るまでの背景をざっくり振り返り、今回の主役、4人の歩みのスタートとなる50年代前半のお話へ。そこで戦後時代劇史にとって非常に重要な年となるのが54年。4人の若者が時代劇の表舞台に出揃います。

まず先頭を切ったのが三船敏郎。最初は現代劇で役者デビューしますが、その後初めて時代劇の主役を張ったのが54年。黒澤明監督作の「七人の侍」で、ワイルドで野獣のごとく暴れ回るアクションを見せ、それまでのスターや主演のイメージを全部変えました。

さらに、市川雷蔵、勝新太郎、中村錦之介が同時期にデビューを果たします。
勝新と雷蔵は大映の「花の白虎隊」でデビュー。しかし、扱いは雲泥の差。雷蔵は次世代のスター候補として引き抜かれましたが、一方勝新は縁故を頼って大映に入ります。そのため、同じ作品でデビューしている二人ですが、スタッフからの扱いも作品の中での役の大きさも全然違う扱いだったのでした。

錦之介は歌舞伎の家に生まれますが、歌舞伎界の風習や四男であることで苦難していたところ、美空ひばりとプロダクションが彼を見出して映画界へ。後に東映が次世代のスターとして引き抜きます。
東映は戦後にできた新興企業。他の会社がやっていないことで目立つしかないと新市場開拓を目指し、子供向けに眼を付けて女性や子供に愛されるスターを探していました。そこでなんと占い師の助言により東映は錦之介を発見!「笛吹童子」のファンタジー性がある役でデビューし、想像以上に子供と女性から大人気を博して東映も一気に大企業へ。東映の子供向けで儲けるという企業戦略は錦之介の成功によって作られた側面が大きく、それは今に至る仮面ライダーなどの伝統のスタートでもあったのです。今のだーりおちゃんがいるのも錦之介のおかげかも!

≪50年代後半 錦兄の脱皮≫
この時代は戦前のスター、嵐、長谷川、片岡、市川の4人に戦後のスターが加わり、毎年150本の時代劇が作られるなど空前の時代劇ブームに。

三船は黒澤明と稲垣浩という巨匠二人に恵まれ、名作・大作に出まくって世界に評価されます。雷蔵は市川崑監督作「炎上」で二枚目からの脱却に成功。

錦之介もアイドルから脱皮して役者へ。彼は江戸っ子気質で兄貴分。当時のスターは雲の上の人で、スタッフは名前すらも呼ぶことが出来なかった時代ですが、錦之介は錦兄(きんにい)と呼ばれ若いスタッフと飲み歩くのが好きな人でした。会社や先輩に食って掛かってちゃんと意見を言う、時代を変えようという気も強い人であると同時に、それを言えるだけの努力家でもある錦之介。そんな江戸気質を出した映画をということで作られた「江戸の名物男 一心太助」がばっちりはまり、着飾った品行方正なアイドルから役者へと脱皮したのでした。

と、3人は大充実期を迎えたのですが、ひとり乗り遅れたのが勝新。映画量産体制の中、ようやく穴埋めピッチャー的に選ばれるようになりますが、勝新は何故か、長谷川一夫の流し目の二枚目でなよっとしたカッコよさに憧れることに。今となっては信じられませんが、やはり勝新には合わず・・・映画もあたらず穴埋めすらままならない中、置いてけぼりを食らってしまいました。

≪60年代前半 勝新、ついにブレイク!≫
そしていよいよ、60年代に入って4人がそろい踏み!
まず三船は61年に黒澤とのコンビで「用心棒」「椿三十郎」「赤ひげ」という金字塔を打ち立てます。従来の立ち回りとは違う、実践的で本気のアクションを見せたほか、刀の重みや痛みが伝わる殺陣を追求し、血を流す演出も生まれて再び時代劇に革命を起こします。

東映では巨匠たちが文芸大作を撮るように。そこで大円熟期を迎えていた錦之介が文芸大作でも次々に名演技を見せ大ヒット。そんな円熟期の集大成として作られたのが、今回放送のある「宮本武蔵」シリーズの5部作。1年に1本ずつという超贅沢な作り方ですが、これは錦之介の役者としての成長と武蔵の精神的な成長がともに描かれる上で意味のあること。1部の暴れん坊で手におえない武蔵は「一心太助」の頃のエネルギーの塊であった錦之介と重なるもの。4部の大決戦で壁にぶつかる武蔵も当時の錦之介と一致するもので、すごくリアルに武蔵を演じることになったのでした。

そしてこの時代、ついに勝新が覚醒。自分らしい芝居を探す苦悶の日々の中で、三船の切り開いたワイルドな役どころの2番走者として走れるようになります。「不知火検校」で自分の弱点をすべてカバーする役と運命の出会いを果たし、ヒール役に勝機を見出しました。さらに「悪名」で弾みをつけた勝新は、ついに「座頭市物語」に出会うことに。映画館側の評価を得てシリーズも作られて行く中、現代劇でもう一本、ということで始まったのが今回放送のある「兵隊やくざ」シリーズでした。戦争映画で軍隊ものは上官にいじめられるのが定番ですが、暴れん坊の感じを活かしてその上官を殴り返す痛快もの。俺の時代がきた!という勢いがある芝居を見ることができるので、上司や先輩の理不尽などに苦しんでいる人は「兵隊やくざ」をチェックです!

この頃雷蔵は美剣士役が通じなくなりはじめ、体調も崩して思うような芝居が出来なかった時代でしたが、「眠狂四郎」シリーズで背徳的なダークヒーローとしてイメチェンに成功。これにより、雷蔵と勝新は二枚看板として"カツライス"とも呼ばれるようになりました。

≪60年代後半 オールスター共演実現!≫
ようやく彼らの時代が来たかと思わせた60年代前半でしたが、一方でこの頃に戦前スターが次々と一線を外れ、映画業界全体も大凋落傾向にありました。60年代後半も観客動員はどんどん落ち、映画会社はスターを抱えきれなくなり、スターも枠にとらわれることに窮屈さを感じ始め、相次いで映画会社から独立。

三船は東宝の組合の力が強くなり、思うような映画製作ができないことや、黒澤がハリウッドに進出して余剰人員が生まれたことで、スタッフ100人を社員として雇い入れ独立。広大な土地を買って撮影所を作り、東宝と提携して野心的大作を連発しました。

錦之介は文芸大作が当たりにくくなり、身代わりが早い東映は時代劇を切り捨て任侠映画へ。でも錦之介は乗り気ではなく、おまけに「日本侠客伝」での不運もあって高倉健と覇権が入れ替わることに。さらに俳優労組の組合長に祀り上げられて会社と揉めたことから居場所がなくなり、自分のプロダクションを作って東京に行きます。

勝新は「座頭市物語」「悪名」「兵隊やくざ」のローテーションに飽き、自分の表現欲求が役者でおさまらずに、思い通りの映画を作りたいという製作欲求が。しかし勝新は大映の稼ぎ頭。完全独立は困るので、子会社的な社内プロダクションの形で勝プロを設立しました。

この3人のスターの独立によっていよいよ、映画会社の垣根を超えた、本当のオールスター競演が実現!
しかし、69年に雷蔵は早くも逝去。どんどん体が悪くなり、その流れには追いつけませんでした。でも、3人と同じように会社にいてはダメだと考えていて劇団の旗揚げをしようともしていた様です。一方で大映の社長にと言われたくらい経営センスもあり、もし生きていたら雷蔵が社長・勝新がトップスターという大映が生まれたかもしれないと思うと、運命の皮肉さが感じられます。

≪70年代前半 映画の挫折とテレビでの復活≫
この時代は映画不況がどうにも止まらず、大映はついに倒産、東映もヤクザ映画が当たらず、東宝は製作部門を分離して配給だけに。そんな中、プロダクションを作って独立したスター達は、3人とも映画に挫折し、テレビで復活を遂げます。

まず三船プロダクションは、100人のスタッフを抱えているが故に、映画がひとつこけると途端に経営は火の車。残念ながら70年代に作った作品が相次ぐ不振に追われ、いよいよ映画は作れないと撤退。その代わり、定収入が見込めるテレビ業界での安定を選びます。

同じく映画製作に乗り出すも当たらず、テレビ業界へ入ったのが錦之介。映画と同じことをしたくないと、ニヒルさを見せたり、すっぴんで演じたり、次々と新境地を開拓することに。

そして勝新は東宝で映画シリーズの「子連れ狼」を作って大ヒット。勝新は役者よりもプロデューサーや経営者として評価され出します。一方で、「座頭市」や「悪名」シリーズが当たらなくなり、勝負をかけた「無宿」もヒットせずついにテレビへ。時間も予算も普通より多くかけ、もらった予算に対しほぼ儲けを出さないままそのまま使ってしまうという作り方をしていましたが、その分すごく充実した作品を作ることもでき、勝新第二の黄金期を迎えました。

≪70年代後半 映画界への帰還≫
3人ともテレビ業界には行きましたが、この時代は映画界の状況が一変。1本立ての超大作に豪華キャストでお金をかけて作る作品が出始め、もう一度主役として、あるいは今度は重鎮役として、3人を映画界が再び求め出します。

三船は角川の大ヒット作「人間の証明」や東映の「日本の首領 野望篇」で再び映画界へ。
さらに錦之介は名前を中村から萬屋に変え、「 柳生一族の陰謀」の主演で、なんとかつて一度は居場所がなくなった東映へ13年ぶりに帰還!!しかも当時のスタッフは13年前に錦兄と慕いお世話になった人ばかり。衣装合わせで俳優会館を訪れた際には、何も言わずとも皆が撮影所の門の周りに集まり、「おかえり錦兄!!」という感じで出迎え、錦之介も握手で応えたという心温まるエピソードを教えてもらいました!

そして、もう1人帰還するはずだったのが勝新。今まで錦之介も三船も、監督の指名をもらい、その監督達と組んで成長もしてきましたが、勝新は指名がなく、自分で切り開くしかないと常に戦い続けてきた人。そんな勝新に、ついに黒澤監督たっての願いとお声が掛かったのです!...が、初めて巨匠からお声が掛かったことにはしゃぎ過ぎてしまい、はしゃぐ男が嫌いな黒澤監督とは撮影が始まった初日に大喧嘩...主演は仲代達矢に変わるという悲運の結果となってしまいました。

≪80年代前半 プロダクションの崩壊≫
この頃はスターが自分で会社経営を初めて15年前後。スターによる会社経営の限界と、バラエティ、アイドルブーム、漫才ブームなどやテレビ・芸能界イケイケ期とが相まって、相次いで崩壊へ。

勝プロは黒澤と揉めたことで声がかかりにくくなったり、話が来ても実験的なことをやろうとして上手くいかなかったりと経営不振に。勝新を校長に据えて俳優学校を作りもしましたが、やはり会社が運営できなくなり81年に倒産。
三船プロは79年にある幹部社員が抱えていた役者を連れて独立した裏切り事件により分裂。84年には撮影所を閉鎖して三船の個人プロダクションになります。
そして錦之介の中村プロは経理担当重役の使い込みにより倒産。さらに悲劇が重なり、82年に重症筋無力症を患って入院生活により第一線から退場。体に力が入らなくなってしまう病気で座れなくなってしまい、時代劇にも出ることができなくなってしまったのでした。

≪80年代後半 再び第一線へ!≫
こうした凋落の時代を経るも、それぞれベテランとして生き方を見つけます。
三船は大河ドラマ「山河燃ゆ」や「男はつらいよ」でほほえましい頑固おやじなど重鎮役で新たな活路を見出します。錦之介は当時の若手スターたちが主演する若者向け時代劇「弐十手物語」で、彼らを後ろから支える奉行役として復活。若手の代表格から始まった錦之介が、ついに支える側へと周ったのです。

そして、ついに勝新が復活!勝新の圧倒的存在感を利用して怖い権力者を演出した「独眼竜政宗」の豊臣秀吉役が見事なはまり役。ここでやっぱり勝新はすごいということになり、「浪人街」「孔雀王」のヒットや「座頭市」のシリーズ化によってふたたび第一線への復活を遂げました。

≪90年代前半 勝新、最悪の晩年≫
いろいろ苦労はあったものの、三船と錦之介はそう悪くない晩年を迎えます。三船は認知症になってしまい、ギリギリの中で戦いながらも、ちょくちょく小さい作品に出演。錦之介は舞台を中心に活躍し、全国を巡業して人気役者に。テレビでも重鎮役を演じ、バリバリの現役を続けていました。

一方で、最悪の晩年を迎えたのが勝新。それまでの勢いで90年代に期待が膨らんでいた中、麻薬不法所持で逮捕。しかも麻薬がパンツに入っていたことや、それに対する質問の答えもウィットに富んだ切り替えしを見せたことで一気にネタキャラへ。良い作品にも出ているのですが、役者としての仕事が注目されなくなり、勝新=パンツと酒の男、というイメージがついてしまいます。とはいえ、オファーが無かったわけではありません。犯人役や老人役のオファーがあっても、金の為にそんな映画に出たと思われたくないし、応援して来てくれたファンに悪い、と言う気持ちで断っていた様です。でもきっと、それだけではない事情や思いもあるだろうし、ネタキャラとして豪快エピソードを喋っている方が、本人としては楽になっていたのかもしれないという気がしないではないと春日さん。錦之介や三船が、苦労はしたと言えどある程度余裕のある人生を送ったのに対し、勝新は結局役者として評価されず、監督作も評価されず、だからこそある種死ぬまで若かった人でもあったのでした。

≪97年 時代劇史の終焉≫
そんな三者三様の晩年のなか、ついに1997年を迎えます。
錦之介は3/10にガンで逝去。そのとき同じ病院の隣の部屋に入院していたのが勝新。この二人は、同じ年に生まれ、同じ年にデビューし、同じ年に亡くなったのです。さらに、同年のクリスマスイブには三船も逝去。こうして97年、時代劇史は終焉を迎えました。戦後時代劇を支えた人々が一遍に亡くなり、当時大学進学を控えた春日さんは失われた感じや終わった感じがあったと話しました。

≪主役はいてもスターはいない≫
錦之介も勝新も、それぞれ単体で語ったとしても1回分で収まるのか・・・というほどのビッグスターを1回で語るということでパニクっていると言っていた春日さんですが、敢えて三船と雷蔵を加えて尚且つ2時間に収めるという無双トークがもはや神業!

だーりおちゃんが特に印象に残ったと話したのは錦之介の心意気や兄貴分としての姿勢、そして13年ぶりの帰還でのエピソード。自分も今までのお仕事の中で良くしてもらった先輩やスタッフさんのことはずっと覚えているし、自分もそうやって帰っていけるようになりたい!と感銘を受けた様子。さらに、主演スターとしての心得やスタッフとの関係性の大切さ、先輩方の気持ちを知り、これからもそういうものを引き継ぐ気持ちで頑張りたい!と決意や覚悟を話してくれました。

このだーりおちゃんの女優コメントに、平常心を保つのが大変なほどに嬉しいと春日さんは感激。スタッフも役者もみんなを引っ張るスターとして目覚めていって欲しいと期待を寄せます。
春日さんの神がかり的なトークにも、だーりおちゃんの成長にも、ニコ生は8888弾幕でいっぱいになったのでした~!

WOWOWでは1/1(金・祝)に宮本武蔵役を萬屋錦之介(初代中村錦之助)が熱演した大型時代劇の名作「宮本武蔵」全5部作を一挙放送。 
そして1/25(月)~は勝新太郎が主演し、1965~72年に大映や勝プロが全9作を製作した「兵隊やくざ」シリーズ全9作を一挙放送します!

ラインナップはコチラ↓

今回のぷらすととあわせてお楽しみ下さい!

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