「ブラックパンサー」1/5(土)よる8:00ほか
2018年、世界的に一大ムーブメントを巻き起こしたマーベル・コミックス原作の映画『ブラックパンサー』。アフリカの架空の国、ワカンダを舞台に初めて黒人のスーパーヒーローの活躍を描いたアクション・アドベンチャー大作で、全米興収7億ドル超、全世界興収歴代9位となる13億4600万ドル超えという驚異の記録を打ち立てた。
世界中を熱狂させたヒーロー映画だが、ヒットした要因の一つには、悪役キルモンガーの存在も大きい。いや主人公のブラックパンサー以上に人気を集めたかもしれない。そして、演じたマイケル・B・ジョーダンの顔と名前が、映画を見ていない人にも知られる出来事もあった。2018年9月、テニスの全米オープン女子シングルスで優勝した大坂なおみ選手が、その直後にアメリカの大人気トーク番組『エレンの部屋』に出演した際、「好きなセレブは?」と聞かれて、「『ブラックパンサー』に出ていた悪役の人」と発言。そのラブコールを受けてジョーダンがすぐさまお祝いメッセージを送ったことが大きなニュースとなったのだ。
マイケル・B・ジョーダンは、米カリフォルニア州で1987年2月9日に生まれ、現在31歳。子どもの頃はキッズ・モデルとして活動し、俳優としてのキャリアを1999年、HBOドラマ『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』でスタートさせ、01年にキアヌ・リーヴス主演の『陽だまりのグラウンド』で映画デビュー。02年にHBOドラマ『THE WIRE/ザ・ワイヤー』で子役ながら存在感を残し、また09年~11年に『Friday Night Lights(原題)』で演じたアメリカンフットボールのクォーターバック選手、ヴィンス・ハワード役で若手俳優として頭角を現し始めた。
日本でも知られるようになったのは、突如、超能力を得た3人の男子高校生を描いた青春SF映画『クロニクル』辺りから。次いで、黒人青年が警官に射殺されたという実際の事件を題材にした『フルートベール駅で』(13年)にて主演を務め、サンダンス映画祭で作品賞&観客賞を受賞。監督のライアン・クーグラーとともに、ジョーダンの演技力も高く評価された。15年には『クロニクル』の監督ジョシュ・トランクと組んで『ファンタスティック・フォー』でジョニー・ストーム/ヒューマン・トーチを演じた。ただし同作は残念ながら不評に終わった。
だが、再びクーグラー監督と組んだ『ロッキー』シリーズのスピンオフ『クリード チャンプを継ぐ男』(15年)でロッキーの宿敵にして親友だったアポロの息子、アドニス・クリード役で主演。1年にも及ぶトレーニングでボクサーらしい体を作り、撮影中スタントも使わずに自らリングにも立ち、批評家からも大絶賛を浴びた。
そしてクーグラー監督と3度目のタッグとなる『ブラックパンサー』で初悪役エリック・キルモンガーに挑んだのだ。映画はアフリカの超文明国ワカンダの若き国王ティ・チャラことブラックパンサーと、国の秘密を狙う内外の敵たちとの戦いを描く。キルモンガーはアメリカの元秘密工作員で、ワカンダの秘密を握り、国の全てを我が物にしようと企む。ジョーダンはファースト・シーンから冷酷非道なテロリストのような面構えでキルモンガーを演じる。だが、その不幸な半生が明かされるにつれ、単なる悪役とは片づけられない、彼の複雑で、深い哀しみが浮かび上がる。正直言って、王族として陽の当たる道を歩んできたティ・チャラことブラックパンサーより、孤独に生きてきたキルモンガーに気持ちを寄せたくなる! マーベル・シネマティック・ユニバース史上最高の悪役と称されるのも納得のキャラクターをジョーダンは見事作り上げたのだ。
本作の成功でハリウッドの期待の星となったジョーダン。2019年も1月11日からは『クリード 炎の宿敵』が公開されるほか、2020年公開予定の法廷映画『Just Mercy(原題)』、クーグラーと4度目のタッグになる『Wrong Answer(原題)』など新作が目白押しだ。『ブラックパンサー』を見逃している人はもちろん、もう見ている人も、キルモンガーを演じるジョーダンの雄姿を目に焼き付けてほしい。
文=前田かおり
[放送情報]
ブラックパンサー
WOWOWシネマ 1/5(土)よる8:00ほか
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