2019/10/16 up
『ボヘミアン・ラプソディ』 クイーンを超えたクイーン伝説を語ろう 第2回:クイーンの天才ボーカリスト、フレディの魅力とバンドあるあるを語ろう
「ボヘミアン・ラプソディ」10/19(土)よる8:00他
取材・文=八木賢太郎
撮影=神保達也
WOWOWで『ボヘミアン・ラプソディ』を放送することを記念してのスペシャル・トーク企画。集まったのは、元MEGADETH(メガデス)のギタリストでマルチ・アーティストとして活動中のマーティ・フリードマン、自身のネタでクイーンの楽曲を使用するほどのクイーン好き芸人レイザーラモンRG、そしてかつて音楽情報誌『MUSIC LIFE』『BURRN!』の編集にも携わり本作の字幕監修を務めた増田勇一のクイーンを愛する3人。
第1回では、映画『ボヘミアン・ラプソディ』の字幕監修の秘密や、プロのミュージシャンの目から見たクイーンの素晴らしさなどが語られたが、テーマはいよいよ、1991年に死去したフレディ・マーキュリーのことへ。
マーティ・フリードマン(以下フリードマン)「この映画、とにかく見せ方がきれいでしたね。特にフレディ・マーキュリーと彼女(ルーシー・ボーイントンが演じたメアリー)の関係ね。フレディの性的な話って、リアル・タイムでクイーンを聴いてた時にはまったく想像してなかったんですよ。僕は子どもだったし、今みたいにゲイの話が普通にニュースに出てきたりもしなかった。だからロック・バンドのカッコいいボーカリストなんて、毎晩、女の子と遊びまくってると思ってた(笑)」
レイザーラモンRG(以下RG)「どこのバンドのボーカリストも、みんなそんな感じでしたもんね、当時は」
フリードマン「そうそう。で、後になって彼はゲイの代表的な存在になったけど、今回の映画で、そんな彼にも女の人との美しい関係があったことを知って、とてもうれしかったですね」
RG「マーティさんがバンドで活躍してた頃、ゲイのメンバーとかって誰かいたんですか?」
『ボヘミアン・ラプソディ』
© 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
フリードマン「子どもの頃、僕はゲイの人たちの存在すら知らなかったし、バンドやるようになってからも、僕はひとりも知らなかった」
増田勇一(以下増田)「80~90年代にもゲイのバンドマンはそれなりにいたはずですけど、みんな隠してましたよね」
フリードマン「隠してました。クイーンだって、実はフレディはいろんなヒントを出してたのに、誰もゲイだと思っていなかった。バンド名だってクイーンなのに(笑)」
増田「でも、フレディってしゃべり方でもヒント出してたんですよね。例えば、70年代のライブのMCで、『クイーンが戻ってきたわよ~、恋しかった~?』みたいなしゃべり方をしてる場面とかもあるんですよ」
RG「へぇ~、それは知らなかった」
増田「普通、ロック・バンドなら、『戻ってきたぜ! お前ら、待ってたか?』みたいな感じになりがちなのに」
フリードマン「でも不思議なのは、彼がゲイであることを、クイーンの音楽を聴いていてあまり感じないことですよね」
増田「そうですね。あとで歌詞を深読みすると、そういう意味だったんだなって思う部分はあるけどね」
RG「マーティさんから見て、ボーカリストというか、パフォーマーとしてのフレディ・マーキュリーって、どうですか?」
フリードマン「もう、ホントにトップの中のトップ。パフォーマーとして、あれ以上の人はいないと思います。なんか、人間じゃないみたいな存在(笑)」
増田「人間を超越してしまっている、と」
フリードマン「そうそう。オーラも素晴らしすぎるし、声も完璧すぎて、大好きですね」
RG「ピアノを弾けるっていうのが、やっぱりデカいですよね。ピアノ弾けるだけで、なんか音楽のできる人って感じがするから(笑)」
フリードマン「彼がエモーショナルな歌い方する時の、言葉ひとつひとつのコントロールの仕方とか、演歌歌手みたいにタメたり、伸ばしたりする歌い方とか、ああいうのが普通のロック・シンガーとは全然違う。ほかのハード系のロック・シンガーは、自分の腕を見せたがるだけ(笑)」
RG「はいはい、なるほど。技術に走りがちだと」
フリードマン「フレディは誰より腕を持ってるのに、それを見せることよりも、歌詞の言葉の解釈とかを大切にするから、曲によって全然歌い方が違うじゃん。別人になっちゃう。だから飽きさせないのね」
RG「僕らが『ウィ・ウィル・ロック・ユー』をカラオケで歌うと、まったく抑揚がなくなっちゃいますから(笑)」
増田「普通の人が歌うと、ホントにつまんない曲になっちゃう」
RG「ですよね? あれはフレディじゃないと、クイーンじゃないと盛り上げられない」
フリードマン「ホント、そう思うね」
『ボヘミアン・ラプソディ』
© 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
増田「そういうバンドとしてのクイーンの良さみたいなものが、この映画では本当に上手く表現されてますよね」
フリードマン「そうそう。フレディの暗い一面も出てくる映画なんだけど、最後にはすごくクリエイティビティがあふれてるから、これを観た後は、『よし頑張りましょう!』っていう気持ちになれましたね」
RG「映画の中で僕が面白いなと思ったのは、レコード会社とのやりとりの場面ですね。昔、『BURRN!』とか読んでた時に、長すぎる曲はラジオで流してもらえないとかって話がよく出てたけど、そういうのがリアルに描かれてたから」
フリードマン「ただ、シングルをどれにするとか、ああいう大事な話はあんな簡単なミーティングでは決まらないよね(笑)。あれは映画の時間を短縮するために、ああいう風に描いてただけで」
増田「そうですね。あんな数分の会議で、あんなに話が動くことはないですね、実際には。そもそもマイク・マイヤーズ(『ウェインズ・ワールド』では「ボヘミアン・ラプソディ」をノリノリで熱唱!)が演じたレコード会社の重役の人は実在しないんですよ。たぶん当時、メンバーが嫌いだった人たちのキャラクターが、全部あのひとりに集約されてつくられた感じだと思う(笑)」
フリードマン「そうそう、そういうことですね、たぶん」
『ボヘミアン・ラプソディ』
© 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
増田「ただ、僕も中学生の頃とかに『MUSIC LIFE』のグラビア記事で見てた農場でのレコーディング風景とかが、ちゃんと映像になって再現されてたから、それは驚きましたね。服装も当時の彼らと同じような服装で。そういうところまで、かなりこだわってつくられてたから。映画の世界ってすごいなって」
RG「バンド内で揉めたりするところも描かれてましたけど、ああいうのって、マーティさんから見てどうなんですか?」
フリードマン「まあ、バンドってみんな揉めるし、バンドマンとしては、ほかのバンドが揉めてるシーン、すっごい見たかった(笑)」
RG「やっぱり見たいんだ、そこは」
『ボヘミアン・ラプソディ』
© 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
フリードマン「そう。『あいつら、なんのことで揉めてるの?』ってのぞきたいのよ。大体、バンド内の政治的なことで揉めるからね」
RG「プロならではの目線ですね(笑)」
フリードマン「特にこの映画に出てくるクイーンのメンバーって、言い方がひどいんだよね。元々イギリス人って結構、言いたい放題ですね。だから、あれだけ激しく揉めたのに最後までメンバー・チェンジしないで続いてたのは、とても不思議」
増田「ロジャーとブライアンがお互いの曲をけなし合ってるシーンとかね」
フリードマン「クイーンって、当時はメディアの中にそれほど情報出てなかったんですよ。だからファンとしてはいろいろ知りたかった。誰がいちばんクリエイティブなのかとか、誰がいちばん気難しいのかとか。それを映画ではすべて答えてくれたので、そこはとても満足」
RG「その中で、やっぱりジョン・ディーコンは和ませ役でしたね」
増田「和ませ役っていうか、イジられ役だね」
RG「メガデスでは、誰がディーコンの立場でした?」
フリードマン「もう20年も前に脱退してるからね~。ただ、僕らはあれほど面白く揉めてるシーンなかったですね。もっと地味でした。だから、メガデスは映画にはならないと思う(笑)」
※次回、最終回はロックの一大革命ともいえるクイーンのサウンドの魅力を3人がじっくりと語り合う!
「第1回:映画『ボヘミアン・ラプソディ』愛を語ろう」記事はこちら>
「第3回:クイーン・サウンドの魅力を語ろう!」記事はこちら>
「マーティ・フリードマン×増田勇一×レイザーラモンRG Special Talk」の過去記事はこちらから
[放送情報]
ボヘミアン・ラプソディ
WOWOWシネマ 10/19(土)よる8:00
WOWOWプライム 10/20(日)午後1:00
WOWOWプライム 10/24(木)よる7:30
WOWOWシネマ 10/27(日)午前10:55
WOWOWシネマ 10/31(木)よる9:00
WOWOWシネマ 11/7(木)午後3:00
WOWOWシネマ 11/15(金)深夜0:45
WOWOWプライム 11/24(日)午後3:30
WOWOWライブ 11/30(土)午前9:40
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