2018/05/25 up

『心が叫びたがってるんだ。』は、アニメ版も実写版も、どっちも違って、どっちもいい!

「心が叫びたがってるんだ。(2015)」 6/1(金)よる6:45ほか

"あの花"こと、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』のアニメ制作チーム、超平和バスターズが再結集し、オリジナル作品としては異例のロングランヒットを飛ばした劇場長編アニメーション『心が叫びたがってるんだ。』。幼い頃のトラウマから心を閉ざしてしまった少女、順と、彼女と共にミュージカル公演に出ることになる少年、拓実らクラスメイトの交流を描いた青春ドラマだ。同作はSexy Zoneの中島健人&芳根京子共演による実写版も製作され、セリフからロケ地、劇中楽曲に至るまで、リメイクの忠実さも話題になった。"ここさけ"両作の相違点を指摘すると同時に、製作者の意図を探り、その魅力に迫ってみたい。

 両作の最も大きな相違点といえるのが、アニメ版でヒロイン、順の声を"封印"する存在として登場する"玉子の妖精"だろう。さすがに実写版に登場することはないが、父親が幼少時の順に話す「おしゃべり過ぎると、玉子の神様に言葉を取られる」という、玉子の供物に関する地元神社の伝承が順が声を出せなくなる要因の一つになっている。また、アニメ版は想像力豊かな順目線、実写版は現実を直視する拓実目線で、物語が進められていることからも、実写版はリアルさを重視していると言える。

 このように製作チームは、アニメ版ではファンタジー感を、実写版では現実感―特に人間の感情を生々しく伝えることを重視しているのがよく分かる。順たちのクラス担任で、地域ふれあい交流会での出し物として彼らにミュージカルを提案する音楽教師"しまっちょ"こと城嶋の熱さや、ケガから甲子園の道を閉ざされた野球部の元エースのやさぐれ感も同様で、実写版の方が分かりやすく伝わるように表現されている。また、アニメ版では、拓実は元カノである菜月に告白する直前で順がその場から逃げ出すが、実写版ではちゃんと告白してからで、順がショックを受けたワケがスッと理解できるよう配慮がなされている。実写版のみ、ミュージカルの背景の書き割りが上演前に壊されるシーンが追加されているのも、キャラクターの感情の動きを観客にストレートに伝えようとする演出と言えるだろう。

detail_180525_photo02.jpg©2017 映画「心が叫びたがってるんだ。」製作委員会 ©超平和バスターズ

 このように、アニメ版と実写版それぞれだけでも楽しめるが、両方を観ることで気づく"ここさけ"お遊びポイントも紹介。自身の声について順が拓実に話すシーンの舞台は、アニメ版の大慈寺に対し、実写版では"あの花"の聖地として知られている旧秩父橋に変更されている(ちなみに、大慈寺は実写版ではお祭りのシーンで登場)。また、アニメ版では順の声を担当していた人気声優の水瀬いのりが、実写版では同じ揚羽高校の生徒役で出演している。アニメ版のファン心理もそのようにしっかりくすぐってくれているので、是非、両方観て"ここさけ"ワールドを存分に楽しんでほしい。

文=くれい響

[放送情報]

心が叫びたがってるんだ。(2015)
WOWOWシネマ 6/1(金)よる6:45ほか

心が叫びたがってるんだ。(2017)
WOWOWシネマ 6/1(金)よる9:00ほか

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