「不都合な真実2:放置された地球」10/27(土)午後1:45
『不都合な真実』。タイトルからして挑発的なこの2006年に製作された映画は、第79回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞し、世界を騒然とさせた。もともと環境問題の論客として知られていたアメリカ元副大統領のアル・ゴアが、スライドを使って地球温暖化を訴える講演をメインに、さまざまな気象データや、北極など世界各地の環境変化を示す映像を交え、危機を訴えていく。温暖化が進む地球では北極の氷がこれからどんどん溶けていき、当然のごとく海面は上昇。NYマンハッタンなど地球上の多くの大都市が水没するという予測には、誰もが生々しい衝撃を受けたことだろう。一方で、今作の論調に対し、「データが偏り過ぎ」といった反論も起こり、物議を醸すドキュメンタリーでもあった。
しかしここ数年、日本はもちろん欧米でも、異常なほどの猛暑や過去に例のない規模のハリケーンや台風の頻発、明らかに増加している巨大地震など、やはり地球全体がどこかおかしくなっているのは、多くの人が実感している。
フィクションの映画に目を移しても、天変地異を描くパニック大作は、例えば地球全体が氷河期に突入する『デイ・アフター・トゥモロー』が話題を集めた。しかし、『不都合な真実』より前の2004年公開だったせいか、リアルな危機感というより、絵空事に感じた人も多かったはず。しかし、地球規模の地殻変動で人類が滅亡に向かう2009年の『2012』などは、あり得ないパニック映像満載ながら、『不都合な真実』を観た後では「もしかして起こるかも......」という不安をかき立てた。さらに未体験の竜巻が襲ってくる『イントゥ・ザ・ストーム』('14)、巨大地震でのサバイバル劇『カリフォルニア・ダウン』('15)、気温の急上昇など世界中の異変を描いた『ジオストーム』('17)など、天変地異の危機感を訴えるテーマではない作品も、「近未来の地球」を予感させ、切迫感を増大させる一面があった。最近のニュース、そして『不都合な真実』を重ねると、これらのパニック映画も絵空事ではなくなってきたのだ。
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ではアル・ゴアの『不都合な真実』は、地球温暖化への対策を推し進めたのか? 残念ながら遅々として進んでいないのが現状だ。アメリカのトランプ政権は「地球温暖化などでっち上げ」として、気候変動を抑制するために採択されたパリ協定からの撤退を表明した。こうした現実に、さらに警鐘を鳴らす意味で製作されたのが、前作から11年ぶりの続編『不都合な真実2:放置された地球』('17)だ。サブタイトルにあるように、11年の時を経ても温暖化が進む地球は放置されたまま。状況は悪化の一途をたどっているという、またしてもセンセーショナルな事実が、この10年に起きた各国の災害や、変貌する大自然の映像とともに紹介される。
そしてこの2本の『不都合な真実』が観る者の心をつかむのは、環境問題というメインテーマだけでなく、ひとりの人間の意志の強さと執念だ。もしアル・ゴアがアメリカ大統領だったら、世界は大きく変わったのか? それとも大統領にならなかったから、こうして自由に活動を行えたのか? いずれにしても自分が信じることが社会を正しい方向に導くという彼の信念が作品全体に貫かれ、すがすがしい感動を届ける。観る者の人生観にも大きく影響を与える可能性のある渾身のドキュメンタリーである。
文=斉藤博昭
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