2019/12/17 up

2019年、最後に観たい さまざまな愛のかたち

「クリスマス・カンパニー」12/24(火)午後3:15

文=SYO

 1年に一番恋がしたくなる季節を問われたら、8割9割の方が「クリスマス」と答えるだろう。街は華やぎ、恋人は寄り添い、ぼっちは震え...みんなが"恋"という憑きものに支配されちゃう時期。新年を誰かと過ごしたいとか、バレンタインから逆算するとこの時期にはくっついていたいとか、さまざまな理由はあるだろうが、まぁとにかく「恋がしたくて愛がほしい」状態になるのだ。

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 今回は不肖ながら、そんな時期にぴったりハマりそうな映画をいくつかピックアップさせていただいた。キラキラした恋から悲恋、家族愛、種族を超えた愛など、恋と愛の奥深さを感じていただけたら幸いだ。

 まずは、ド直球と見せかけてヒネり満載のクリスマス映画をご紹介。フランス・ベルギー合作の『クリスマス・カンパニー』('17)だ。本国フランスでは初登場第1位を記録したという本作、なんとサンタさんが人間が苦手という倒錯した設定。そんなアンビバレンツなサンタが、お手伝いのエルフ(9万2000人!)が一斉に倒れてしまったことから特効薬のビタミンCを探しに人間界に行くのだが...というストーリーだ。何それ面白過ぎる。

detail_191217_photo02.jpg『クリスマス・カンパニー』
© 2017 - LEGENDAIRE - GAUMONT - CHEZ WAM - FRANCE 2 CINEMA - NEXUS FACTORY - UMEDIA

 薬局に行くもアブない人扱いされ、刑務所に入れられかけて大ピンチ。クリスマスまであとわずか...サンタは無事にプレゼントを届けられるのか? ポップでカラフルな世界観や、街中をサンタのソリが飛ぶダイナミックな映像など、見応え十分。サンタの子どもたちへの愛も描かれるハートウォーミングな仕上がりになっている。

detail_191217_photo03.jpg『クリスマス・カンパニー』
© 2017 - LEGENDAIRE - GAUMONT - CHEZ WAM - FRANCE 2 CINEMA - NEXUS FACTORY - UMEDIA

 ウォーム・アップを終えたところで、お次は定番中の定番。『ラブ・アクチュアリー』('03)と『ホーム・アローン』('90)だ。例えば意中の相手が「普段は映画を観ない」タイプなら、『ラブ・アクチュアリー』のように、さまざまなエピソードが詰まったオムニバスが観やすくてオススメ。『ホーム・アローン』はコメディのイメージが強いが、実は家族愛と隣人愛を描いた名作だ。大人になってから観ると、隣家の老人やママに共感してウルっときちゃうかも。

detail_191217_photo04.jpg『ラブ・アクチュアリー』12/19(木)よる9:00
© 2003 Universal Studios. All Rights Reserved.

 温かな気持ちになりたい方には、『ワンダー 君は太陽』('17)と『パディントン』('14)をぜひ。この2作品は、 "受け入れる優しさ"を描いた傑作。障害によって人とは違う顔を持って生まれた少年、人間界に迷い込んだしゃべるクマ。周囲から孤立しがちな彼らが居場所を見つけるストーリーには、"親愛"の素晴らしさを感じられるだろう。

detail_191217_photo05.jpg『ラブ・アクチュアリー』
© 2003 Universal Studios. All Rights Reserved.

 キュンキュンしたい!という方なら、漫画原作の良作を薦めたい。男らし過ぎる彼氏と小動物系彼女のほっこりラブ『俺物語!!』('15)、爽やかオブザ爽やかな『君に届け』('10)、青春恋愛映画のヒットメイカー、三木孝浩監督による『アオハライド』('14)、生田斗真&広瀬すずが共演した『先生! 、、、好きになってもいいですか?』('17)など。どれも思春期の揺れる心情を丁寧に描いた作品だが、観た後はめちゃくちゃ恋がしたくなるから気を付けて。

detail_191217_photo06.jpg『俺物語!!』12/24(火)午前5:10
©アルコ・河原和音/集英社 ©2015映画「俺物語!!」製作委員会

 ちょっと変わったラブ・ストーリーを観たいと思うなら、蒼井優&阿部サダヲ主演の『彼女がその名を知らない鳥たち』('17)と、東出昌大がひとり二役を好演した『寝ても覚めても』('18)はどうだろう。前者は、愚直な男に貢がせつつ、他の男に体を許す"最低"な女を描いた一作。だがしかし、観終えた後は「これぞ真の恋愛映画!」と叫びたくなってしまう "印象が逆転する"秀逸な映画だ。後者は、同じ顔をした2人の男の間で揺れる女が主人公の文学的な愛の物語。彼女の決断をどう受け止めるか、観る人によって意見が分かれるだろう。見事な余韻を感じられる秀作だ。

detail_191217_photo07.jpg『君に届け』12/24(火)午後2:45他
©2010映画「君に届け」製作委員会 ©椎名軽穂/集英社

 残念ながら、失恋中の方だっているはず。そんなときにそっと寄り添ってくれるのは、『エターナル・サンシャイン』('04)。失恋相手を忘れたいと思ったとき、連絡先やSNSの投稿を消去しただけでは不十分。だってまだ、心に住んでいるから...。本作は、「恋の忘れ方」を描いた作品。つらくてつらくてしょうがなくなった男が選んだのは、記憶丸ごとの消去だった。だが、忘れたかった思い出は忘れたくなかった宝物だと気付き...何度観ても悲しく、切ない傑作だ。そして、華やかなように見えて哀愁漂う『ラ・ラ・ランド』('16)もオススメ。「ミュージカル映画」ではなくあえて「夢追い人の映画」として観ると、序盤からハンカチどころかバスタオル必携の状態になるはずだ。

 駆け足で紹介してきたが、最後に愛の奥深さを描いた作品群をお届けしたい。惹かれ合う女性同士の姿を叙情的に見つめたケイト・ブランシェットとルーニー・マーラ共演作『キャロル』('15)、ゲイであることを周囲に言えない高校生の悩みをつづる『Love, サイモン 17歳の告白』('18)、そして映像と登場人物の感情が抱き合うようにリンクした『君の名前で僕を呼んで』('17)。この3作品は、愛というものがいかに清く、私たちにとって生きる希望になるのかをマイノリティーの視点で描いた感慨深い映画たち。

 人と人以外の恋も、切なく豊かに胸を打つ。孤独な男性とAIのラブ・ストーリー『her/世界でひとつの彼女』('13)、声を失った女性とアマゾンの奥地からやって来た不思議な生き物との深い絆を描く『シェイプ・オブ・ウォーター』('17)。この作品たちは、「愛に壁も境もない」ということを教えてくれる。

 今回ここに挙げた映画たちは、あくまで一例だ。人が人を想うとき、その人の生活や人生はドラマチックに色づき、光り輝く。あなたのクリスマスが、映画以上に素敵なものになりますように。

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  • 文=SYO
    東京学芸大学卒業後、編集者を経て映画ライターに。
    CINEMORE、FRIDAYデジタル、映画.com、DVD&動画配信でーたなどに寄稿。Twitter(@SyoCinema)フォロワーは1万7000人超。


[放送情報]

クリスマス・カンパニー
WOWOWプライム 12/24(火)午後3:15


ラブ・アクチュアリー
WOWOWシネマ 12/19(木)よる9:00


俺物語!!
WOWOWシネマ 12/24(火)午前5:10


君に届け
WOWOWシネマ 12/24(火)午後2:45
WOWOWプライム 1/29(水)午前4:30

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