2019/11/26 up

美しく強く! 進化を輝きに変える有村架純

「フォルトゥナの瞳」12/21(土)よる8:00他

文=イソガイマサト

 有村架純は静かに、けれど確実に進化し続けている。その躍進は2017年のNHK朝の連続テレビ小説「ひよっこ」でヒロインのみね子を演じ、国民的女優のひとりになったことでも明らか。2010年のデビュー以来、休むことなく数多くのドラマや映画に出演し続けてきたその成果であることは誰もが認めるところだろう。だが、ここ数年の彼女の作品や役に向かうスタンスは、明らかに変化している。そのことに気付いているのは、たぶん筆者だけではないはずだ。

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 そこで、彼女が主演した近作『かぞくいろ -RAILWAYS わたしたちの出発-』('18)、『フォルトゥナの瞳』('19)がWOWOWで初放送されるのを記念して、今日に至る有村架純の進化とその魅力に迫ってみたい。

有村架純の挑む役柄が大きく変わり出したのは、2015年あたりからだろう。『映画 ビリギャル』('15)では金髪のギャルに扮し、『アイアムアヒーロー』('16)では猫パンチを繰り出すゾンビもどきのZQN(ゾキュン)を怪演! 『関ヶ原』('17)では忍者に扮し、壮絶なアクションにも挑戦したが、有村に変革をもたらした要因のひとつは、本人も公言しているように、『ストロボ・エッジ』('15)で初めてタッグを組んだ廣木隆一監督の「余計なことをするな!」という言葉だ。

detail_191126_photo02.jpg『かぞくいろ -RAILWAYS わたしたちの出発-』12/1(日)よる9:00他
©2018「かぞくいろ」製作委員会

 もともと常に不安で、役について考え過ぎてしまうタイプの彼女は、廣木監督のその言葉を得て、現場で相手の俳優やその環境に反応する芝居ができるようになっていった。『アイアムアヒーロー』の時点ではまだ「クランクイン当日、自宅を出るまで役がつかめなくて悩んでいた」と語ってはいたものの、廣木監督と再びタッグを組んだ『夏美のホタル』('16)の際には「お芝居をしている感覚はなく、(主人公の)夏美と一緒にひと夏を過ごしていたので、クライマックスの涙も自然にこぼれました」と本人も振り返っている。

 また、有村自身の言葉を借りるなら、「『何者』('16)で三浦大輔監督とご一緒したのが大きい」ようだ。「全カット、テイクを20ぐらい重ね、時間をかけて撮られていたので、いろいろな面で鍛えられました」とも語っているが、確かにあの現場で、佐藤健や二階堂ふみ、菅田将暉らと静かな演技バトルを繰り広げ、それで自信を得て以降の彼女は、アクセルを強く踏み込んだ、前のめりの態勢になったような気がする。
 大友啓史監督がメガホンを取った『3月のライオン』('17)では、それまでの清純なイメージを払拭するように乱暴な言葉で主人公をあしらう義姉を体現。不倫相手に対するすがるような言動や影のあるたたずまいで独特の色香を漂わせて観る者を驚かせた。さらに、高校時代に好きだった教師と禁断の恋に落ちる『ナラタージュ』('17)では、"好き"というどうしようもない気持ちを忘れずに生きるヒロインの心の声を、多彩な表情と、説明的ではない素直な気持ちを表す言葉だけで生々しく伝えるという高度な芝居で表現してみせてもいる。

 そんな有村架純がさらなる地平を切り開くべく挑んだのが、今回放送される2作品だ。『かぞくいろ -RAILWAY わたしたちの出発-』で彼女が挑んだのは、シングルマザー&列車の運転士。肥薩おれんじ鉄道の運転士を目指す役とあって「運転士の用語を覚えるのに苦戦した」ようだが、それ以上にこの作品では、好きだった人が残した血のつながりのない息子としっかり向き合う有村の強い母親像が印象的だ。

detail_191126_photo03.jpg『かぞくいろ -RAILWAYS わたしたちの出発-』
©2018「かぞくいろ」製作委員会

 とりわけ、息子に「私のことをお母さんと思わなくていい」という迷いのないセリフが深く強く心に残るが、そんな有村の嘘のない芝居が昔とは違う家族の新しいカタチを肯定していて、とても好感が持てる。

detail_191126_photo04.jpg『かぞくいろ -RAILWAYS わたしたちの出発-』
©2018「かぞくいろ」製作委員会

 続く『フォルトゥナの瞳』では、有村はもっと高度な表現で観る者をとりこにする。百田尚樹の同名小説を映画化した本作は、死を目前にした人間が分かる特殊な能力を持った青年、木山(神木隆之介)が大切な人を守るために奔走する姿をハードに描いたラブ・ストーリー。

detail_191126_photo05.jpg『フォルトゥナの瞳』 ©2019「フォルトゥナの瞳」製作委員会

 この作品では、有村は木山がひと目惚れをする携帯ショップの店員を演じているが、意外にも本格的な恋愛映画が初となる神木が一発でヤラれてしまったという彼女の笑顔と優しさは、確かに天使のようで、視聴者は木山と一緒に一瞬にして恋をしてしまうだろう。だが、その笑顔こそが、この作品の鍵を握る重要なポイント。「木山と一緒にいるときは彼女も楽しいので、できるだけ笑顔でいるようにしました」という有村の言葉が何を意味するのか? そこにポイントを置きながら観ていくと、ラストでは味わったことのない深い余韻に包まれるに違いない。

detail_191126_photo06.jpg『フォルトゥナの瞳』
©2019「フォルトゥナの瞳」製作委員会

 そして、有村架純のフィルモグラフィー史上、現在のところ最も攻めたといってもいいのが『劇場版 そして、生きる』('19)だ。WOWOWで放送された全6話のドラマを1本の映画に凝縮させた本作は、「ひよっこ」をはじめ、有村と何度もタッグを組み、彼女のことを「同志」と語っている脚本家の岡田惠和が「有村架純をただのラブ・ストーリーのヒロインにしてはいけない。ひとりの人間として生きていくさまを描かなければいけない」という思いで書き下ろしたオリジナル・ストーリー。それだけに物語は生々しく壮絶だ。

detail_191126_photo07.jpg「連続ドラマW そして、生きる」
12/31(火)午前10:30

 有村が演じた瞳子はボランティア活動で訪れた東日本大震災の被災地、宮城・気仙沼で東京の大学生、清隆(坂口健太郎)と出会い、恋に落ちる。そのプロットを最初に聞いたときは震災を背景にしたラブ・ストーリーだと思っていたが、岡田の本気度は違っていて、瞳子を次々にすさまじい試練が襲い、彼女は崩れそうになりながらも何度も立ち上がり"生きる"のだ。
 たぶんこの試練を、岡田は今の有村なら克服できると踏んで託したに違いない。それが成功しているかどうかは観た人に委ねられるが、『君の膵臓をたべたい』('17)などの月川翔監督が大胆な長回しの撮影を駆使して映し出す局面ごとの瞳子の葛藤。

detail_191126_photo08.jpg「連続ドラマW そして、生きる」

※編集部注
ここから先はネタバレを含みますのでご注意ください。




それを跳ねのけ、自分の気持ちとは逆の選択をして生きる彼女のたくましさを、有村がこれまでにない強度を伴う繊細な芝居で伝えているのが分かるはずだ。
 中でも、長回しで捉えたクライマックスは必見! その奇跡のカットは映画史に残るものだし、大きな感動とともに有村架純の女優としてのポテンシャルの高さをまざまざと印象付ける。

今後も『映画 ビリギャル』の土井裕泰監督と2度目のタッグを組み、菅田将暉と再び共演する『花束みたいな恋をした』(来冬公開予定)など出演作が相次ぐ有村架純。彼女の進化はとどまるところを知らない。

  • 文=イソガイマサト
    映画ライター。独自の輝きを放つ新進女優、誰とも似ていない感性と世界観を持つ未知の才能の発見に喜びを感じている。

[放送情報]

かぞくいろ -RAILWAYS わたしたちの出発-
WOWOWシネマ 12/1(日)よる9:00
WOWOWプライム 12/3(火)よる7:45
WOWOWシネマ 12/20(金)よる6:50


フォルトゥナの瞳
WOWOWシネマ 12/21(土)よる8:00
WOWOWプライム 12/22(日)午後1:30
WOWOWプライム 12/26(木)よる8:00
WOWOWシネマ 12/29(日)午後2:45


劇場版 そして、生きる
全国の映画館にて公開中


連続ドラマW そして、生きる
WOWOWプライム 12/31(火)午前10:30(全6話一挙放送)

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