2020/06/30 up

俳優引退! さらば愛しきロバート・レッドフォード

『さらば愛しきアウトロー』7/12(日)よる9:00他

文=高橋愉治

 ロバート・レッドフォードは言わずと知れた、映画史上にその名を刻む"永遠の美男子"だ。とりわけ絶頂期の1970~80年代には、ハリウッドを代表するスーパースターとして世界中を魅了。年を重ねたその後も、カリスマ性衰えぬスターとして、監督として、そしてサンダンス映画祭を主催するサンダンス・インスティテュート(名前は彼が『明日に向って撃て!』('69)で演じたサンダンス・キッドに由来)の活動を通じた若き才能への支援者として、偉大なるキャリアを築き上げた。

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 そんなレッドフォードが俳優業からの引退を公言した最後の主演作『さらば愛しきアウトロー』('18)は、引退を惜しむファンを悲しい気分にさせるどころか、誰もが微笑まずにいられないチャーミングな快作だった。彼が演じた実在の人物フォレスト・タッカーは、幾度となく銀行強盗を繰り返し、16回もの脱獄を成功させた伝説的な犯罪者。この紳士強盗は銀行の支店長や窓口係に礼儀正しく接し、拳銃をちらつかせながらも誰ひとりとして傷つけなかったという。くしくもレッドフォード自身の出世作『明日に向って撃て!』と同じ銀行強盗役という巡り合わせに加え、人生を"楽しむ"ために颯爽と危険な犯罪を重ねていくタッカーの姿は、レッドフォードの俳優人生そのものにオーバーラップする。

detail_200630_photo02.jpg『さらば愛しきアウトロー』
©2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved

 このたび『さらば愛しのアウトロー』の放送に合わせて組まれたロバート・レッドフォード特集には、ベスト・セレクションといっても過言ではない作品が揃った。むろん、それ以外にも『明日に向って撃て!』や『華麗なるギャツビー』('74)、『大統領の陰謀』('76)『スパイ・ゲーム』('01)といった数多くの傑作、名作があるが、過酷な水上ロケに挑んだ『オール・イズ・ロスト〜最後の手紙〜』('13)含め、放送作品はいずれもファンの間でトップ・クラスの人気を誇り、俳優レッドフォードを象徴する魅力が刻まれた作品ばかりである。

detail_200630_photo03.jpg『オール・イズ・ロスト~最後の手紙~』7/17(金)午後4:45
©All Is Lost LLC

 レッドフォードに悪役は似合わない。しかし彼自身はアウトローというキャラクターを好み、どこか茶目っ気のある犯罪者を演じさせたら天下一品だった。『明日に向って撃て!』に続いてジョージ・ロイ・ヒル監督、親友のポール・ニューマンとタッグを組んだ『スティング』('73)は、まさしくその個性が最大限に発揮された軽妙洒脱なコンゲーム・ムービーだ。

detail_200630_photo04.jpg『スティング』7/14(火)よる6:45
© 1973 Universal Studios - All Rights Reserved

 また今回の特集には、レッドフォードのフィルモグラフィを振り返るうえで欠かせない名匠シドニー・ポラックとのコンビ作が3本含まれている。そのうち『追憶』('73)と『愛と哀しみの果て』('85)は、レッドフォードの類いまれなほど端正なルックスが際立つメロドラマ。『追憶』で披露した海軍士官の制服姿は当時の女性ファンを歓喜させ、『愛と哀しみの果て』でメリル・ストリープを相手に演じた自由気ままな冒険家役には、プライベートでは雄大な自然をこよなく愛するレッドフォードの人生観が投影されているかのよう。もうひとつのポラック監督作品『コンドル』('75)は、CIA局員の逃避行を描いたスパイ・スリラーで、硬派で知的な役柄も得意としたレッドフォードのクール&スマートな魅力を堪能できる。

detail_200630_photo05.jpg『追憶(1973)』7/13(月)よる7:00
© 1973, renewed 2001 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.
detail_200630_photo06.jpg『愛と哀しみの果て』7/16(木)よる6:15
© 1985 Universal Studios - All Rights Reserved
detail_200630_photo07.jpg『コンドル(1975)』7/12(日) よる7:00
© 1975 STUDIOCANAL. All Rights Reserved.

 メジャーリーグのオールド・ルーキーを演じた『ナチュラル』('84)は、詩情豊かでノスタルジックな味わいのスポーツ・ドラマだ。苦難の過去を乗り越えて夢を追い、信念を貫く主人公のキャラクターは、まさにレッドフォードのはまり役。組織やチームに属しながらも、ひときわ輝く孤高の存在感を放っているところが、いかにもレッドフォードらしい。こちらはディレクターズ・カット版での放送。

detail_200630_photo08.jpg『ナチュラル[ディレクターズ・カット版]』7/15(水)よる6:30
© 1984 TriStar Pictures, Inc. All Rights Reserved.

 そして『さらば愛しきアウトロー』には、「これぞレッドフォード!」と快哉を叫びたくなる素敵なエンディングが用意されている。"永遠の美男子"が"永遠のアウトロー"としてスクリーンから去って行くその鮮やかな退き際を、しかと脳裏に焼きつけたい。

detail_200630_photo09.jpg『さらば愛しきアウトロー』
©2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved


  • 高橋愉治
  • 文=高橋愉治
    純真な少年時代に恐ろしい映画、謎めいた映画を観すぎて、人生を踏み外した映画ライター。毎日新聞、DVD&動画配信でーた、映画.comなどで映画評を執筆。


[放送情報]

さらば愛しきアウトロー
WOWOWシネマ 7/12(日)よる9:00
WOWOWプライム 7/16(木) よる11:50
WOWOWシネマ 7/22(水)午後3:00


コンドル(1975)
WOWOWシネマ 7/12(日) よる7:00


追憶(1973)
WOWOWシネマ 7/13(月)よる7:00


スティング
WOWOWシネマ 7/14(火)よる6:45


ナチュラル[ディレクターズ・カット版]
WOWOWシネマ 7/15(水)よる6:30


愛と哀しみの果て
WOWOWシネマ 7/16(木)よる6:15


オール・イズ・ロスト~最後の手紙~
WOWOWシネマ 7/17(金)午後4:45

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