タイムトラベル映画の構造(2015/12/15配信)

2015/12/16

タイムトラベルムービーの構造_re.jpg

今回のテーマは『タイムトラベル映画の構造』
中井圭さん、堺三保さん、添野知生さん、早織さんでお送りしました!


今回はSF兄貴ズ、堺さんと添野さんをお招きし、SF的観点からタイムトラベル映画の歴史を振り返りつつ、その基本構造を考察!普段はあまりSFとの接点がないと話していた早織ちゃんは、堺先生と添野先生の授業を新鮮そうに聞いていました!

≪タイムトラベルムービーの歴史≫
遡れば童話・昔話・神話など、かなり古くからあるタイムトラベルムービー。たとえば浦島太郎などもそのひとつです。
ですが、もう少し近代的なものはエドワード・ベラミーと言う社会主義者が「顧みれば」という小説を書いたのが最初と言われています。
その後いわゆるジャンルSFに近いものはH・G・ウェルズの「タイム・マシン」の原型となったものが1888年に登場。映画誕生よりも少し前の19世紀後半なので、意外とジャンルとしては新しめ。過去に戻るお話の一番有名な小説は1889年マーク・トウェインの「アーサー王宮廷のヤンキー」です。
今のタイムマシンに通ずるような時間をさかのぼる機械が初めて登場したのは1887年のスペインの小説「アナクロノペテー」。でもこの時点ではタイムマシンという言葉は使われていなくて、初めて言葉が登場したのが1895年のウェルズの「タイム・マシン」です。
未来に行くだけなら、寝ていたとか氷の中で凍っていた話でもありえますが、過去に戻ること、しかも一方通行ではなく自由自在に行ったり来たりできるのは「タイムマシン」の画期的なところでした。

≪時間SFの定義≫
さらにタイムトラベルムービー、そして時間SFの定義も教えてもらいました!
タイムトラベルムービーとは、人物が何らかの手段で過去、または未来に行く話。過去や未来から人が来る・自分が過去や未来へ行く、と人物が時間軸を動くタイプです。

このタイムトラベルムービーを包括するジャンルとして時間SFがあり、人は動かないけれど、情報だけが時間軸を行き来するというものも含まれます。過去や未来から通信が来る、自分は動かないけれど過去や未来にメールを出す、というタイプです。

さらに、分岐していく時間を俯瞰で追うというタイプも時間SF。
本人にとっては1つの時間線しか見られないけれど、映画的には何かの加減で人生が分岐する先を両方追いかけて見せるというもの。また、寝ていたり、氷の中で凍っていたりして未来に行ってしまうものや、ループするようなものも時間SFです。

このように、大きく括って時間SFというジャンルがあり、そのうちタイムトラベルは人が時間軸を移動するものという定義。しかし、霊界などが関わるのは別物です。絶対に科学的である必要はないけれど、何らかの理屈やロジックが必要となります。

≪タイムトラベルムービー4つの法則!≫
タイムトラベルを行った時につきものとなるのがタイムパラドックス。特に過去に帰った場合、本当の歴史とずれるという矛盾が起こりますが、その処理の仕方が4通りあると堺さん。そして各ルートをきちんと辿って落とし込めているかということは、SFファン的には超重要ポイントなのです!

まず、過去は変えられない派 or 過去を変えられる派のどちらかに分けられ、その中でも落としどころが変わりまず。

過去は変えられないチームは2タイプ。
①過去を変えたはずが結果的には変わっていない。
過去を変えるためにしたことが最初から歴史のループの中に織り込み済みで、いじることが出来なかったパターン。

②過去を変えようとすると結局違う形で同じ事件が起きる。
理由はわからないけれど時間には変えられたくないという本性があって、変えようとすると結局別のところで修復されるパターン。全然理屈はありませんが、時間目線的には「何に抗っているんですか?」というスタンス。
またその派生形として、時間旅行するときに過去に戻っている訳ではなく、たくさんある並行宇宙の別時間線の過去に戻っているので、自分の時間戦をいじっているわけではないという説明が入るものも。自分の過去は変えないけれど別の人の過去は変えているという都合が良いタイプです。

そして、過去を変えられるチームが2タイプ
③過去を変えると新しい時間線が出来て前の時間線が消える。
④過去を変えると新しい時間線が枝葉のように分かれ、それぞれが並行世界となる。
世界がふたつあるというより、沢山あるあらゆる世界戦に対して分岐するので無限に並行世界があるという考え方です。

タイムトラベルムービーは必ずこのどれかのルートを通るもの。たとえば①で始めたルールが③で落ちるというのは間違いなのです。作り手は新しい流派を作りたいが故に、工夫をするのですが、作っている本人が混乱して理屈に合わないということも。このルールが間違っているものがSFファン的にはすごく気になるポイントで、豚骨ラーメンを頼んだのに味噌ラーメンが出てきたくらいの違いだとか。
論拠が全く無いのは逆にそれはそれで幻想として受け入れられるそうですが、でもロジックがあるフリをしてできていないのが気持ち悪いとのとのこと。その世界の中で矛盾がなければよいのです。

論拠に寄れば寄るほど理屈っぽくなりがちで、SFファンと一般ファンの力点の違いが感じられますが、論理性と娯楽性を両立し、普通の人もSFファンも納得できるものはクラシックとして残ります。だからこそジェームズ・キャメロンやロバート・ゼメキスがやったことは非常に偉大。「ターミネーター」や「バック・トゥ・ザ・フーチャー」がいつまでも愛されるのは、誰でも楽しめてSFファン的にもOKであることが一つの要素でもあるようです。

≪ドラえもんの功績!?日本人とSFの親和性≫
映画は大衆娯楽なので皆にわかってもらわないと受け入れてもらえないけれど、上記の定義や法則のように、やはり理屈が重要視されるSFは説明が難しいジャンル。
でも、日本人はドラえもんからSFの基礎知識を学んでいるし、タイムパラドックスネタも多いので他国と比べて基礎教養が高いのではないかと中井さん。

藤子不二雄を含む第一世代の作家が「スーパージェッター」や「鉄腕アトム」をはじめ、時間SFの可能性をいっぱい試していて、テレビアニメが始まった時から親しまれているジャンル。
その他にも「時をかける少女」や「戦国自衛隊」などの作品がありますが、日本人的には子供のころから慣らされているのでSF耐性が刷り込まれていて、理解度が高いのです。

また、日本は歴史が長いのもポイント。アメリカは新興国だし、ヨーロッパの国の勃興や異国民に占領されるということが日本はないので、歴史への認識が違います。また、戦争や高度経済成長を経て時代が大きく変わる経験もしているので、過去を振り返ることを一般的にしています。さらに街の風景も数年で全然変わるし、四季もあるので、日本人は時間が変わる実感を大きく持っているのかもしれません。

≪タイムトラベルは一粒で二度おいしい!≫
ここ最近、特に今世紀に入っての15年間で物凄く増えているというタイムトラベルムービー。これには、特撮にお金が掛かる他のSFと違い、アイディア次第で低予算で作ることができるので、若くて貧しいクリエイターが作りやすい事、そして技術の進歩によってできることが増えていることも考えられます。
そしてコンセプトやアイディアが当たり前に受け入れられるようになったことで可能となったのが他ジャンルとのミックス。市民権を得たことで説明を省くことができ、融合技を使えるようになったのです。

ミックスされるジャンルでも、比較的多いのが恋愛もの。構造的面白さと感情的面白さが並走して楽しむことができるので、一粒で二度おいしい感を味わうことができます。
そしてラブストーリーでも、特に実らない恋を描いたものがたくさんあります。ラブストーリーにおけるタイムトラベルは切なさの最大化に繋がること。同時代ならいつかまたどこかで、と思えることもあるけれど、もう絶対に会うことが無いという切なさを生み出すのです。

そんな中で確立されたジャンルがパラノーマルロマンス。普通じゃない人と恋に落ちるジャンルで吸血鬼や狼男などとの恋がありますが、タイムトラベラーとの恋もパラノーマルロマンスに含まれます。「ニューヨークの恋人」も、突然現われた19世紀の青年貴族と恋をするという物語。今作は放送がありますのでぜひチェックしてみてくださいね!

≪時間SFベストムービー≫
最後に皆さんの時間SFベスト時間ムービーを教えて頂きました!
添野さん:『ジャケット』『ロスト・メモリーズ』『ハッピーアクシデント』
堺さん:『タイム・アフター・タイム』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ『オール・ユー・ニード・イズ・キル(Edge of Tomorrow)』
中井さん:『ある日どこかで』『恋はデジャ・ブ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ

さらに、今後映画にしてほしいタイムトラベル原作ということで小松左京著作『果しなき流れの果に』とコニー・ウィリス著作『ドゥームズデイ・ブック』も紹介してもらいました!

≪エンディング≫
流行り廃りはあると言えど、映像表現の更新などもあってすごく多くの作品が作られている時間SF作品。
WOWOWでは12/20(日)午後3:00~タイムトラベルムービーを4作品一挙にお届けしますので是非お楽しみ下さい!
ラインナップはコチラ

今回のラインナップの中でも、特に【プリデスティネーション】がイチオシ。映像化不可能とはよく宣伝文句で使われますが、確かに困難を要するなと思わせるようなお話に正面から取り組んでいます。
SFが苦手な人も楽しめるし、タイムトラベル物のほころびや矛盾が上手くストーリーに組み込まれているので、SFファンも良くできていると感心するはず。そして1回観たらもう1回見たくなるはず!

ぜひ今回のぷらすととあわせてお楽しみ下さい!

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