2018/01/26 up

『チア☆ダン』にもエッセンスが凝縮! 青春のまぶしさ満載の傑作"スポ根"ムービーの系譜

「チア☆ダン ~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~」©2017映画 「チア☆ダン」製作委員会

「明るく、素直に、美しく!」
 円陣を組み、全員を鼓舞するように、広瀬すず扮する主人公がそう掛け声をかける。そして続いて、共に右手を高々と挙げながら、「Let's go ......JETS! フゥ〜!」と合言葉を叫ぶチアダンス・チーム「JETS」のメンバーたち。昨年大ヒットした『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』の一場面だ。
 サブタイトルで潔く結末まで明かしてしまっているが、それは映画としてはけっこう"ハードルを上げる"選択ではないだろうか。つまり勝負どころはストーリー運びにはない。「いかにそのトゥルー・ストーリーに迫真性を与えるか」にあるということ。従って、各キャストは役を演じるだけでなく、皆、スタントなしでハイクオリティなチアダンスにも挑んだのであった。
 具体的には、クランクインの半年前から猛特訓を開始し、コーチとのレッスンに自主練を重ね、撮影の合間、ちょっとした空き時間も練習に充てた。チアダンスはポン、ジャズ、ヒップホップ、ラインダンスの4つの要素で構成されており、個人のパフォーマンスと一糸乱れぬフォーメーションが醍醐味! 映画のクライマックスを飾るのは全米チアダンス大会で、アメリカ西海岸のサンディエゴ州立大学で撮影が行われ、実際の大会さながらの熱気の中で広瀬すず、中条あやみ、山崎紘菜、福原遥ら「JETS」の勇姿が収められた。

 さて日本映画の歴史には、役者たちが果敢にも、実話ベースの世界観に身を投じた作品というのが数限りなくある。が、こと"チーム物"のジャンルだと『がんばっていきまっしょい』('98/磯村一路監督)が先駆作になるだろう。愛媛県松山市の高校を舞台に、ボート部を再建し、競技に打ち込んでいく5人の女子高校生たち。本作が初主演だった田中麗奈はこれで女優として一躍注目を集め、実話ベースの"チーム物"のフォーマットは以後も形を変えて、『ウォーターボーイズ』('01/矢口史靖監督)の男子シンクロナイズドスイミング、『フラガール』('06/李相日監督)のフラダンスと、チャレンジャーな若手俳優たちの登竜門となっていく。前者では妻夫木聡、玉木宏、後者からは蒼井優らが頭角を現わし、『がんばっていきまっしょい』と『ウォーターボーイズ』はTVドラマ化もされた。

 このフォーマットは、落ちこぼれチームが奮闘する"青春映画"の傑作『シコふんじゃった。』('92/周防正行監督)のエッセンスをくみ、様々なアレンジを施されて、『ロボコン』('03/古厩智之監督)のロボットコンテスト、『スウィングガールズ』('04/矢口史靖監督)のビッグバンド、『恋は五・七・五! 全国高校生俳句甲子園大会』('05/荻上直子監督)の俳句、『ガチ☆ボーイ』('08/小泉徳宏監督)の学生プロレス、『書道ガールズ!! わたしたちの甲子園』('10/猪股隆一監督)と『青い青い空』('10/太田隆文監督)の書道......と数多の作品を生んできた。近年ではももいろクローバーZ主演、演劇が題材の『幕が上がる』('15/本広克行監督)があり、とりわけ昨年は『チア☆ダン〜』のほか、乃木坂46のメンバーが"なぎなた"に挑戦した『あさひなぐ』(英勉監督)、土屋太鳳主演で人力飛行機選手権を扱った『トリガール!』(英勉監督)、さらに新垣結衣と瑛太が卓球で混合ダブルスを組んだ『ミックス。』(石川淳一監督)など盛りだくさん!

 もちろん、広瀬すずが主演した『ちはやふる -上の句-』『ちはやふる -下の句-』('16/小泉徳宏監督)もこの系譜に含まれ、彼女のフルスロットルな演技は『チア☆ダン〜』でも全編、存分に活かされている。すなわち、コメディとシリアスの両極に振り切ってみせる"ジャンル超え"のジャンプ力! バラエティ豊かな共演者や、個性的な顧問(天海祐希)と繰り広げる感情のドラマは目頭を熱くさせ、これも由緒正しき"チーム物"の伝統なのだが、そこにいわばフルスロットルな"すず力"も加わって、現在進行形の青春のまぶしさを見せてくれるのであった。

文=轟夕起夫

[放送情報]

『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』
WOWOWシネマ 1月27日(土)よる8:00 ほか

『スウィングガールズ』
WOWOWライブ 2月5日(月)午後2:00

『幕が上がる』
WOWOWシネマ 2月26日(月)よる6:30

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