2019/12/13 up

スピードワゴン小沢一敬が「最高にシビれる映画の名セリフ」を紹介! 第10回の名セリフは「本を借りて返さんとは無礼の極みだ」

「マイ・プレシャス・リスト」12/22(日)よる11:15他

取材・文=八木賢太郎

 映画を愛するスピードワゴンの小沢一敬さんならではの「僕が思う、最高にシビれるこの映画の名セリフ」をお届け。第10回は、ハーバード大卒の超天才だけど"コミュ力"ゼロのヒロインが、幸せを探して悪戦苦闘するさまを愛らしく描いた青春ラブ・コメディ『マイ・プレシャス・リスト』('16)。さて、どんな名セリフが飛び出すか?

──今回の作品は、また小沢さん好みな感じです。

小沢一敬(以下、小沢)「うん、面白かった。主人公の女の子が、セラピストから大みそかまでに実行すべき6つのリストを渡されるでしょ。つまりそれがマイ・プレシャス・リストってことになるんだけど、若い頃、俺も同じようなことをしてたんだよね」

小沢一敬さんの他のインタビューはこちら >

──それはどういうリストだったんですか?

小沢「お正月明けに相方(井戸田潤)と会ったときに『今年は必ずこれを実行しよう』っていうリストを作って、『これができなかったら、もう辞めよう』って」

──なるほど、コンビとしてのマイ・プレシャス・リスト。

小沢「そうそう。当時、全くの手探り状態で東京に出てきて、どうやったら仕事が増えるのかも分からなかったから。とりあえず目の前に課題を作って、それを一つずつクリアしていこうって毎年決めたのね、2人で。たとえば『今年はラジオでもいいからレギュラー番組を持つ』とか、『今年中に何かの大会で優勝する』とか。いつの間にか、それをやらなくなってしまったから、久々にまたリストを作ってみたいなぁと思ったね」

──今ならそのリストには何が入りますか?

小沢「今やりたいこと? う〜ん......、『ライターでたばこに火をつける』(と言いながらたばこに着火)。もうクリアしちゃったね(笑)。たぶん、そのリストを作らなくなったってことは、ひょっとしたら、あの頃なりたかったものになれたのかもしれないし、逆に、あの頃みたいな向上心がなくなったのかもしれないし。なんか、この映画を観ながら、そんなことを考えたよ」

detail_191213_photo02.jpg© 2016 CARRIE PILBY PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

──結局、そのリストは効果あったんですか?

小沢「それはね、レコーディング・ダイエットと同じで、毎日何かを意識してると、行動も変わってくるんだよ。今はもう、『毎日楽しけりゃいいや』しか考えてなくて、それはそれでいいんだけどさ、ときどき自分がどこに向かってるのか分かんなくなることもあるんだよ。山を登ってるのか、海へ向かってるのか。それに比べるとあの頃は、行きたい"どこか"が間違いなくあったんだよね」

──向かうべき目的地が明確だったと。

小沢「そういう意味では、こういうマイ・プレシャス・リストみたいなのを作れば、自分が今何を欲してるのか? どういう場所へ行きたいのか? そういうものが見えてくる。だからこの映画を観た人は、女子でも男子でも、昨日までの自分よりちょっと前に進むことができるし、そういうきっかけをもらえる作品だよね」

──脚本も、とてもよくできてましたよね。

小沢「そうだね。細かい伏線の回収というか、最初のほうに出てきたささいなセリフが後半で活きてくるとか、そういうのがとてもオシャレにできてて。だから、一度観た後にもう一回観たら、また違う面白さが出てくる映画かもしれないね」

──そんな中で今回、小沢さんがシビれた名セリフは?

小沢「本を借りて返さんとは無礼の極みだ」

※編集部注
ここから先はネタバレを含みますのでご注意ください。

──ハーバード大学を飛び級で卒業した天才少女キャリー(ベル・パウリー)には、大学時代に恋をしたハリソン教授(コリン・オドナヒュー)から深く傷つけられた過去がありました。そのことを知った父親(ガブリエル・バーン)が、娘が教授に貸していた大事な本を一緒に取り返しに行ったとき、帰り際に教授の顔面に強烈なパンチをお見舞いしながら言ったセリフですね。

小沢「これ、本当はお父さんは、本を返さないから殴ったわけじゃないんだよね。だけど、そこがお父さんの矜持であり、娘に対する父親としての優しさであり。決して感情に任せて殴ったわけじゃないよ、って見せるイギリス紳士っぽさだよね。まあ、何が紳士かは分からないけど、ああいうカッコ良さは好きだよね、俺は」

──本心では「うちの娘を傷ものにしやがって!」って言いたいところですよね。

小沢「だけど、そんなことを言いながら殴ったら身もふたもないから、あえて『本を借りて返さんとは無礼の極みだ』って。このシーンは映画の本筋のメッセージではないんだけどね」

──シャレてますよね、このお父さん。

小沢「シャレてるといえば、主人公のキャリーが、新聞の出会い系広告みたいなので知らない男と会うときに偽名を使うんだけど、その男が意外とインテリで、その偽名について『グロリア・パッチは登場人物だろ? 「美しく呪われし者」のさ』って見抜いちゃうシーンもいいよね。ああいうの好きよ」

detail_191213_photo03.jpg© 2016 CARRIE PILBY PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

──全体的にセリフのやりとりがシャレてるシーンが多いですね。

小沢「そうだね。キャリーが初めて教授の家に行ったシーンで出てくる、『世の中に存在する本を今から一生読み続けても、ほんの一部しか読めないな』っていうセリフも好きだよ。俺もめちゃくちゃ本が好きで、いつも本屋さんへ行って、読み切れないって分かってても何冊も買っちゃうのね。だから家には読んでない本がいっぱいあって、『いつか本当に暇になったら、これを全部読む』って楽しみにして生きてる部分もあるし、どうせ全部読み切れないからこそ、読んだ本からは必ず何かを得たいって気持ちもあるんだ」

──なんか、いろんなところにシビれてますね、今回は。

小沢「ほかにもたくさんあったよ。J・D・サリンジャーの本がキーになってるのもよかったし、クリスマスにキャリーが独り言で神様にお祈りするシーンもよかったし。これ、WOWOWでは年末に放送されるんだよね?」

──12月22日(日)に初回放送です。

小沢「クリスマスとか大みそかの物語だから、時期的にはピッタリの映画だよね。みんな毎年、年末になると、昔の俺がリストを作ってたように『来年こそは』って思うんだろうけど、現実にはなかなか動き出せないじゃん。そんなときにこの映画は、その背中をちょっと押してくれると思う。みんながキャリーのようにマイ・プレシャス・リストを作って、それを実行するように生きていったら、なんかいい世の中になる気がするよね。だって、そこには絶対に書かないはずだもん、『SNSで悪口をつぶやく』とか」

──たしかに。『悪口を書くのをやめよう』って書くはずですね。

小沢「このキャリーだって、頭がいいだけに最初は世の中に対して冷めてる部分があったけど、自分が目的を持って動くことで見方が変わって、世の中ってこんなに美しいんだって気付く映画だからね。それはみんなもまねしてみたらいいと思うんだ。だから、ここでこの映画に興味を持ったけどまだ観てない人が、まずマイ・プレシャス・リストの一番上に書くべきなのは、『WOWOWに加入』だね(笑)」

取材・文=八木賢太郎

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  • 小沢一敬
    愛知県出身。1973年生まれ。お笑いコンビ、スピードワゴンのボケ&ネタ作り担当。書き下ろし小説「でらつれ」や、名言を扱った「夜が小沢をそそのかす スポーツ漫画と芸人の囁き」「恋ができるなら失恋したってかまわない」など著書も多数ある。

「このセリフに心撃ち抜かれちゃいました」の過去記事はこちらから
小沢一敬の「このセリフに心撃ち抜かれちゃいました」

[放送情報]

マイ・プレシャス・リスト
WOWOWシネマ 12/22(日)よる11:15
WOWOWシネマ 1/23(木)午後1:20

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