2019/04/01 up

今月のWOWOW初放送映画 厳選3作品

「恋は雨上がりのように」4/6(土)よる9:45

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  • 文=ミヤザキ・タケル
    長野県出身。1986年生まれ。映画アドバイザーとして、映画サイトへの寄稿・ラジオ・web番組・イベントなどに多数出演。『GO』『ファイト・クラブ』『男はつらいよ』とウディ・アレン作品がバイブル。

 皆さま、初めまして。各種SNSやWebメディアでの映画紹介、イベントやラジオ出演などを通して、ひとりでも多くの方と良き映画との懸け橋となるべく活動しております映画アドバイザーのミヤザキタケルと申します。

 この『今月のWOWOW初放送映画 厳選3作品』のコーナーでは、各月の初放送作品の中から見逃して欲しくないオススメの3作品をピックアップしてご紹介させて頂きます。 これを読めばあなたのWOWOWライフがより一層充実したものになること間違いなし!のはず...。

『恋は雨上がりのように』('18)

 何事にも当たりハズレは付き物。映画もそう、良い作品もあれば悪い作品もある。

 あらかじめ見極められるのであれば、誰もが当たりを引きたいに決まっている。ハズレのために1,800円や2時間近くもの時を無駄にしたくはない。そういった意味では、俗に言う"キラキラ映画"であったり、漫画原作の作品などは見極めるのが難しく危険な匂いがプンプンするため、観る対象から外されてしまいがち。

 だが、中には面白い映画も当然ある。

 オリジナルや小説原作作品に勝るとも劣らない人間模様や葛藤を、時には凌駕してしまうだけの胸の高鳴りを感じさせてくれる映画だって存在する。該当する一本に出逢えない限り"キラキラ映画"などに対する偏見を払拭するのは難しいが、本作こそ、その一本になり得る可能性を秘めている。

 原作はビッグコミックスピリッツほかにて連載されていた眉月じゅん先生の人気漫画。怪我が原因で陸上の夢を断たれた高校2年生の橘あきら(小松菜奈)が、バイト先のファミレスの店長であるバツイチ子持ちの冴えない45歳・近藤正己(大泉洋)に恋心を募らせていく物語。漫画原作・女子高校生が主人公・28歳差男女の恋愛などの要素から、「若者向けの作品」「非現実的なストーリー」と危惧してしまう方の気持ちも分かるが、どうか安心してほしい。物語は女子高校生の視点だけではなく、45歳の店長の視点からも並行して描かれていく。決して若者にだけ寄り添った作品というわけではなく、若者が観ても、ある程度の年齢に達した大人が観ても、違和感なく入り込めるだけの間口が広い作品に仕上がっている。

『恋は雨上がりのように』('18)
detail_190401_photo2.jpg©2018 映画「恋は雨上がりのように」製作委員会 (C)2014 眉月じゅん/小学館

 恋愛映画として楽しめるのはもちろんのこと、年の差から生じる些細なボタンの掛け違いの描写によって大爆笑もできてしまう本作。そして、夢を叶えられず足踏みしている者ならば、既に夢を手放してしまった自覚がある者ならば、きっと胸揺さぶられてしまうものがあると思う。描かれていくのは、胸に抱えた「夢」との向き合い方、一歩踏み出すためのキッカケを模索する雨宿りの期間。年の離れた男女の恋模様や、主人公たちが現実と夢の狭間でもがき続ける姿を通し、雨上がりに差す陽射しのような爽やかなきらめきを感じさせてくれる作品になると思います。観終えた後にこんなにも駆け出したくなる映画、そうそうありません。

『羊と鋼の森』('18)

 続いて紹介するのは、第154回直木三十五賞の候補作にも選出され、2016年の第13回本屋大賞を受賞した宮下奈都先生の小説の映画化作品。主演は数々の漫画原作作品において主演を務める山﨑賢人。そのイメージが邪魔をして本作を観るのを避けようとしているのなら大きな間違い。これまであくが強い漫画のキャラクターを演じることが多かった彼ですが、今までとは違い等身大の人間を繊細かつ魅力的に演じています。

『羊と鋼の森』('18)
detail_190401_photo4.jpg©2018「羊と鋼の森」製作委員会

 物語はピアノ調律師の門を叩いた青年・外村(山﨑賢人)が、地元・北海道の楽器店で働きながらさまざまな経験を積み、調律師としても人としても成長していく姿を描いた人間ドラマ。スポットライトを浴びる機会や物語の題材として選ばれること自体稀な"ピアノ調律師"の世界を描いていくのだが、知らない世界を知ることができる喜びを感じられるのと同時に、たくさんの人の支えがあって自分が立っていられることを、苦労や失敗なくして人は一人前になれないということをこの作品は教えてくれる。いや、観る者の心がより良き方向を向けるよう調律してくれると言っても過言ではない。日々の生活の中で磨り減っていく精神を、曇っていきがちな眼を、荒んでいく心持ちを整え、本当に大事なことが何であるのか気が付ける状態にまで引き戻してくれる。

 努力せずに、失敗せずに、後悔せずに一人前になった者なんて一人もいない。誰もが皆、恥ずかしい思いをして、情けない思いをして、涙を流して、理不尽な目にも遭って、一歩一歩地道に進んでいる。日々の積み重ねがものを言い、その時間こそが唯一無二の自分を構築していく。間違えて、傷ついて、投げ出して、それでも諦め切れなくて、最後の最後までしがみ続けた者だけが辿り着くことのできる境地がある。もしも今打ち込んでいるものや叶えたいことに行き詰まりを感じているのなら、初心に戻れるこの作品をオススメします。

『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』('17)

 最後に紹介するのは、ディズニー・ワールド近くの安モーテルでその日暮らしを続ける母娘の日常を描いた物語。正直なところ、興味を抱きづらい映画だと思う。ぼくたち日本人にとってはピンと来ないタイトルに加え、よほどの映画好きでなければ知らないキャストばかり。何の情報もなしに興味を抱けというのがそもそも無理な話。だからこそ、あなたに興味を抱いてもらうためのキッカケをここで作りたい。

『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』('17)
detail_190401_photo4.jpg©2017 FLORIDA PROJECT 2016, LLC.

 タイトルの"フロリダ・プロジェクト"とは、フロリダのウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート開発時に名付けられたプロジェクト名のこと。その際、世界最大級のアミューズメントリゾートを訪れる観光客を目当てに近隣に数多くのモーテルが建てられたのだが、今では廃れ、普通のアパートで暮らすこともままならない貧困層の避難場所と化している。本作はフィクションでありつつも、ディズニー・ワールド近くに実在するモーテルや社会の片隅で生きる人々の現実をリアルに映し出している。

 そんな厳しい現実を突き付けられながらも、物語は6歳の子どもの視点を中心に描かれていく。目に映るもの全てに不思議を見出すことができ、ちょっとした距離でも冒険と化してしまい、友達さえいればその身一つで無限に遊び続けることができた時代。かつて誰もが通ってきたあの頃の感覚が一時的にだが取り戻せ、心が洗われてしまうはず。同時に、それらの感覚がどのように失われてきたのかも痛感できてしまう。物事の分別を、善悪の在り方を受け入れ、人は徐々に大人になっていく。どんなに子どものままでいたくても、身体は自ずと成長し、社会的な責任がいくつものしかかってくるのが運命。そんな中、子どもでもいられず大人にもなり切れないモーテルの住人たちの抗えない現実が、きっとあなたの心を締め付ける。衝撃的なラスト85秒をどう解釈するかはあなたの心次第! どうでしょう、少しだけでも興味を持っていただけたのなら幸いです。

『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』('17)
detail_190401_photo4.jpg©2017 FLORIDA PROJECT 2016, LLC.

紹介させていただいた3本の作品とともに、是非素敵なWOWOWライフをお過ごしください。

「今月のWOWOW初放送映画 厳選3作品」の過去記事はこちらから
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[放送情報]

恋は雨上がりのように
WOWOWシネマ 4/6(土)よる9:45
WOWOWプライム 4/9(火)よる8:00
WOWOWシネマ 4/16(火)午後3:00

羊と鋼の森
WOWOWシネマ 4/5(金)よる9:00
WOWOWプライム 4/8(月)よる7:30
WOWOWシネマ4/15(月)午後2:45

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法
WOWOWシネマ 4/17(水)よる7:00

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