「シン・ゴジラ」 5/20(日)よる6:45
石原さとみに会ったことがある。といっても、かなり前の話だ。『包帯クラブ』('07)と、それから『フライング☆ラビッツ』('08)の公開前にインタビューをする機会を得たのだ。
当時の彼女はデビューして3~4年経っていて、映画の出演はまだ数本ではあるもののテレビドラマではヒロインとして重用され、すでに一定の人気を確立していた。が、まだ現在のような"女性層の絶大なる支持"は、なかったと思う。インタビューでの印象は、20歳過ぎにして早くも地に足が着いており、ハッキリと自分の考えを伝える"意志の強さ"が印象に残った。
©2016 TOHO CO.,LTD.
最初の登場シーン、長谷川博己扮する内閣官房副長官の矢口蘭堂に対し、「現政権のレポートを読んで、私が判断したの。過去も興味深い。使えそうな人物としてRANDOU YAGUCHIがベターな選択、不服でも?」とネーティブ発音を織り交ぜた弁舌でメンチを切り、「何をしてもいいけど、私に汚点を残さない仕事をして」と上から目線でズバッと言い放つところからグッとつかむ。特に、Mっ気のある"叱られ好き男子"にはたまらないものが!
巨災対(巨大不明生物特設災害対策室)に乗り込むと、蘭堂に「どうも日本語の敬語が苦手なの。そろそろ、タメ口にしてくれる?」と突っ掛かり気味に提案。「では、遠慮なく。米国はゴジラをどうする気だ? 研究対象か、それとも駆逐対象か?」と聞かれると、「それは大統領が決める」と素っ気なく返し、「あなたの国は誰が決めるの?」とド直球で問題の核心を突く。こんな特異なキャラクター、日本映画初ではないか。本作の監督・特技監督担当、樋口真嗣の『進撃の巨人ATTACK ON TITAN』('15)にて石原さとみがやっていた調査兵団分隊長・ハンジ風に言えば「こんなの初めてー!」である。
©2008和田竜/新潮社©2017映画「忍びの国」製作委員会
この『忍びの国』も『シン・ゴジラ』も、そうしたキリッとした"勝ち気女子"キャラを押し出しつつ、ストーリーの展開とともに徐々に内面を変化させていくあたりに石原さとみの演技力が活かされているのだが、もっともっと極めて、『女神の見えざる手』('16)でスーパーロビイスト役を体現したジェシカ・チャステインみたいな女優になっていってほしい。"女性はこうあるべき"という"くびき"を解き放っていく、そんな女優に――。
文=轟夕起夫
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