「闇金ウシジマくん ザ・ファイナル」12/9(日)午後2:45
10代~20代前半の若手俳優にインタビュー取材をすると、"憧れの俳優"としてかなりの確率で名前が挙がる「山田孝之」。長髪&無精ヒゲで主人公の宿敵キャラに挑んだ『クローズZERO』あたりから、ドラマ版『WATER BOYS』や『世界の中心で、愛をさけぶ』で築き上げてきた、いわゆるヤサ男なイケメン枠を超越。以降は作品ごとに役作りを徹底し、まさにジョニー・デップにも匹敵するカメレオン俳優ぶりを見せている。
そして『GANTZ』シリーズのような2部作の大作からアート系全開な『ミロクローゼ』まで、その柔軟な作品選びもさることながら、2017年はカンヌ国際映画祭出品を目指す映画製作のシニカルなモキュメンタリー『山田孝之のカンヌ映画祭』から派生した、自身の名をタイトルにした『映画 山田孝之3D』が公開。現在の日本で、間違いなく唯一無二の特異な俳優といえるだろう。
©2012 真鍋昌平・小学館/映画「闇金ウシジマくん」製作委員会
そんな彼の大きな転機となったのは、'10年放送のTVシリーズ第1期から始まり、後に4本の劇場版が公開された『闇金ウシジマくん』シリーズである。真鍋昌平の人気コミックの実写化で、彼が演じた闇金業者"カウカウファイナンス"社長、丑嶋馨は、何度も裏社会の修羅場を乗り越えてきた生粋のアウトロー。冷静沈着かつ物怖じしない心臓の持ち主という点では、どこか『クローズZERO』の芹沢の延長上といえるかもしれない。だが、外見はまったく違うウシジマ社長を演じるために、山田は圧を感じさせるほどの恰幅の良さ、フチなしの丸メガネや顎ヒゲ、ダボついたヒップホップ系ファッションなどを忠実に再現した。あまりにまっすぐなうえ殺気すら放つ眼差しなど、その"ミリ単位の役作り"は原作ファンからも絶賛されるほどで、まさにハマり役となった。
さらに、シリーズ最終作となった『―ザ・ファイナル』では、山田自身「初めて感情を作った」と語ったほどであり、それまで金を貸し、貸した金は確実に回収する闇金の行動原理のみで動いてきたウシジマが旧友を気遣う、これまで見せなかった人間らしい一面を見せてくれる。そんな彼のカリスマ的な芝居熱は、林遣都(『1作目』)をはじめ、菅田将暉、窪田正孝、門脇麦(以上『Part2』)、山田裕貴(『Part3』)、間宮祥太朗(『ザ・ファイナル』)など、同じ現場にいた後輩俳優にも影響を及ぼしている。つまり、現在の彼らの活躍に大きく繋がる"青田買いシリーズ"としても改めて楽しむことができるのだ。
©2016 真鍋昌平・小学館/映画「闇金ウシジマくん3」製作委員会
何かと話題になる"人気コミックの実写化"だが、山田自身も、最初の転機となった『クローズZERO』で共演した小栗旬、さらに'11年からのTVドラマ『勇者ヨシヒコ』シリーズなどのコラボが続く福田雄一監督らと共に、「キャスティングや脚色によって、いかに面白くできるか?」という、コミック原作の実写化について回る問題に対して、常に真摯に向き合いながら作品に挑んでいる重要人物といえるだろう。
ちなみに、今回WOWOWで一挙放送される劇場版『闇金ウシジマくん」シリーズを手掛けた山口雅俊監督は、フジテレビのプロデューサーとしてTVドラマ『ロング・ラブレター~漂流教室』『ランチの女王』など、ブレイク前の山田を抜擢した人物。と同時に、過去に中居正広主演でドラマ化された『ナニワ金融道』や常盤貴子&深津絵里主演の連ドラ『カバチタレ!』といった、不可能とも思われた金融コミックの実写化を成功させてきた人物でもある。つまり、コミック原作の実写化に対して熟知した考えを持った両者による運命的なコラボだったからこそ、『闇金ウシジマくん』の実写化は、興行的にもファンからの評価的にも成功したのだろう。
文=くれい響
[放送情報]
闇金ウシジマくん
WOWOWシネマ 12/8(土)午後0:00
闇金ウシジマくん Part2
WOWOWシネマ 12/8(土)午後2:15
闇金ウシジマくん Part3
WOWOWシネマ 12/9(日)午後0:30
闇金ウシジマくん ザ・ファイナル
WOWOWシネマ 12/9(日)午後2:45
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