2019/12/10 up

『フォルトゥナの瞳』 身近だけど尊い...奇跡の存在、神木隆之介を見守り隊!

「フォルトゥナの瞳」12/21(土)よる8:00他

文=深田尚子

 神木隆之介を嫌いだという人に、会ったことがない。

他の人気記事はこちら>

 1999年にドラマ「グッドニュース」で役者デビューして以来20年。いろんなドラマや映画で見掛けるかわいい子役の男の子だった"神木くん"は、いつの間にか誰もが認める役者、神木隆之介として、小学生、中学生、高校生、そして現在まで、常にその成長を役とともに見せてきた。
 彼は、小さい頃から大人に囲まれた芸能の世界に身を置きながら、「精神年齢が中学校で止まっている」と自ら語る言葉の通り(!?)、変に"スレた"ところを感じさせない。それどころか、子役時代と変わらない無邪気さと謙虚さと"普通っぽさ"を保ち続け、まるで幼なじみのような、親戚の男の子のような身近さで居続けてくれる、まさに唯一無二の存在だ。

 "神木くんには、いつまでもそのままでいてほしい"。

 そう思わせる一方で、成長とともに違った役どころに貪欲に挑戦し、その都度役者として新たな顔を見せていく。作品ごとにりりしく、たくましく、面白くなっていく姿を目の当たりにするたびに、「神木くんがこんな役をやるようになったのか」「彼がこんな表情を見せるなんて...!」と、その変化にうれしい驚きを感じ、その進化をずっと追い続けてしまう。そんな役者ぶりがまた、ニクいほど魅力的なのだ。

 そんな彼が、ある女性と恋に落ち、その人を守ろうと奮闘する主人公を演じた映画『フォルトゥナの瞳』('19)は、"神木隆之介初の本格的なラブ・ストーリー"というだけでも十分キャッチーなのだが、神木の新たな一面をまたひとつ発見できるという意味でも、ぜひ観てもらいたい一作。

detail_191210_photo02.jpg©2019「フォルトゥナの瞳」製作委員会

 百田尚樹の同名小説を映画化した本作で神木が演じるのは、死を目前にした人間が透けて見えてしまう能力"フォルトゥナの瞳"を持ってしまった青年、木山。死の運命を前に絶望と戸惑いを抱える彼は、ひと目惚れした女性、葵(有村架純)の体が透けて見えたことを機に、運命に逆らい、彼女を守るために行動を起こしていく。

 本作の見どころのひとつであるキス・シーンでは、神木が有村の美しさを際立たせるために画角から手の角度まで計算し尽くし、完璧な1シーンに仕上げたというエピソードが有名だが、そんなところに彼の役の掘り下げ方のヒントが見える。彼は役者としてとことん役にのめり込むというよりは、どこまでも役に、作品に、共演者に興味と好奇心を持ち、心から楽しみながら役に向き合っていく人だ。

detail_191210_photo03.jpg©2019「フォルトゥナの瞳」製作委員会

 たとえば『るろうに剣心 京都大火編』『~伝説の最期編』(ともに'14)では原作ファンにも人気の瀬田宗次郎役を自らやりたい!と大友啓史監督に伝え、配役が決まる前から役作りやアクション練習に打ち込んで共演者をも驚愕させたり、『3月のライオン』前後編('17)ではプロ棋士から指導を受け日本将棋連盟からアマチュア初段の免状をもらうほどの腕前を身に付けてしまったりと、度を超えたアプローチとともに喜々として作品に飛び込んだ。結果、原作ファンをも歓喜させるほどの再現度の高いビジュアルはもちろんのこと、説得力ある役作りで世間をあっと言わせてきたのだ。そんな彼の"こだわり満載"のキス・シーンだからこそ、一見の価値は十二分にある。

 また、時間軸の経過の中で、運命に翻弄されるひとりの男の苦悩や葛藤を、表情やたたずまいによりしっかりと見せていく神木の演技と存在感が、ファンタジックなラブ・ストーリーの中に描かれるミステリーの要素も見事に引き立たせている。共演の有村とともに醸し出す柔らかな雰囲気が、衝撃のラストさえも優しく包み込み、じんわりと温かい余韻を残してくれるのも好印象だ。

detail_191210_photo04.jpg©2019「フォルトゥナの瞳」製作委員会

 『フォルトゥナの瞳』で"大人な"一面を見せた神木は、2020年も岩井俊二監督作『ラストレター』や池井戸潤原作の「連続ドラマW 鉄の骨」など、話題作への出演が続く。芸歴24年にして、現在26歳。この先も、無限大の伸びしろと予測不可能な未来を感じさせる神木隆之介から、文字通り、目が離せない。
 そしてその一方で、いつまでも変わらない存在感を放ち続ける"神木くん"という人そのものを、これからも幼なじみのような、はたまた親戚のオバちゃんのような身近な視点で、ドキドキしながら見つめていきたい。


文=深田尚子
映画雑誌の編集者を経てライターに。「日本映画navi」「TVnavi」ほか、情報誌、WEBなどでインタビュー記事や製作現場リポート、レビューを執筆中。


[放送情報]

フォルトゥナの瞳
WOWOWシネマ 12/21(土)よる8:00
WOWOWプライム 12/22(日)午後1:30
WOWOWプライム 12/26(木)よる8:00
WOWOWシネマ 12/29(日)午後2:45
WOWOWライブ 1/5(日)よる10:00
WOWOWシネマ 1/11(土)深夜0:00
WOWOWシネマ 1/25(土)午前9:30


TOPへ戻る

最新記事

もっと見る

© WOWOW INC.