2019/05/10 up

第3回『パーティで女の子に話しかけるには』私たちは旅人ではなく観光客に近いわ

「パーティで女の子に話しかけるには」5/27(月)午前5:00

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  • 小沢一敬
    愛知県出身。1973年生まれ。お笑いコンビ、スピードワゴンのボケ&ネタ作り担当。書き下ろし小説「でらつれ」や、名言を扱った「夜が小沢をそそのかす スポーツ漫画と芸人の囁き」「恋ができるなら失恋したってかまわない」など著書も多数ある。

映画を愛するスピードワゴンの小沢一敬さんならではの「僕が思う、最高にシビれるこの映画の名セリフ」をお届け。第3回は、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』('01)のジョン・キャメロン・ミッチェルが監督した"ボーイ・ミーツ・ガール"のイギリス映画『パーティで女の子に話しかけるには』('17)。さて、どんな名セリフが飛び出すか?

――『パーティで女の子に話しかけるには』とは面白い選択かなと思いました。

小沢一敬(以下・小沢)「うん、選んどいてなんだけどさ。俺もこれ、不特定多数の人間には薦めないもん(笑)。でも友達には絶対薦める。友達は分かってくれると思うから」

――人を選んで薦めたい映画なんですよね。

小沢「そうそう! でもそこがいいんだよね。変だけどピュアだし。しかもすげーパンクな映画でしょ。主人公の少年がパンク好きなのはもちろんなんだけど、ザ・ダムドの『ニュー・ローズ』って曲が冒頭でかかるところからして、来たねって感じ。知ってる? セックス・ピストルズ、クラッシュと並んでザ・ダムドは3大パンク・バンドの一つなんだよ」

――パンク好きなんですか、小沢さん。

「俺は愛知県出身なんだけど、名古屋は"栄パンクス"って言葉があるくらい、一時期すごいパンク・シーンをつくり上げてたわけ。俺も15~16歳の時は、この映画の主人公たちのように3人くらいでライブ・ハウスによく行ってた。だから映画を観た時『10代の頃の自分も行ったなあ』って思ってた。自転車で『わー』っと行く感じとか『知ってる、知ってる』って。俺も一時期、髪型モヒカンにしたり、ショットのライダースにびょう打ってたし」

――じゃあ、自分の青春と重ねながら観たと?

小沢「んー、それはどうだろう。だって俺、宇宙人と会ったことないし」

――それはそうですよね!(笑) でもこの映画の宇宙人登場は衝撃的展開でした。パンク少年の青春モノかと思いきや、出会った可愛い娘が遠い惑星へ帰らなければいけない設定で、たちまち映画自体がSFに変化しちゃうのはステキ。

小沢「常識では測れないような作りしてる映画でしょ。そこがパンクだなと」

――この映画自体が今までの映画に反旗を翻す感覚の"自由な"作りになってますよね。さてこの映画で好きなセリフはありましたか?

小沢「私たちは旅人ではなく観光客に近いわ」

detail_190510_photo02.jpg©COLONY FILMS LIMITED 2016

――主人公のパンク少年エン(アレックス・シャープ)の彼女となるザン(エル・ファニング)が、自分のPT(保護者)であるコロニーの長に語る言葉ですね。ホントは彼女、当り障りのない観光ではなく、そこの土地の人たちとちゃんと交流してみたい。その彼女の思いがあふれ出た言葉です。後に登場するライブの場面では、関連した言葉が歌詞になってます。自由に目覚めたザンが客に「マイク返せ。クソ女。ただの旅行者だ」と言われて、「私は旅行者じゃない!」ってシャウトして言い返してました。なぜ、このセリフを選ばれたんですか?

小沢「俺はよく友達と旅に行くのね。でも俺は別に観光名所を巡るとか、そういうのはしたくない。それは観光であり旅行。"旅行"じゃなくて"旅"をしたいんだよね。じゃその違いは何かっていうと、"旅行"は行き先も、行って何をするかも決めているもの。だけど"旅"はそういう決め事がなく、自由に行動することなのね。だからザンのこのセリフを聞いた時、『俺と同じこと考えてる』って思ったわけ。ま、現実は旅って今の俺にはなかなか無理なんだけど(笑)」

――ですよね。働き始めるとそこは...ね。

小沢「でもね、何も決めないで行くのはやってる。例えば(お笑いコンビ、チュートリアルの)徳井(義実)くんは、『今日は天気がいいから××しよう』と言っても付き合ってくれる。だから徳井くんとの旅はいいんだよね。一番ヤなのは『せっかくここ来たんだからこれ観なきゃ』『これ食べなきゃ』ってなること。だから映画のこのセリフにもすごい共感した。やっぱ拘束されたくないよね。自由でいたい」

――じゃあ、小沢さんにとってのベスト旅は少人数かひとり?

小沢「あ、そこ問題ありなんだわ。俺はひとりだと何もできないのよ。税関、通れないし。何言ってるか分からないし(笑)。ま、日本だったらどこへでも行けるけどね。って、何の話?(笑)。あとザンが『もっと私にパンクして』って言葉の意味が分からずに使うところとかも可愛かったなあ。偉そうに言っちゃうけど、別に映画の楽しみ方って人それぞれだと思うから、そういう細かい部分が面白かったから好きでもいいと思うんだ。だからザ・ダムドがかかっただけで、音楽を聞くだけでも俺にとってこれはいい映画だから」

――映画の楽しみ方は千差万別だと。あとザン役のエル・ファニングが可愛いですよね。

小沢「へぇ。俺も可愛いと思ったけど、でも誰もが可愛いと思うタイプじゃなくバンビっぽいよね。そういや、パンクとバンビってつながり深いんだよ。セックス・ピストルズが『誰がバンビを殺したか(Who Killed Bambi) 』ってパンクの歌を作ってるからさ」

――ちなみにエル・ファニングは『SUPER8/スーパーエイト』('11)では、エイリアンと遭遇する、本作とは真逆の役をやってますよね。そういう意味でも面白い。

小沢「あ、それ書いといてよ。そういう知識、大事。俺は観てて、サエない中年男たちが12軒のハシゴ酒をするうちに宇宙人と会う『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』('13)を思い出した。あれもフザけてるけどいい映画だよね」

――第2回連載で取り上げた『ベイビー・ドライバー』('17)と同じエドガー・ライト監督の作品です。

小沢「そうなんだ。それも書いといて(笑)。で、『パーティで女の子に話しかけるには』に話を戻すと、これもフザけてるけど実は最後は泣けるじゃん。あ、ここからネタバレになるけど」

※編集部注
ここから先はネタバレを含みますのでご注意ください。

小沢「最後に90年代に話が飛んで成功した主人公の話になるでしょ。あれなんか安達哲の漫画『さくらの唄』を思い出した。エロと青春の鬱屈感は『さくらの唄』にもあるけど、この映画もそうだし、でもなんかその先の未来が見える瞬間に泣けるよね。とにかくパンクなんだよなあ、別にパンクって暴れ回るだけがパンクじゃないからね」

detail_190510_photo03.jpg©COLONY FILMS LIMITED 2016

――ほかにも映画観ていて共感された部分は?

小沢「ザンが脇を見せるシーンがあるんだよね。大きく脇を見せて、主人公の少年が触るんだけど、それ観て『あ、この監督、脇フェチだな』って思った。実は俺も脇好きなんだよね...って何の話? 何のカミングアウト? とにかくさ、俺はこの映画が好きなんだよね。明確な理由を語るのは難しいけど、好きなものは好きなんだから仕方ないでしょ。万人向けではないけれど、好きな人には堪らない。仲の良い友達には勧めたい。そういう映画があってもいいんじゃない?」

取材・文=横森文

小沢一敬の「このセリフに心撃ち抜かれちゃいました」

[放送情報]

パーティで女の子に話しかけるには
WOWOWシネマ 5/27(月)午前5:00

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