2018/12/21 up

【2週連続クリスマス・スペシャル!】 Vol.2 クリスマス映画は優しさでできている

「三十四丁目の奇蹟」12/24(月・休)午前7:45

 文明の利器がどんどん発達して、インターネット網が世界の隅々まで張り巡らされようとしている現代においても、不思議なことに「サンタクロースは存在する」ことを人々は何らかの形で証明しようとしている。例えば、北アメリカ航空宇宙防衛司令部は毎年クリスマス時期になると、サンタクロースの現在地を追跡する特設サイト"NORAD TRACS SANTA"を開設。インターネット上で、地球上を移動するサンタクロースの最新の現在地を中継している。つまり、世の中には「サンタクロースは実在しない」という考え方が基本的にあることが前提となっている。同時に「サンタクロースは存在する」と言えるような大人である方がいい、と考える人たちの"優しさ"や"善意"によってNORAD TRACS SANTAは成り立っているとも言えるのだ。

『三十四丁目の奇蹟』('47)は、ニューヨークで"世界最大の百貨店"として実在するメイシーズが舞台。本物のサンタクロースを名乗る老人を巡り、その真偽が裁判沙汰になるという物語である。つまりこの映画もまた、世の中に「サンタクロースは実在しない」という考えが基本にあるからこそ成り立つ物語だといえる。また『エルフ~サンタの国からやってきた~』('03)では、映画の中の現実において、クリスマスが"嘘"であることが大前提になっている。クリスマスを信じない人たちのせいで、サンタクロースは"信じる"力を受信できず、ソリを飛ばせないでいるという設定。サンタの国からやってきたエルフは、見た目は30代であるにもかかわらず心は子どものまま。彼は純粋無垢であるがゆえに、我々の棲む現実の社会で騒動を巻き起こし、異質な存在として排除されてゆくのである。

 この2本の映画には、これといった悪人が登場しないのも特徴。そして、"信じる"ことを是とする"優しい"視点で溢れている。『三十四丁目の奇蹟』では、まさに"信じる"ことで奇跡が起こり、『エルフ』では、大人が忘れかけていた純粋さに惹かれてゆくことによって、やがて"異質な存在"であるエルフを、単なる"変わった人"として周囲が理解してゆくようになる。虚構の世界が現実の世界とシンクロしてゆくことで"嘘"が"まこと"となってゆく姿を描くことは、往年のハリウッド映画にとってお家芸ともいえる真骨頂のひとつ。例えば事実がふたつ提示されて、どちらも本当だと思える時、この2本の映画は「自分が信じたい方を信じればそれでいい」と思わせてくれる。サンタクロースが存在するか否かは重要ではない、他人の視線を気にすることなく、自分自身がどう感じているのかを大切にすることが重要なのである。何かを"信じる"ことは、心を優しくさせる。それは"信じる"ことで、人間の善い部分を見つめ直すことを可能にするからにほかならない。

 サンタクロースが世界中の子どもたちにプレゼントを届ける状況を追跡するサイトを北アメリカ航空宇宙防衛司令部が設置した理由にも、実は"優しさ"と"善意"によって成り立っていたという心温まるエピソードがある。

 1955年の冬、百貨店シアーズは子ども向けの「サンタ直通電話」を開設した。子どもたちがサンタと電話で直接話が出来るというサービスだったが、その広告に表示されていた電話番号には誤植があったのだ。その誤って記載された電話番号は、なんと中央防衛航空軍基地(CONAD)と同じ番号だったのである。偶然にも子どもからの電話を受け取ったハリー・シャウプ大佐は、「サンタは今どこにいますか?」との質問に機転を利かせ、「部下がレーダーで調査した結果、現在サンタクロースは北極から南下しているという形跡がある」と回答。その後も電話をかけてきた子どもたちに対して、最新のサンタクロースの現在地を伝えるようになったのだという。1958年にはアメリカとカナダが共同で北アメリカ航空宇宙防衛司令部を創設し、その伝統を今も引き継いでいるのだ。何となく『三十四丁目の奇蹟』の持つ精神と重なるエピソードに想いを馳せながら、やはりクリスマスは、"優しさ"と"善意"によって出来ているのではないかと感じさせるのである。

文=松崎健夫

[放送情報]

三十四丁目の奇蹟
WOWOWシネマ 12/24(月・休)午前7:45

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