「ALWAYS 三丁目の夕日」6/2(日)午前9:15他
日本映画の歴史において昭和を"黄金時代"とすれば平成は何の時代と呼ばれるだろうか。新元号"令和"を迎え、平成に作られた日本の実写映画を◇興行収入 ◇世界的映画賞の受賞作 ◇撮影技術の3つの視点から振り返ってみたい。
◇興行収入
平成を通じての邦画実写歴代1位となったのは『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(平成15年)の興行収入173.5億円で、日本映画史に残る大ヒット。この年までは興収10億円を超える邦画は年間で10本前後だったが、平成11年以降は毎年20本を超えるようになり、平成28年には32本もの邦画が10億円をクリアしている。
『踊る大捜査線』シリーズを筆頭に平成年代で多くなったのが人気TVドラマの劇場版で、『ガリレオ』の劇場版『容疑者Ⅹの献身』(平成20年●興収49.2億円)、『相棒 -劇場版- 絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン』(平成20年●44.4億円)、『HERO』(平成19年●81.5億円、平成27年●46.7億円)といった新たな事件を描く作品もあるが、『花より男子ファイナル』(平成20年●77.5億円)や『ROOKIES -卒業-』(平成21年●85.5億円)のように、人気ドラマは劇場版で完結するのが一つのスタイルとなっていった。
また『劇場版コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-』(平成30年)のように劇場版ならではのスケールアップした作品が話題を呼んだ。同作は平成の実写邦画2位の興収93億円の大ヒットを記録している。
『劇場版コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-』5/25(土)よる8:00他
©2018「劇場版コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-」製作委員会
◇世界的映画賞の受賞作
昭和の時代にも海外の映画祭で受賞した名匠たちがいたが、平成の時代も負けてはいない。滝田洋二郎監督の『おくりびと』(平成20年)が稲垣浩監督の『宮本武蔵』('54)以来となる米国アカデミー賞外国語映画賞('56年までは名誉賞)を受賞し、大きな話題となったのも記憶に新しい。
海外、特にフランスで高い評価を得ているのが北野武監督で、『HANA-BI』(平成9年)がヴェネチア国際映画祭金獅子賞やニューヨーク映画祭国際映画賞ほかを、『座頭市』(平成15年)がヴェネチア国際映画祭銀獅子賞やトロント国際映画祭観客賞など十数の賞を受賞している。
近年で最も海外から評価が高いのが是枝裕和監督で、監督デビュー作『幻の光』(平成7年)のヴェネチア国際映画祭オゼッラ・ドゥオロ賞を皮切りに多くの作品が海外の映画祭で受賞し、『そして父になる』(平成25年)のカンヌ国際映画祭審査員賞、そして社会の底辺で暮らす家族の愛と絆を描いた最新作『万引き家族』(平成30年)では、今村昌平監督の『うなぎ』(平成9年)以来21年ぶりとなったカンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)など5つの国際映画祭で受賞している。
『万引き家族』5/6(月・休)よる9:00他
©2018 フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.
◇撮影技術
近年、多くなっているのがコミックやアニメを原作とした実写映画だ。子どもの頃からそれらに慣れ親しんだ世代のクリエイターが映画界の第一線で活躍するようになったこともあるが、CGやデジタルSFX、あるいはワイヤー・ワークといった映画の技術が劇的に進んだことで、以前では不可能だった作品の映像化が可能になったことが大きい。『DEATH NOTE』(平成18年)のコミックそのままの死神や、『寄生獣』(平成26年)のリアルなパラサイト生物、『るろうに剣心』シリーズ(平成24~26年)のアクロバティックな殺陣は、原作が発表された当時には実写化は到底成し得なかった。
『DEATH NOTE the Last name』5/2(木・休)午後4:15他
©大場つぐみ・小畑健/集英社©2006「DEATH NOTE」FILM PARTNERS
また『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズ(平成17~24年)のように過去の時代を再現するためにデジタルSFXが使われるなど、一般の映画でも普通に高度な撮影技術が駆使されている。着ぐるみにこだわってきたゴジラもついには『シン・ゴジラ』(平成28年)でフルCGとなった!
平成という時代はフィルムもビデオテープも放送もアナログからデジタルへと移り変わっていった、変化と進化の時代だった。平成は後の人類から"デジタル革新期"なんていわれているかもしれない。
※興収は一般社団法人 日本映画製作者連盟のHP発表に拠る
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文=竹之内円
映画ライター。主に雑誌に映画紹介などを書き散らしています。それと最近に発売された『ウォーキング・デッド』や新作『ハロウィン』のサウンドトラックCD封入のライナーノーツを書きました。よかったら見てね。
[放送情報]
劇場版コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-
WOWOWシネマ 5/25(土)よる8:00
WOWOWプライム 5/26(日)午後1:00
WOWOWプライム 5/30(木)よる7:45
WOWOWシネマ 6/2(日)よる6:45
WOWOWシネマ 6/19(水)よる9:00
万引き家族
WOWOWシネマ 5/6(月・休)よる9:00
WOWOWプライム 5/12(日)午後1:00
WOWOWシネマ 5/19(日)午後2:45
WOWOWシネマ 5/24(金)深夜0:00
DEATH NOTE
WOWOWシネマ 5/2(木・休)午後2:00
WOWOWシネマ 5/17(金)よる11:25
WOWOWシネマ 6/10(金)よる9:00
WOWOWプライム 6/27(木)深夜2:50
DEATH NOTE the Last name
WOWOWシネマ 5/2(木・休)午後4:15
WOWOWシネマ 5/17(金)深夜1:35
WOWOWシネマ 6/11(火)よる9:00
WOWOWライブ 6/17(月)深夜1:15
WOWOWプライム 6/28(金)深夜2:30
L change the WorLd
WOWOWシネマ 5/2(木・休)よる6:45
WOWOWシネマ 5/18(土)午前4:00
WOWOWシネマ 6/12(水)よる9:00
WOWOWプライム 6/30(日)午前4:40
デスノート Light up the NEW world
WOWOWシネマ 5/2(木・休)よる9:00
WOWOWシネマ 5/18(土)午前6:10
WOWOWシネマ 6/13(木)よる9:00
WOWOWプライム 6/30(日)よる11:30
ALWAYS 三丁目の夕日
WOWOWシネマ 6/2(日)午前9:15
WOWOWシネマ 6/17(月)午前9:00
ALWAYS 続・三丁目の夕日
WOWOWシネマ 6/2(日)午前11:30
WOWOWシネマ 6/18(火)午前9:00
ALWAYS 三丁目の夕日'64
WOWOWシネマ 6/2(日)午後2:00
WOWOWシネマ 6/19(水)午前9:00
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