2020/05/12 up

やっぱアニメは日本でしょ! クリエイターで観る日本の良質アニメ3選

『きみと、波にのれたら』5/24(日)よる9:00他

文=SYO

 日本が世界に誇る「強み」の一つは、アニメだ。...なんてのは、今さら声を大にして言うことではないかもしれない。ディズニーやピクサーの作品はもちろん、『失くした体』('19 フランス)や『スパイダーマン:スパイダーバース』('18 米)など、各国から傑作が多数生まれている。

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 では改めて、日本のアニメはどこが秀でているのだろう? あくまで私見だが、それは2Dにおける描き込みや美しさではないだろうか。ハリウッドのアニメは3DCGに強く、ヨーロッパのアニメはファインアートを源流とする絵作りや、感性重視の表現が特徴的だ。対して日本は、美麗・壮麗・流麗な作品――つまり、色彩表現の豊かさ、動きの滑らかさ、画面の密度が突出しているように感じる。

 今回紹介する3作品は、いずれもそんな「長所」を強く感じさせるものたち。どの作品も名だたるクリエイター陣によって創出され、WOWOWで初放送を迎える。

 まず1本目は『バースデー・ワンダーランド』('19)。『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』('01)や『カラフル』('10)など、「大人も泣かせる」作品を得意とする原恵一監督の最新映画だ。

detail_200512_photo02.jpg『バースデー・ワンダーランド』5/13(水)よる7:00他
©柏葉幸子・講談社/2019「バースデー・ワンダーランド」製作委員会

 色彩豊かな異世界に飛び込んだ少女の冒険を描く本作は、冒頭の花々の表現からして別格。トーストにバターやマーマレードを塗るシーンは、まるで実写のようだ。その後、主人公が異世界に降り立つと、一層画面が華やぎ、場面が移り変わるごとに見事な色彩に目を奪われる。ただ美しく鮮やかなだけでなく、出てくる調度品や衣服など、一つ一つの"手触り"や"質感"までも感じられるのが恐ろしい。主人公と同じく、異世界に入り込んだ錯覚をさせられてしまうだろう。

detail_200512_photo03.jpg『バースデー・ワンダーランド』
©柏葉幸子・講談社/2019「バースデー・ワンダーランド」製作委員会

『バースデー・ワンダーランド』では、キャラクターデザインを『攻殻機動隊 SAC_2045』('20)にも携わるロシア出身のイラストレーター、イリヤ・クブシノブが手掛けている。気鋭のアーティストとのコラボレーションにも、注目していただきたい。

detail_200512_photo04.jpg『バースデー・ワンダーランド』
©柏葉幸子・講談社/2019「バースデー・ワンダーランド」製作委員会

 続いて、国内外に多数のファンを持つ湯浅政明監督による『きみと、波にのれたら』('19)。『四畳半神話大系』('10)、『ピンポン THE ANIMATION』('14)、『映像研には手を出すな!』('20)などを手掛けてきた彼の武器は、イマジネーションあふれる世界観と表現力だろう。

detail_200512_photo05.jpg『きみと、波にのれたら』
©2019「きみと、波にのれたら」製作委員会

 愛する恋人が、海で命を落とした。失意に沈む女子大学生だが、水の中で恋人と再会する。少年と人魚の出会いを描く『夜明け告げるルーのうた』('17)にも見られる、湯浅監督らしい生命力あふれる水の表現や、画面から飛び出してきそうな躍動感あふれる人物の動きに、ロマンティックなラブ・ストーリーが加わった。

detail_200512_photo06.jpg『きみと、波にのれたら』
©2019「きみと、波にのれたら」製作委員会

 最後に、TV シリーズを再編集した劇場版『~{前編}集う光』『~{後編}燃える命』と、完全新作の劇場版『~海門決戦』が一挙放送される『甲鉄城のカバネリ』('16~'19)は、『進撃の巨人』シリーズ('13~)の荒木哲郎監督と、『∀ガンダム』('99)の脚本家、大河内一楼が『ギルティクラウン』('11)に続いてタッグを組んだアクション超大作。

detail_200512_photo07.jpg『甲鉄城のカバネリ 総集編{前編}集う光』5/29(金)よる9:00他
©カバネリ製作委員会

 人間を"カバネ"と呼ばれる怪物に変えるウイルスが蔓延した架空の日本。装甲された蒸気機関車に乗り、各地を旅しながらカバネと戦う者たちの壮絶な運命を描く。アクション、SF、サスペンス、ミステリー、ヒューマン・ドラマ、ラブ・ストーリーが融合したエンタメ性に、サイバーパンクな世界観が加わり、ワールド・クラスの完成度を誇る一作となった。

detail_200512_photo08.jpg『甲鉄城のカバネリ 総集編{後編}燃える命』5/29(金) よる10:55他
©カバネリ製作委員会

 わらわらと襲い掛かるカバネとのダイナミックなバトル・シーンや、縦横無尽に駆け回る流麗なカメラワークは、臨場感が抜群。女性キャラクターの頬の赤らみや唇の艶やかさを、美しく表現した造形の細やかさも随所に光る。

detail_200512_photo09.jpg『甲鉄城のカバネリ 海門決戦』5/29(金) 深夜0:45他
©カバネリ製作委員会

 今回紹介した3作品のどれも、クリエイターの意匠が画面の至る所にちりばめられ、日本のアニメ界の実力を感じさせる。三者三様の"世界"に、どっぷりと没入していただきたい。


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  • 文=SYO
    東京学芸大学卒業後、編集者を経て映画ライターに。CINEMORE、FRIDAYデジタル、映画.com、DVD&動画配信でーたなどに寄稿。Twitter(@SyoCinema)フォロワーは1万9000人超。


[放送情報]

バースデー・ワンダーランド
WOWOWプライム 5/13(水)よる7:00
WOWOWシネマ 5/25(月)午後3:15
WOWOWシネマ 6/6(土)午前5:15


きみと、波にのれたら
WOWOWシネマ 5/24(日)よる9:00
WOWOWプライム 5/27(水)午後5:20
WOWOWシネマ 6/4(木)午後3:00


甲鉄城のカバネリ 総集編{前編}集う光
WOWOWシネマ 5/29(金)よる9:00
WOWOWシネマ 6/8(月)午前11:50


甲鉄城のカバネリ 総集編{後編}燃える命
WOWOWシネマ 5/29(金)よる10:55
WOWOWシネマ 6/8(月)午後1:45


甲鉄城のカバネリ 海門決戦
WOWOWシネマ 5/29(金)深夜0:45
WOWOWシネマ 6/8(月)午後3:35

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