2019/02/15 up

ボーイズ・ラブだけじゃない!『モーリス』と『君の名前で僕を呼んで』をつなぐジェームズ・アイヴォリーの優しく温かなまなざし

「モーリス」2/24(日)よる11:30

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  • 文=よしひろまさみち

    映画ライター。「sweet」「an an」ほか、女性誌、情報誌などで連載。テレビやラジオなどの番組でも映画紹介を担当している。

 同性愛、ことボーイズ・ラブの映画は、'80年代から女性に支持されているジャンル。'80~'90年代はよく「禁断の愛」なんてキャッチコピーをつけられていたけど、もうそんなの昔の話ですよね~。というか、ぶっちゃけ今、ゲイやレズビアン、トランスジェンダーなどの性的マイノリティを描いた映画に「禁断の~」なんてキャッチコピーつけたら、あたしを筆頭に大激怒ですよ。だって、禁じられてないんだもの。性自認ができている大人同士の愛に禁断なんてありません(子どもはダメよ)。

 とはいえ、ボーイズ・ラブの映画となると、それが禁じられている、もしくは偏見や差別にさらされることを嫌って隠れてコソコソ、という背徳感込みで、抑圧された中での恋愛にときめきを感じるというのも否定はできないのよね。となると、舞台設定は'80年代以前、もしくは宗教的背景があって同性愛を認めるわけにはいかん、という設定じゃないとダメ。
その点での傑作といえば『モーリス』('87)。これが日本で公開されたときのことは忘れられません。若き日のヒュー・グラントの姿がTVスポットでバンバン流れ、シネスイッチ銀座に大行列&立ち見御礼。いやー、よかった。何がよかったって、同性愛が犯罪とされていた時代の物語が持つ背徳感に反比例した映像と俳優たちの美しさが、素直に高い評価を受けたこと。またぬれ場ありなのに、高校生でも観に行けたこと(それはあたし)。物語自体はアルアルなのに、とにかく美しいのが見どころ(失礼......でもゲイだから、という話でもない初恋引きずり物語だもの)。これは、もうジェームズ・アイヴォリー監督のなせる技。
ジェームズ・アイヴォリー監督は、現在御年90歳の巨匠。『眺めのいい部屋』('86)の大ヒットの後『モーリス』を撮ったこともあって、『モーリス』はかなり注目を浴びたのよね。そんな監督自身もゲイ。パートナーとは彼が亡くなるまで公私を共にした、1920年代生まれのアメリカ人としてはかなりハイカラなお方(なんと40年以上交際!)。だからよね、マイノリティに対する視線が優しいの。彼の手掛けた作品はどれもそうだもの。『日の名残り』('93)にしたってアイデンティティゆえに孤独を味わうマイノリティを描いた傑作。彼やパートナー、そして友が味わってきた差別や偏見を、肌身で感じているから、「性的マイノリティだから」とくくらぬところで、マイノリティに対して優しいまなざしを投げ掛けてくれる、そんな作風。

『君の名前で僕を呼んで』

detail_190215_photo03.jpg©Frenesy , La Cinefacture

 それゆえに、アイヴォリー監督が脚色を手掛けてオスカーを獲得した『君の名前で僕を呼んで』も、ひたすらに美しい情景と青年たちを映し出す大傑作。監督は『サスペリア』のリメイクに挑んだルカ・グァダニーノだけれども、脚本から伝わる優しくて温かなまなざしは、エリオ(ティモシー・シャラメ)とオリヴァー(アーミー・ハマー)の関係性と、'80年代にしてはえらくリベラルなエリオの両親のキャラクターに表れているもの。確かにボーイズ・ラブ、というジャンルには入るけど、ぜひともそれだけじゃないところをちゃんとくみ取って!

[放送情報]

君の名前で僕を呼んで
WOWOWシネマ 2/24(日)よる9:00
モーリス
WOWOWシネマ 2/24(日)よる11:30

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