2019/10/01 up

10月のWOWOW初放送映画 厳選3作品

「アリー/ スター誕生」10/5(土)よる8:00他

 映画アドバイザーのミヤザキタケルが、各月の初放送作品の中から見逃してほしくないオススメの3作品をピックアップしてご紹介! これを読めばあなたのWOWOWライフがより一層充実したものになること間違いなし!のはず...。

 今月は、夢や現実と向き合う者たちの苦悩や勇気を描いた3本を紹介します。

文=ミヤザキタケル


『アリー/ スター誕生』('18)

 俳優ブラッドリー・クーパーの初監督作にして、歌姫レディー・ガガが彼とともに主演を務めた音楽ドラマ。世界的ロック・スターと歌手になる夢を抱く女性の出会いを通し、夢や理想を追求する者の葛藤を描いた作品です。

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detail_191001_photo02.jpg『アリー/ スター誕生』
© Warner Bros. Entertainment Inc.

 誰もが皆、夢や希望を抱いて生きていく。叶えられた人もいれば、今まさにあがいている人、諦めてしまった人もいるだろう。ただ、誤解してはいけないのが、夢の実現=ゴールではないということ。ガガ扮するアリーのように、一夜にして人気歌手になる夢を叶えても、その先にはまた新たなスタートが待っていて、高みを目指し続ける限り終わりは来ない。夢を叶えるまでの道程だって決して楽ではないが、本当に大変なことはその先にある。劇中の2人を見たのなら、その真意が分かるはず。

 類まれなる才能があっても、努力を惜しめば才能は発揮されることなく、望んだ道はあっという間に閉ざされる。つかみ取ったものを維持することにとらわれてしまえば、上を目指すことも価値あるものを生み出すこともできやしない。永遠に続く苦悩と研鑽の日々に耐え得るだけの精神力があってこそ、夢の向こう側を歩み続けていられるもの。もちろん、思い描いた未来とは違うかもしれないが、今ある幸せに価値を見いだし、それを守るために生きていく道もある。生き方は決して一つじゃない。別の道があることも劇中において示されていた。主人公たちの末路は、あなたの目に一体どのように映るだろう。

detail_191001_photo03.jpg『アリー/ スター誕生』
© Warner Bros. Entertainment Inc.

『500ページの夢の束』('17)

 大好きな「スター・トレック」の脚本コンテストに応募するため、自閉症の女性ウェンディが愛犬とともに数百キロ離れたハリウッドを目指して旅に出る物語。主演は、子役時代から話題作に出演し続けるダコタ・ファニング。さまざまな困難に直面していく少女の姿が、チャンスをつかむために必要不可欠な心の姿勢を教えてくれる人間ドラマです。

detail_191001_photo04.jpg『500ページの夢の束』10/28(月)よる7:00
©2016 PSB Film. LLC

 "自閉症"というワードに一瞬臆してしまうかもしれないが、物語冒頭で丁寧に描かれるウェンディの日常を目にすれば、その苦悩や願いに寄り添うことができるはず。あなたや僕と同じで、好きなことがあり、苦手なこともあり、大切な家族がいて、時々分かり合えなくなってしまうこともある。少しばかり心のメカニズムが異なるだけで、僕たちと何ら変わらない。「スター・トレック」に関しても、この映画はあくまでも登場人物たちの葛藤や成長を描いているため、予備知識は必要ない。細かなネタを把握したいのであれば、軽くググっておく程度で大丈夫。

detail_191001_photo05.jpg『500ページの夢の束』©2016 PSB Film. LLC

 本作の原題『Please Stand By(そのまま待機)』とは、「スター・トレック」の劇中においてよく使われる言葉。もしあなたが日常生活において「そのまま待機」と言われたのなら、何をするだろう。待機=休憩と捉えてはいないだろうか。読んで字のごとく「機」を「待つ」のが"待機"で、好機が訪れた際、しっかりつかみ取れるよう準備しておくための時間。旅の途中、ウェンディはさまざまなトラブルに遭遇し、度々「待機」状態に陥ってしまう。だけど、待機中の彼女は常にハリウッドへたどり着くための手段を模索し備えていた。だからこそ、彼女の想いは着実に歩みを進めていくのだ。戒めと言ったら大げさだけど、待機中の自分は何をしているだろうと、己を見つめ直すキッカケを彼女が与えてくれると思います。

detail_191001_photo06.jpg『500ページの夢の束』
©2016 PSB Film. LLC


『ハード・コア』('18)

 狩撫麻礼&いましろたかしの漫画『ハード・コア 平成地獄ブラザーズ』を、山田孝之×山下敦弘監督の盟友コンビで実写化。謎のロボットの力を借りて埋蔵金を探す男たちの姿を通し、変わらぬ世界で生きていかねばならない人間の力強さを描いています。

detail_191001_photo07.jpg『ハード・コア』10/27(日)よる10:00 他
©2018「ハード・コア」製作委員会

 正直なところ、途中までギャグ映画なのではないかと疑ってしまう。それはそれで十分面白くもあるのだが、登場人物たちの行動は何もかも本気であることに途中で気が付かされる。生きることに精一杯な人間の苦悩を、世間からのけ者にされてしまった者たちの孤独を、この社会の在り方までをも繊細かつ泥臭く本作は描いている。

detail_191001_photo08.jpg『ハード・コア』
©2018「ハード・コア」製作委員会

 劇中、「間違っているのが世界」というセリフがあり、それがあるからこそすべてがつながっていく。怪しい活動家の一味の兄(山田孝之)と、金にも女にも不自由しない商社マンの弟(佐藤健)。一見真逆に思える兄弟だが、根っこの部分では同じ。心の飢えや乾きを満たせず、ともにこの世界でもがき苦しんでいた。たとえ世界が間違っていようとも、僕たちもこの現実を生きていかねばならない。正解・不正解のある話ではないけれど、何のために、誰のために、何を成すために生きるのか。その心持ち次第でたどる道筋は大きく変わる。不器用過ぎる男たちの生きざまや、希望とも絶望とも取れる終幕が、混迷極めるこの時代を生き抜くための強さを示してくれると思います。

detail_191001_photo09.jpg『ハード・コア』
©2018「ハード・コア」製作委員会

 生きていく上でのヒントを教えてくれる3本の作品とともに、今月も素敵なWOWOWライフをお過ごしください。

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  • 文=ミヤザキ・タケル
    長野県出身。1986年生まれ。映画アドバイザーとして、映画サイトへの寄稿・ラジオ・web番組・イベントなどに多数出演。『GO』『ファイト・クラブ』『男はつらいよ』とウディ・アレン作品がバイブル。


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[放送情報]

アリー/ スター誕生
WOWOWシネマ 10/5(土)よる8:00
WOWOWプライム 10/6(日)午前8:30
WOWOWプライム 10/9(水)よる7:30
WOWOWシネマ 10/13(日)午前9:15
WOWOWプライム 11/7(木)午後5:30
WOWOWシネマ 11/13(水)よる9:00

500ページの夢の束
WOWOWシネマ 10/28(月)よる7:00

ハード・コア
WOWOWシネマ 10/27(日)よる10:00
WOWOWプライム 10/31(木)深夜0:55
WOWOWシネマ 11/9(土)深夜1:15

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