2019/01/11 up

『響け!ユーフォニアム』はオトナにこそ響く! エヴァーグリーンな青春学園モノだ

「劇場版 響け!ユーフォニアム~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~」1/15(火)よる9:00

『響け!ユーフォニアム』は、『映画 聲の形』('16)で知られる京都アニメーション制作の学園ストーリーだ。アニメでは珍しい"吹奏楽"の部活動をテーマに、2015年にTVシリーズ第1期、'16年に第2期を放送。『劇場版 響け!ユーフォニアム ~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~』('16)と『劇場版 響け!ユーフォニアム ~届けたいメロディ~』('17)は、それぞれのTVシリーズを再構成した総集編となっている。

 主人公は入学したばかりの北宇治高校吹奏楽部で金管楽器・ユーフォニアムを担当する黄前久美子(声:黒沢ともよ)。部の演奏レベルはお世辞にも上手いものではなかったが、新しい顧問・滝昇(声:櫻井孝宏)の指導により状況は一変。部員たちは数々の試練を乗り越え、吹奏楽コンクールの全国大会出場を目指す――。

 場面カットでは愛らしい美少女たちが微笑んでいるが、本作はいわゆる萌え系や日常系アニメでは決してなく、吹奏楽に本気で取り組む高校生たちを真正面から描いた熱血部活モノ。「最近は何をやっても熱くなれない」などとうそぶくオトナたちにこそ薦めたい作品といえる。一体どこに注目して視聴すればオトナ心に響くのか? ここでいくつかのポイントを紹介してみたい。

 まずは、京都アニメーションの十八番でもある驚異の作画クオリティを見てほしい。各楽器のディテールの細かさや、そこに映り込む人物や背景の描写には、誰もが息をのむはずだ。さらに演奏シーンでは、楽器を弾くキャラクターの指先や口元の動きまで実際の音楽にきちんとシンクロさせる徹底ぶり。嘘のないリアルな世界が、物語への没入感をより深めてくれている。

劇場版 響け!ユーフォニアム~届けたいメロディ~

detail_190111_photo02.jpg©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

 また、吹奏楽アニメである本作は、音響へのこだわりも半端ない。北宇治高校吹奏楽部の劇中演奏シーンを担当するのは、洗足学園音楽大学の1年生で編成されたバンド、フレッシュマン・ウインド・アンサンブル。コンクールやイベント・シーンで披露するフル演奏はもちろん、当初はおぼつかなかった合奏が滝の指導で次第にレベルアップしていく様子も見事な演技力ならぬ"演奏力"で表現し、部員たちの成長をはっきりと感じさせてくれる。クラシックの曲に馴染みがないという人も、彼らが演奏する「暴れん坊将軍のテーマ」「RYDEEN」「学園天国」といったオトナ世代直撃のラインナップには思わず顔がほころんでしまうに違いない。

 そして一番注目してほしいのは、部員たちが織り成す青春ドラマである。ソロパートを巡る1年生と3年生のオーディションではヒリヒリした緊張感が漂うし、うまく演奏できない自分に苦悩する久美子の慟哭には胸が苦しくなる。『~届けたいメロディ~』では、全国大会を前にして久美子と同じくユーフォニアムを担当する先輩部員・田中あすか(声:寿美菜子)の退部騒動が勃発。退部を阻止しようとする部員たちのドラマと、あすかを取り巻く家族のドラマがゆるやかに交錯しながら、物語はクライマックスへとなだれ込む。

 本作に、超絶的な演奏テクニックや、どんな問題も解決できる能力をもったスーパー高校生は出てこない。誰もがごく普通の高校生であり、だからこそ"特別"な何かになりたくてもがき続けている。そんな彼らの姿は、もがいても特別になれなかった、または途中でもがくことを止めてしまったオトナたちにはあまりにまぶしく尊い。昔の自分を見るような気持ちで部員たちを見守りながら、モニターを通して青春をやり直しているかつての少年少女も少なくないはずだ。

 アニメ・ファンや吹奏楽ファン、普段はアニメを見ない映画ファンをも巻き込んで支持を集め続ける『響け!ユーフォニアム』。同じ小説シリーズを映画化した『リズと青い鳥』('18)も記憶に新しいが、'19年4月19日には完全新作となる劇場版第3作『劇場版 響け!ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~』の公開も決定している。まだまだ続く北宇治高校吹奏楽部の演奏を、あなたもこの機会に鑑賞してみてはいかがだろうか?

文=ほそいちえ

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