2019/06/14 up

第4回 『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』時代は変わる。今、君が変えたように

「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」6/30(日) よる9:00他

映画を愛するスピードワゴンの小沢一敬さんならではの「僕が思う、最高にシビれるこの映画の名セリフ」をお届け。第4回は、女と男の歴史的テニス・マッチを描く感動のスポーツ・ドラマ『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』('17)。さて、どんな名セリフが飛び出すか?

──今回は『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』というチョイスでした。

小沢「そもそも俺は、映画を観る前にあんまり情報を入れたくないのね。タイトルだけで勝手にストーリーを想像する時間も好きだから。それで今回のタイトルが『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』でしょ。ヒーローものなのか、それともセクシーなお姉さんたちが戦う映画なのかなぁ、と思って観たら、まったく想像と違う中身で」

小沢一敬さんの他のインタビューはこちら >

──このタイトルは、1973年に実際に行なわれた女子テニス界最強の29歳ビリー・ジーン・キングと、55歳の元男子世界王者ボビー・リッグスによる伝説的なテニス・マッチの名称です。世間的には男女平等が叫ばれていましたが、テニス界はまだ女子の優勝賞金が男子の1/8という男性優位主義が支配していた時代の話で、それらを知らずに観ると、タイトルと映画の中身にギャップがありますよね。

小沢「うん。俺はポスターのビジュアルに写ってる2人は、(ビリー・ジーン・キング役の)エマ・ストーンが女性ヒーローで、(ボビー・リッグス役の)スティーヴ・カレルは司令官だと勝手に思ってたから(笑)。だけど、とても面白い映画だった。俺はテニスにまったく興味ないんだけど、それでもすごく楽しめたし」

──確かに、誰にでも楽しめる映画に仕上がってます。

小沢「俺がいつも自分たちのライブをやる時に考えてるのは、『予想は裏切りたい、期待は裏切りたくない』ってことなんだけど、この映画はまさにそういう作品だったと思うんだ。しかも、後で調べたら実話がベースだって分かって。やっぱり世の中は面白いなぁと」

──小沢さんの期待を裏切らなかった部分というのは、どの辺ですか?

小沢「やっぱりさ、映画を観るときにはワクワクしたいし、ハラハラしたいのね。若い頃は映画に深いメッセージとか感動を求めてたこともあったけど、年を取ってくると、ただ『カッコいいじゃん!』って言える映画を好むようになってきて。そういう意味でこの映画は、素直に『カッコいいじゃん!』って言える映画だった」

detail_190614_photo02.jpg© 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

──年を取ると期待を裏切らないものを観たくなるっていうのは、まったく同感なんですけど。それって、なんでしょうね?

小沢「たぶん、もう落ち着いちゃったんじゃない?(笑) だから、ホントによくないと思うのは、最近、CDや漫画を買いに行くとね、最初は新作に手を伸ばすんだけど、最後は昔から好きだったやつを買っちゃうんだよ。そういうとこ、『年取ったなぁ』って思うよ」

──でもこの映画は、"期待を裏切らない"というエンタメな包装紙の中に、重要なテーマが包み込まれてます。

小沢「そうね。それが"セクシーズ"の部分なんだろうけど。性別を意味するセックスだからね。同性愛のことも描かれてるけど、タイトルにある"バトル"は、主に女性たちが"自由"を勝ち取るための"闘い"の意味でもあるよね」

──先ほどおっしゃったようにこの映画は実話がベースになっていますが、ビリー・ジーン・キングは女性や性的マイノリティーの権利のために闘い続けてきた人です。
では今回、小沢さんがシビれた名セリフはなんでしょうか。

小沢「時代は変わる。今、君が変えたように」

※編集部注
ここから先はネタバレを含みますのでご注意ください。

──ビリー・ジーン・キングに対して、彼女をずっとサポートしてきたゲイのスタイリストのテッド(アラン・カミング)が言うセリフですね。彼女がボビー・リッグスから歴史的な勝利を収め、人々が歓喜に沸いている映画のラストです。テッドが「おいで。みんなが君を待ってる」と声を掛けると、彼女は感極まって涙ぐみながら「心の準備がまだ」と言い、テッドの名セリフが続きます。

detail_190614_photo03.jpg© 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

小沢「"時代は変わる"という言葉について、俺の中では思うところがいろいろあって。元THE BLUE HEARTSで現ザ・クロマニヨンズのマーシー(真島昌利)の昔のソロの曲『夕焼け多摩川』に『誰かが歌ってる 時代は変わる それなのにこの場面 以前(まえ)にも見たよ』っていう歌詞があるんだけどさ、俺、"時代は変わる"って言葉を聞くと、いつもそれを思い出すの。『時代なんて何も変わってねえよ』って。もちろん、環境的な部分では変わってるんだけど、人間の本質的な部分は人類の歴史が始まった時から何も変わってないのよ。大昔から今日までずっと、誰かが誰かを好きになったりヤキモチ焼いたりしてる。ずっと変わってない。だけどみんな『きっと時代は変わるんだ』と思いたいんだろうなって」

──たぶん「変わる」と思ってないと前へ進めないというか。"時代は変わる"という言葉が、一種の希望なんだと思うんですよ。

小沢「そう、それなんだよ。決して時代は変わらないんだけど『変わろう』『変えよう』と思うことが人間の生きる理由なんだよね。ただ、マーシーと同じザ・クロマニヨンズの(甲本)ヒロトは、『時代を変えようっていうのは、すべてを諦めたやつが言うんじゃねえの? 自分が頑張ってたら、必ず変わるんだから』って言ってたのね。まさにその通りで。だから俺も『時代は変わる』なんてことをいちいち言う必要ないと思ってるんだ」

──でも、この作品はそのセリフが重要な場面で出てきますよね。

小沢「この映画では、彼女たちは自らの力で女性の"自由"を勝ち取ったわけだから。日本語の"自由"って英語だと2種類の言葉があるでしょ。"何をやってもいい"って意味の"Freedom"と、"権利の獲得" や"解放" の意味で使われる"Liberty"。つまり"Liberty"は、闘って勝ち取った"自由"。だから、その"Liberty"のための第一歩を踏み出したという意味で、あの場面で『時代は変わる。今、君が変えたように』というセリフは絶対に必要だったと思う」

──観客へのメッセージとして、必要だったと。

小沢「そうそう。観てる人たちに『彼女たちは時代を変えたぞ。じゃあ、君は何をする?』って呼び掛けてるわけだからね。プライベートで俺はこんなセリフは絶対に言わないし、言ったところで誰にも響かないけどさ、これが映画のセリフとなると、『じゃあ、私は何をすればいいんだろう?』って考える人も出てくるから。そういう意味で、私生活の言葉と映画の言葉はまったく別のものだと思うし、このセリフは映画の言葉として、とてもいい言葉だよ」

──他に気になったセリフはありますか?

小沢「いろいろあったんだけど、ちょっと面白かったのは、女性同士のベッド・シーンの後に、『あ、これ』っていう冷めたセリフで落ちてた眼鏡を相手に渡すところね。始まるときはムーディーに始まるくせに、コトが終わると男も女もドライなんだなって思ったよ(笑)」

取材・文=八木賢太郎

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  • 小沢一敬
    愛知県出身。1973年生まれ。お笑いコンビ、スピードワゴンのボケ&ネタ作り担当。書き下ろし小説「でらつれ」や、名言を扱った「夜が小沢をそそのかす スポーツ漫画と芸人の囁き」「恋ができるなら失恋したってかまわない」など著書も多数ある。

「このセリフに心撃ち抜かれちゃいました」の過去記事はこちらから
小沢一敬の「このセリフに心撃ち抜かれちゃいました」

[放送情報]

バトル・オブ・ザ・セクシーズ
WOWOWシネマ 6/30(日) よる9:00
WOWOWプライム 7/3(水) よる7:45
WOWOWシネマ 7/11(木) 午後2:55

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