2018/05/17 up

こんなの初めてー! 『シン・ゴジラ』『忍びの国』の"勝ち気女子"石原さとみに叱られたい

「シン・ゴジラ」 5/20(日)よる6:45

 石原さとみに会ったことがある。といっても、かなり前の話だ。『包帯クラブ』('07)と、それから『フライング☆ラビッツ』('08)の公開前にインタビューをする機会を得たのだ。
 当時の彼女はデビューして3~4年経っていて、映画の出演はまだ数本ではあるもののテレビドラマではヒロインとして重用され、すでに一定の人気を確立していた。が、まだ現在のような"女性層の絶大なる支持"は、なかったと思う。インタビューでの印象は、20歳過ぎにして早くも地に足が着いており、ハッキリと自分の考えを伝える"意志の強さ"が印象に残った。

 だからここ数年の"勝ち気女子"キャラでの飛躍は、さもありなん、といった感じではあったのだが、しかしそれでも『シン・ゴジラ』('16)の彼女には驚かされた。あの「ガッズィーラ」である。いや、その英語発音を揶揄しているのではない。日系三世のバイリンガル、米国大統領特使カヨコ・アン・パタースンという戯画化された役柄は、登場するたびに場の空気を変え、見る者に異質感を与えるよう、総監督・脚本の庵野秀明にそう造詣されていたのだから。

detail_180517_photo02.jpg©2016 TOHO CO.,LTD.

 最初の登場シーン、長谷川博己扮する内閣官房副長官の矢口蘭堂に対し、「現政権のレポートを読んで、私が判断したの。過去も興味深い。使えそうな人物としてRANDOU YAGUCHIがベターな選択、不服でも?」とネーティブ発音を織り交ぜた弁舌でメンチを切り、「何をしてもいいけど、私に汚点を残さない仕事をして」と上から目線でズバッと言い放つところからグッとつかむ。特に、Mっ気のある"叱られ好き男子"にはたまらないものが!
 巨災対(巨大不明生物特設災害対策室)に乗り込むと、蘭堂に「どうも日本語の敬語が苦手なの。そろそろ、タメ口にしてくれる?」と突っ掛かり気味に提案。「では、遠慮なく。米国はゴジラをどうする気だ? 研究対象か、それとも駆逐対象か?」と聞かれると、「それは大統領が決める」と素っ気なく返し、「あなたの国は誰が決めるの?」とド直球で問題の核心を突く。こんな特異なキャラクター、日本映画初ではないか。本作の監督・特技監督担当、樋口真嗣の『進撃の巨人ATTACK ON TITAN』('15)にて石原さとみがやっていた調査兵団分隊長・ハンジ風に言えば「こんなの初めてー!」である。

 さて、和田竜の同名ベストセラー小説を、中村義洋監督が映画化した『忍びの国』('17)での彼女は同じ"勝ち気"キャラであっても、違うアプローチでまたすごかった。大野智演じる主人公の伊賀一の忍び・無門にさらわれた武将の娘・お国を演じているのだが、ここでの石原さとみは基本、つつましい。口調も優しく、おっとりしている。しかし、芯の強さはカヨコ・アン・パタースンとも双璧を成し、"叱られ好き男子"をまたも激しく刺激する。例えば無門が"はした金"を持って帰宅しようとした時、家の中には入れず、「無門殿はわたくしを、安芸の国よりさらってきた折、何とおっしゃいましたか?」と問う。無門はぜいたくな暮らしを彼女に約束したのだ。それなのに、家といっても掘っ建て小屋の極貧生活。「本当にわたくしと夫婦になるおつもりがあるのですか?」とダメ出しの連発を食らわす。無表情で、ちょっと目線を外して接するところにゾクゾク。さらに別のシーンでは、足軽から一国一城の主(あるじ)にまでなった秀吉の話をして「侍におなりなさい」と無門に勧める。その言葉がちっとも響かないと分かって、ギロリとにらむ! 目つきの鋭さ、無言の圧のすさまじさに"瞬殺"されること間違いなし。

detail_180517_photo03.jpg©2008和田竜/新潮社©2017映画「忍びの国」製作委員会

 この『忍びの国』も『シン・ゴジラ』も、そうしたキリッとした"勝ち気女子"キャラを押し出しつつ、ストーリーの展開とともに徐々に内面を変化させていくあたりに石原さとみの演技力が活かされているのだが、もっともっと極めて、『女神の見えざる手』('16)でスーパーロビイスト役を体現したジェシカ・チャステインみたいな女優になっていってほしい。"女性はこうあるべき"という"くびき"を解き放っていく、そんな女優に――。

文=轟夕起夫

[放送情報]

シン・ゴジラ
WOWOWシネマ 5/20(日)よる6:45

忍びの国
WOWOWシネマ 5/19(土)よる8:00 ほか

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