まず、「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズ（'05～'12）の鈴木オート社長、鈴木則文（堤真一）。高度成長期真っただ中の昭和30年代に、東京の下町で小さな自動車修理工場を営む彼は仕事へのプライドも情熱もアツい。反面、短気でブチ切れると、髪を逆立て鬼の形相で暴れ狂う。だが、根はお人よしで、家族思い。家にテレビが初めてやって来る時には隣近所に吹聴してお祭り騒ぎをするような子どもっぽさもあり、どこか憎めない。

　昭和の頑固おやじの生きざまは、時代が移り変わろうとも、第一線を退こうともそう簡単に変わらない。だからちょっと厄介だ。「家族はつらいよ」シリーズ（'16～'18）の平田周造（橋爪功）は、会社に尽くし、家族のために頑張ってきた典型的なサラリーマン。リタイアした今は気ままな第二の人生を送っていくつもりが、突然、妻の富子（吉行和子）から離婚を切り出されてしまう。その理由について「お父さんと一緒にいるのが、ストレス」「ずっと我慢してきたから、もう解放されたい」と言われても全く理解できず、「俺は何も悪いことはしていない」の一点張り。子どもたちに意見されると「うるさい！」と逆ギレし、聞く耳を持たない。だが、本当は不器用で、自分の気持ちを伝えるのにテレがあるだけ。言ってしまえば、ツンデレおやじ。周造のように、いくつになっても頑固一徹なままの父親は、実際、結構いそう。家族を巻き込んでのてんやわんやのドタバタ劇を見ていると、他人事とは思えなくなるはず。

　『エンド・オブ・キングダム』（'16）は、米国大統領専属のシークレットサービスの活躍を描いた『エンド・オブ・ホワイトハウス』（'13）の続編。ここで登場するのは、戦う父親だ。
　同時多発テロが起きた英国ロンドンで、主人公マイク（ジェラルド・バトラー）はシークレットサービスとして合衆国大統領（アーロン・エッカート）を守り抜く。妻が間もなく出産するマイクは、使命を全うするため、そして家族と過ごす平和な未来を守るため、決死の覚悟で敵を撃退する。その戦いっぷりたるや、おまえは不死身かぁー!? とツッコミを入れたくなるほど。
　味方を失い、マイクとたった2人生き残った大統領も守られてばかりではない。息子に恥じない生き方をしたいと父親の顔をのぞかせ、襲ってくるテロリストたちに立ち向かう。
　家族のために命懸けで任務を遂行する父親たちは文句なしでカッコよく、彼らの家族を思う気持ちに胸が熱くなることだろう。

　わが子のために命を懸ける父親たち。それは人間だけに限らない。「皇帝ペンギン」シリーズ（'05～'17）は、南極大陸に生息する皇帝ペンギンの姿を捉えたドキュメンタリー。驚かされるのは、父ペンギンたちが、ブリザードが吹き荒ぶ中、まるでおしくらまんじゅうをしているように身を寄せ合って寒さから卵を守っていること。120日間、まったく飲まず食わず、母ペンギンたちが帰ってくるまで、地球一過酷ともいわれる子育てをけなげに続ける。そんな父ペンギンの姿を通して、父親が子に注ぐ無償の愛の大きさや、何も語らなくても見守ってくれている父親という存在の偉大さを改めて感じるかもしれない。