2019/09/13 up

スピードワゴン小沢一敬が「最高にシビれる映画の名セリフ」を紹介! 第7回の名セリフは「娘を殺したのは、私でしょうか。」

「人魚の眠る家」9/14(土) よる8:00他

取材・文=八木賢太郎

映画を愛するスピードワゴンの小沢一敬さんならではの「僕が思う、最高にシビれるこの映画の名セリフ」をお届け。第7回は、愛する我が子の脳死を宣告され、究極の選択を迫られた夫婦を描くヒューマンミステリー『人魚の眠る家』('18)。脳死状態の娘を狂気ともいえる行動で守り抜こうとする母親の播磨薫子役を篠原涼子が、薫子の常軌を逸した姿に苦悩する夫、和昌役を西島秀俊が演じています。さて、どんな名セリフが飛び出すか?

──今回は『人魚の眠る家』をチョイスされました。

小沢「うん。まず、堤幸彦監督が好きなの、俺。堤監督って、いろんなパターンの作品があるでしょ。オタクも楽しめるようなエッジの効いた作品もあれば、この作品みたいに間口の広い作品もある。つまり、マジョリティにウケる作品も、マイノリティにウケる作品も両方できる。そこがすごいよね。この作品も普通に泣いちゃったし」

小沢一敬さんの他のインタビューはこちら >

──原作は東野圭吾さんの人気小説ですが、東野作品は読んでますか?

小沢「好きですよ。特に初期の作品が好き。ただ、この原作は読んでなかったから、まったく内容を知らずに観たのね。そうしたら、篠原さんが途中でちょっとサイコパスみたいに、ホラー的になるじゃない。だから途中までは、怖い話なのかな? と思ってたら、実は非常にハートウオーミングな作品だった」

──役者陣もとても豪華です。

小沢「うん。みんな適材適所というか、役者さんは全員良かったと思うんだけど、なかでも良かったのが、川栄李奈さん。あの子、すごいよね? まだ若いのに。いつも報われない役が多いんだけど、それがまたハマるんだよね。そこで気付いたんだけどさ、川栄さんって最初の頃、いわゆるおバカキャラだったじゃん? 実は篠原さんも、かつて『ダウンタウンのごっつええ感じ』('91~'97)に出てた頃はおバカなキャラだったんだよね」

detail_190913_photo02.jpg© 2018「人魚の眠る家」製作委員会

──ホントだ。おバカキャラは名女優への布石ですか?

小沢「なんか、そういう系譜でもあるのかなって思っちゃうよね。今回の篠原さんも、すごい上手い。この作品は役者の顔がアップの場面がやたらと多いんだけど、みんなそのアップに耐えうる役者さんばっかりなんだよね。西島さんもそうだし。西島さんってさ、いつも不思議な演技をするじゃん。意図してやってるのかわからないけど、どの作品でもボーッとした顔の芝居をするの」

──確かに無表情の場面がありますね、いつも。

小沢「漢字で書くなら"虚"という字のような芝居。虚だから空っぽのはずなのに、ちゃんと存在感があって。あれは西島さんじゃないとできないよね。またその芝居が今回の、どこか他人事っぽい旦那の役にピッタリで。あの役は西島さんで良かったなと思った。やっぱり、映画ってキャスティングだよね」

──おっしゃる通りだと思います。

小沢「ちなみに、お婆ちゃん役の松坂慶子さんが『私が代わりに死ねばよかったぁぁ!』って泣くシーンが最初のほうにあるんだけど、その泣き方が、『蒲田行進曲』('82)の小夏役の泣き方と一緒だったのよ。まさに"松坂泣き"だった、あれは(笑)」

──『蒲田行進曲』の松坂さんは最高ですよね。

小沢「いいよね~。じゃあ、今回は『蒲田行進曲』の名セリフということで......(笑)」

──いやいや、それじゃ困るので、そろそろ今回のシビれた名セリフを!

小沢「たぶん、この映画の一番の名セリフは、ラストのほうで篠原さんが言う、『娘を殺したのは、私でしょうか。』だと思うんだ」

※編集部注
ここから先はネタバレを含みますのでご注意ください。

──娘の瑞穂(稲垣来泉)の脳死を受け入れられずに彼女を生きているかのように扱いながら、いつか彼女が回復すると信じて見守り続ける薫子。やがて、精神的に極限まで追い詰められた薫子が、瑞穂に包丁を突きつけながら、周りの人々に「今、私がこの子を刺して心臓を止めたら、私は罪に問われますか?」と問いかけるクライマックスの場面です。

小沢「あそこがこの映画のテーマだよね。脳死が死なのか? 心臓が止まった時が死なのか? という。あのセリフを言うときの篠原さんも、すごく良かったし。顔が狂気に満ちてて。それから、ラストのほうで川栄さんが言う、『おかえりなさい』ってセリフも良かった」

──薫子母子に肩入れし過ぎておかしくなっていた彼氏の祐也(坂口健太郎)がようやく正気になって戻ってきたときに、川栄さん演じる真緒が言うセリフですね。

小沢「そうそう。他にも、脳死になった瑞穂の弟と従妹が、抱えてた秘密を泣きながら告白する場面がそれぞれあって、その辺も胸が痛くなる名シーンだし。それ以外にも太字にしたい名セリフがすごく多い映画なんだけど、実は今回、俺が本当に選びたかった名セリフはその辺じゃないんだよ。というのも、この映画のなかには、俺が人生で一度は言ってみたいと思ってるセリフが出てきたの」

──ほう、それはどのセリフ?

detail_190913_photo03.jpg© 2018「人魚の眠る家」製作委員会

小沢「川栄さんがタクシーに飛び乗って言う、『前の車を追ってください!』」

──まさかの、それ?

小沢「そう。今回のシビれる名セリフは、『前の車を追ってください!』(笑)。あのセリフ、一度でいいから言ってみたいのよ~。言ったことないし、今後も言う機会ないと思うんだけど。あれを言われたら、タクシーの運転手さん、テンション上がるよね」

──ただ、小沢さんだったら、逆に誰かにそれを言われてる可能性ありますよね? 小沢さんが乗った車を、マスコミとかファンとかが追いかけようとして。

小沢「えっ?......言われてみれば、そうかもしれない。え~、怖いな......」

──いや、そんなに怖がらなくてもいいです(笑)。

小沢「まあ、とにかくそんな感じで、『人魚の眠る家』は俺が好きな要素の多い作品でした。とはいえ、たぶんこれを映画館では観ないのよ、俺は。映画館だと周りを気にして泣けないしさ。でも、自宅でなら必ず観ると思うんだ。アップが多いのもテレビサイズで観るのにちょうどいいし、周りを気にせず思いっきり泣けるし、まさに家で観るにはピッタリの作品だと思います! ......っていう感じなら、いいシメでしょ?(笑)」

取材・文=八木賢太郎

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  • 小沢一敬
    愛知県出身。1973年生まれ。お笑いコンビ、スピードワゴンのボケ&ネタ作り担当。書き下ろし小説「でらつれ」や、名言を扱った「夜が小沢をそそのかす スポーツ漫画と芸人の囁き」「恋ができるなら失恋したってかまわない」など著書も多数ある。

「このセリフに心撃ち抜かれちゃいました」の過去記事はこちらから
小沢一敬の「このセリフに心撃ち抜かれちゃいました」

[放送情報]

人魚の眠る家
WOWOWシネマ 9/14(土)よる8:00
WOWOWプライム 9/19(木)よる7:45
WOWOWプライム 9/28(土)よる8:55
WOWOWシネマ 10/13(日)午前11:45

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