「人狼ゲーム」3/25(月)よる10:50
村人たちは毎日ひとり、人狼と思われる人を処刑しなければならない。
人狼は毎晩ひとり、村人を殺さなければならない。
勝ち残れば賞金1億円――。
アメリカ発祥のパーティ・ゲームを元に、謎の建物に拉致された高校生たちが、命懸けの殺戮ゲームを強いられる映画『人狼ゲーム』シリーズ。2013年に1作目が公開されてから、既に7作が公開。"狂人"、"キューピッド"など回を追うごとに増えていく(高校生たちに割り当てられる)役職、それに伴って複雑化するストーリー。ゲームをよく知らない人は、役職が少ない1、2作目でルールに慣れてからの鑑賞がオススメだ。
ゲーム・ファンも楽しめる練られたストーリー展開はもちろんだが、何より注目すべきはこれからの日本映画界を担っていくであろう、若手女優が主役に起用されている点。今やこの『人狼ゲーム』シリーズ、主役の女優は"人狼ガール"と呼ばれ、若手女優の登竜門的作品なのである。それもそのはず。本作は、殺すか、殺されるかという極限状態を演じなければならず、俳優としての力量が求められる。主役に抜擢された彼女たちが"人狼ガール"を演じ切れるかどうか。それはまさに、俳優生命を懸けた命懸けの戦いだ。
1作目『人狼ゲーム』('13)の桜庭ななみは、映画『最後の忠臣蔵』('10)で日本アカデミー賞新人俳優賞など数々の賞を受賞。本作では、なんとかしてこの理不尽なゲームに参加するまいと抵抗する主人公、愛梨を熱演。一見か弱そうに見えるが、実は内にとてつもない芯の強さを持つ愛梨の姿は桜庭本人とリンクする。
©2014「人狼ゲーム BEAST SIDE」製作委員会
2作目『人狼ゲーム ビーストサイド』('14)の土屋太鳳は、本作に主演した直後、NHKの連続テレビ小説『まれ』('15)のヒロインに抜擢され、若手の中でも一躍トップに。土屋演じるロック歌手を目指す由佳が劇中で熱唱している歌の歌詞は彼女自身が作詞したものだ。極限まで役に成り切るストイックさ、身体能力の高さなど、本作には他の作品にはない「剥き出し」の土屋太鳳が詰まっている。また、同作では、演じる役によってあまりに印象が違うため、その若さで"カメレオン女優"とも評される森川葵と土屋の演技バトルも見ものだ。
©2015川上亮/AMG出版・「人狼ゲーム クレイジーフォックス」製作委員会
スタジオジブリ制作の映画『思い出のマーニー』('14)でヒロインの声を務めたことで注目を集めた高月彩良は、3作目『人狼ゲーム クレイジーフォックス』('15)で愛のためなら手段を選ばないという、まさに"狂った狐"を怪演し、女優として新境地を見せてくれた。
©2016「人狼ゲーム プリズン・ブレイク」製作委員会
4作目『人狼ゲーム プリズン・ブレイク』('16)の主役には、TV『烈車戦隊トッキュウジャー』('14~'15)でブレイクした小島梨里杏。自責の念を抱き続けているという繊細な主人公だが、監督からは誰より"普通"であることを今作で求められたという。普通を演じるのがいちばん難しいことは明白だが、小島の演技は監督の期待に十分応えられていた。
©2017「人狼ゲーム ラヴァーズ」製作委員会
5作目『人狼ゲーム ラヴァーズ』('17)の古畑星夏は、人狼にして「恋人」という二重の役職が与えられる複雑な役どころ。シリーズの中で一番過酷な主人公かもしれない。その理由は、彼女がゲームに隠された"ある真実"を知ってしまうから。衝撃の事実を知った瞬間の古畑の演技は、一見の価値アリだ。
©2017「人狼ゲーム マッドランド」製作委員会
映画『14の夜』('16)ではタバコを吸ってバイクに乗るヤンキー、映画『血まみれスケバンチェーンソーRED』('19)ではセーラー服にチェーンソーを持って大暴れ。どちらも6作目『人狼ゲーム マッドランド』('17)に主演した浅川梨奈の姿だ。実は彼女、SUPER☆GiRLSというアイドル・グループの元メンバー。アイドルっぽさなど微塵も感じさせない彼女の体当たり演技は、本作でも健在だ。
©2018「人狼ゲーム」製作委員会
そして、7作目『人狼ゲーム インフェルノ』('18)の武田玲奈と小倉優香。物語が進むにつれ、この2人のキャラが入れ替わっていくような変化のある演技は特筆すべきだろう。
実は、筆者は1作目の撮影現場に参加している。肉体的にも、精神的にもリアルに極限状態の彼女たちに、スタッフでも容易に声を掛けられない現場だった。しかし、俳優たちの安全を守りながらも、冷静な目で見守るのが製作者側だ。1本の作品に自分の持てる全てを出し切ることが、次の仕事につながることを俳優たちも知っている。だからこそ、この難しい役に体当たりで挑んでいるのだ。
命懸けの『人狼ゲーム』が如き、命懸けの演技バトルを繰り広げる俳優たち。俳優としてこの厳しい現実で生き残ることができるのか。"人狼ガール"たちのリアルな戦いをしっかりと見届けてほしい。
文=山咲藍
脚本家兼ライター。映画関連冊子の編集者を経て、2009年に脚本家デビュー。『人狼ゲーム ビーストサイド』の脚本を手掛けている。制作プロダクション・スタジオブルー所属。
[放送情報]
人狼ゲーム
WOWOWシネマ 3/25(月)よる10:50
人狼ゲーム ビーストサイド
WOWOWシネマ 3/25(月)深夜0:50
人狼ゲーム クレイジーフォックス
WOWOWシネマ 3/26(火)よる11:05
人狼ゲーム プリズン・ブレイク
WOWOWシネマ 3/26(火)深夜0:45
人狼ゲーム ラヴァーズ
WOWOWシネマ 3/27(水)よる10:45
人狼ゲーム マッドランド
WOWOWシネマ 3/27(水)深夜0:45
人狼ゲーム インフェルノ
WOWOWシネマ 3/28(木)よる11:30
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