2019/10/22 up

痛々しくも目が離せない。『青の帰り道』で魅せる"俳優"横浜流星の真髄

「青の帰り道」10/25(金)よる6:55

文=SYO

 この人は、どこまで行くのだろう。

 今、最も「美しい俳優」の称号が似合うひとり、横浜流星。現在23歳の彼は、「カッコよさ」「かわいらしさ」「気高さ」の美しさ三原色を備えた傑物だ。完璧に整った顔立ち、柔らかく包み込んでくれるような中性的な雰囲気、なのに特技は極真空手で、中学3年生で世界大会優勝...神様がスペックの配分を間違えたとしか思えない。色々揃いすぎである。

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 役者としても、「人の作った料理は食べられない」というクールな大学院生から、夢に情熱を燃やすピュアなミュージシャン、ギャップ萌えな不良、壮絶な運命を背負った高校生など、硬軟関係なくさまざまなキャラクターを演じられる。しかも、歌もお上手。彼の主演作ではないが、横浜流星の存在はまさに"キセキ"だ。

 2014~15年に放送された「烈車戦隊トッキュウジャー」('14~'15)で芸を磨き、2019年1月クールのテレビドラマ「初めて恋をした日に読む話」('18)の"ピンク髪"キャラでお茶の間に広く知られるようになった彼は、6月には「あなたの番です -反撃編-」('19)に出演し、続いて10月から放送中の「4分間のマリーゴールド」('19)にも出演と、連続ドラマにほぼ出ずっぱり状態。

 映画では、松坂桃李、菅田将暉、忽那汐里、平祐奈、成田凌、杉野遥亮と共演したヒット作『キセキ -あの日のソビト-』('17)が記憶に新しい。同作では菅田、成田、杉野と共に「グリーンボーイズ」名義でCDデビューを果たした。

 その後、キラキラを振りまきまくった青春映画『虹色デイズ』('18)で女子の瞳を虹色に輝かせ、『キセキ -あの日のソビト-』に続くGReeeeN映画プロジェクト第2弾『愛唄 -約束のナクヒト-』('19)では、限りある命をひたむきに生きる青年を熱演して観客を号泣させ、『L♥DK ひとつ屋根の下、「スキ」がふたつ。』('19)、『チア男子!!』('19)、『いなくなれ、群青』('19)と続く。こうして見ると、2019年はなんと映画4本・テレビドラマ3本に出演。Instagramのフォロワーは、10月1日現在で133万人を超えている。日本中が、横浜流星を欲している――そう言っても、決して誇大広告ではない。

detail_191022_photo02.jpg『L♥DK ひとつ屋根の下、「スキ」がふたつ。』11/1(金)よる9:00他
©「2019 L♥DK」製作委員会

 その中で今回は、容赦ない現実の中でもがく若者の姿が心に突き刺さる映画『青の帰り道』('18)を紹介したい。『新聞記者』('19)で一躍名を馳せた俊英監督、藤井道人が手掛けた青春群像劇だ。本作で横浜は、大人になりきれないまま社会に出てしまった自由人リョウを、渾身の演技で体現している。上に挙げた出演作の中でも、こと"痛み"という点では別格だ。

detail_191022_photo03.jpg『青の帰り道』
©映画「青の帰り道」製作委員会

 片田舎で、いつもつるんでいた高校生7人組。教師の目を盗んでタバコを吸い、夜中に集まって酒を飲み、学校からの帰り道では互いの夢を語り合い――永遠のように思えた青春の日々は終わりを告げ、彼らは各々の道を歩き始める。現場作業員になったリョウは「コツコツ小銭を稼ぐのはバカらしい」と備品を売り飛ばし、キャバクラで散財三昧。上司にバレてクビになると、上京してオレオレ詐欺に手を染めていく。

detail_191022_photo04.jpg『青の帰り道』
©映画「青の帰り道」製作委員会

 時間は万人に平等だが、成長速度は人によって違う。それを強引に揃えるのが、社会人だ。皆はその流れに乗る。だが、"大人"の概念がわからないリョウは納得できない。だからルールやシステムを蹴飛ばし、犯罪に手を染めてでも、さらには自分の身体を差し出しても「仲間」という大切なものを守ろうとする。リョウは、作品全体を通して最も純粋なキャラクターといえる。

「自由」と「社会」の間でもがきながら、友愛に生きようとする男。横浜は持ち味である目力に強弱をつけ、さらに視線を浮遊させ、あるいはいきなり停止したり、ピントをずらしたりすることで、揺れ動くリョウの「迷い」をリアルに表現。その手法を応用し、視線が定まった時には「覚悟」を強く感じさせる。

 さらに、前半ではオーバーな動作で軽薄さや未熟さを示し、シリアスなトーンが強くなる後半では直線的な動作の頻度を上げ、シャープなイメージを役にもたらす。2時間を通して、役がどんどんと成長していくさまを身体全体で見せつけている。

 傷だらけの青春は、どんな結末を迎えるのか。俳優・横浜流星の真骨頂が堪能できる一作、未見の方はぜひご覧いただきたい。

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  • 文=SYO
    東京学芸大学卒業後、編集者を経て映画ライターに。CINEMORE、FRIDAYデジタル、映画.com、DVD&動画配信でーたなどに寄稿。Twitter(@SyoCinema)フォロワーは1万4000人超。

[放送情報]

青の帰り道
WOWOWシネマ 10/25(金)よる6:55


L♥DK ひとつ屋根の下、「スキ」がふたつ。
WOWOWシネマ 11/1(金)よる9:00
WOWOWシネマ 11/11(月)午後5:00
WOWOWライブ 11/29(金)午前9:00

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