2018/08/31 up

ジェームズ・ボンドVSスペクター 因縁の歴史

「007/スペクター」9/8(土)よる8:00ほか

 シャーロック・ホームズにはモリアーティ教授、ルーク・スカイウォーカーにはダース・ベイダー、仮面ライダーにはショッカーというようにヒーローには強敵がつきものだ。そして、その敵が凶悪で強いほどヒーローは輝く――。イギリス秘密情報部MI6に所属する殺しのライセンスを持つスパイ、コードネーム007ことジェームズ・ボンドが活躍する『007』シリーズ。これまで24作が作られ、50年以上にわたって世界を魅了している本シリーズにおいて、宿敵としてボンドを苦しめてきたのが悪の組織スペクターだ。

 幽霊という意味を持つスペクター(=SPECTRE)とは、Special Executive for Counter-intelligence,Terrorism,Revenge and Extortion(対敵情報、テロ、復讐、強要のための特別機関)の略。第1作『007/ドクター・ノオ』(62)では米国のロケット打ち上げを妨害し、第2作『007/ロシアより愛をこめて』(63)ではボンドの暗殺計画を実行。第4作『007/サンダーボール作戦』(65)では核弾頭を強奪して世界を脅迫し、第5作『007は二度死ぬ』(67)では米ソのロケットを奪って戦争勃発を企てた。そして、第6作『女王陛下の007』(69)では殺人ウイルスを世界にばらまこうとし、第7作『007/ダイヤモンドは永遠に』(71)では超強力レーザー搭載の人工衛星で世界転覆を計画するなど、ボンドを何度も窮地に追い込んだ。

 スペクターは世界各国の政府要人や軍隊はもちろん、大企業や富豪にもメンバーがいる世界最大の犯罪組織だ。その幹部には『~ドクター・ノオ』の天才科学者ノオ博士や、『~ロシアより愛をこめて』に登場し、ボンドの命を狙うソ連の女性大佐ローザ・クレッブら恐ろしい人材がそろっている。そして、彼らを率いるスペクターの首領がエルンスト・スタヴロ・ブロフェルド。スキンヘッドがトレードマークで、膝の上に乗せたペルシャ猫をなでるポーズが印象的な彼はボンド最大の敵であるにも関わらず、スペクター共々『~ダイヤモンドは永遠に』を最後にシリーズから姿を消す。

 イアン・フレミングの原作だと、スペクターは『~サンダーボール作戦』『女王陛下の007』『007は二度死ぬ』の3作にしか登場しない。実はスペクターは、『~ドクター・ノオ』以前にフレミングが独自に企画を進めていたボンド小説の映画化脚本を共同執筆した、ケヴィン・マクローリーのアイデアから生まれたものだ。しかし1961年、フレミングはその脚本をマクローリーに無断で小説『サンダーボール作戦』として出版し、著作権を巡ってマクローリーに訴えられる。同じ頃、フレミングは『007』シリーズの映画化権を製作会社のイオン・プロに売却。当初、イオン・プロは原作で最も派手なストーリーである『サンダーボール作戦』を映画化第1作に予定していたが、フレミングとマクローリーの著作権争いが続いていたため『ドクター・ノオ』に変更した。『~ドクター・ノオ』と『~ロシアから愛をこめて』では、原作では事件の黒幕はソ連に実在した諜報部隊スメルシュだったが、政治的なトラブルを避けようと映画版で架空の組織であるスペクターに改変したことから、スペクターの使用権を主張するマクローリーは猛抗議。イオン・プロは映画第4作『~サンダーボール作戦』の製作者と共同原作者にマクローリーをクレジットすることで一度は和解に持ち込むが、スペクターの使用を同作だけのつもりだったマクローリーの意向を無視し、『~二度死ぬ』から『ダイヤモンド~』までの映画にスペクターを敵に設定したことで訴訟問題が起こり、以降スペクターもブロフェルドも映画に登場できなくなってしまう。イオン・プロはマクローリーへの当てつけとブロフェルドとの決別の意味を込め、『007/ユア・アイズ・オンリー』(81)の冒頭で"誰がどう見てもブロフェルド"と思われる謎の人物をボンドが返り討ちにするシーンを作り上げた。

 こうした"大人の事情"によってボンド映画から消えたスペクターだが、2006年にマクローリーが死去し、その遺族とイオン・プロが和解したことで『007/スペクター』(15)で44年ぶりにスクリーンに復活を果たす。そして同作では、『007/カジノ・ロワイヤル』(06)での犯罪組織のマネー・ロンダリング、『007/慰めの報酬』(08)で描かれるボリビアでのクーデター、『007/スカイフォール』(12)でのイギリス秘密情報部爆破など、全ての凶悪犯罪の黒幕がスペクターであったことが判明する。

 ダニエル・クレイグ版『007』のスペクターの設定は過去作と同じではないが、『~スペクター』でボンドとレア・セドゥ演じるヒロインのマドレーヌがスペクター基地に招かれたときのもてなしが『~ドクター・ノオ』と似ていたり、終盤に現われるブロフェルドの顔が『~二度死ぬ』のブロフェルドそっくりだったりと、いくつものオマージュがあるので探してみるのも楽しい。

文=竹之内円

[放送情報]

「007」シリーズ24作一挙放送
9/8(土)スタート

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